表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
早春物語  作者: 綿花音和
24/31

三月八日公立高校入試

 ついに三月八日。公立高校の入学試験。私は学区で最難関の進学校を受験する。受験勉強を始めた頃は、明らかに力不足だった。数学は基本的な部分しか得点出来ず、応用問題になると鉛筆が止まってしまっていた。

 自信がなくて、真面目さしか取柄がないって思っていた。そんなことに、何の価値もないって決め付けていた。

 母が芳原先生を家庭教師につけてくれて私の心に光が差した。成績も伸びた。先生や家族、加奈子や森君と過ごした受験の日々が、私を少しずつ大人にしたような気がする。

 ショックなことも、どきどきしたことも、さまざまな感情の変化は全てこの日を迎えるためにあったのだと思う。


 志望校の体育館に、光岡先生に引率され私たちは整列していた。

「鈴木、塚本大丈夫か?」

 森君が心配して私たちを覗き込む。

「大丈夫よ。今日大きな失敗をしないように私たち努力を重ねてきたんだから」

 さすが加奈子だ。顔色一つ変えない。

 私といえば、緊張はしているけど心地よいくらい。予想より落ち着いている。

「兄さんの魔力は凄いですね」

 にっこりと兼人君が言った。

「そうかもしれない」

 私が答えると森君は、

「聞きたくない」

 とムスッとしていたが、

「今日までは魔法とやらの効果が続くことを祈ってやろう」

 と笑顔をみせた。

「森、僕の兄貴は強敵ですよ」

 兼人君が答える。

「火花がみえるよ」

 加奈子が言う。言葉とは裏腹に場は和やかだった

 光岡先生から、受験の注意事項の説明があった。厳しいながらも温かい表情をし、

「頑張れ」

 と私たちを送り出した。

 

 受験番号で区切られた座席表を見ると私たち四人は同じ教室で受験することになっていた。私の中学からは四名しかこの高校を受験する者はいない。みんなで合格したいけど、まず自分が必ず合格しなければ。


 午前九時、戦闘開始だ。まずは得意な国語から。ゆっくり落ち着いて問題を読んでケアレスミスがないように見直して、問題文と解答が矛盾していないか見直す。

 二科目目の英語は長文問題で時間を取られ過ぎると焦ってミスをするので熟語や構文の問題で手堅く解答を積み重ねた。やっと最後の英文問題。わからない単語もあったがほぼ理解できた。『大丈夫』、自分に言い聞かせる。

 三科目目、数学。これまでのことが走馬灯のように思い出されたがすぐ打ち消し、問題を最初から最後までざっと見渡す。大体の時間配分を決めて、問題を解きだした。芳原先生の授業のおかげで十分程余裕があったので、解答欄にずれはないか計算間違いはないか充分見直しが出来た。

 数学が終わると、昼食になった。四人で集合してお弁当を食べる。やはり同じ学校の親しい友人が側にいてくれるだけで、気持ちが楽になった。気疲れし、無口になりながらもホッとしてお弁当を残さず食べられた。

「最後までベストを尽くそうね」

 と加奈子が皆を励ましてくれた。

 四科目目理科。元々理科は好きな教科なので粘り強く解いて、見直しまで冷静にすることが出来た。五科目目社会、いよいよ最後の教科だ。記憶に頼る科目は苦手ではない。解答欄に漏れがないかを確認して、無事試験終了。


 試験の終わりを告げるチャイムが鳴った。加奈子も森君も兼人君も全力が出せたようだ。

「加奈子お疲れさま」

「美夏こそお疲れ」

 今日まで良く頑張ったとお互いの顔を見つめ合う。

「鈴木、塚本、芳原、解答速報五時からだって」

 森君が教えてくれた。

「明日は卒業式だね。とりあえず急いで帰ろう」

 加奈子が答えた。そして、

「きっと最高の卒業式になる」

 と予言した。

 気が付けば校庭の桜の蕾が膨らんでいた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ