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早春物語  作者: 綿花音和
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合格通知

 教室はざわついていた。ホームルームで、私立高校の入試結果が生徒たちに渡されるのだ。みんな、自分の実力に見合った学校を受けているから、泣き崩れる同級生はいなかった。

 私も大きなミスはしていなかったが、胃がキリキリしていた。

「鈴木、塚本、合否の通知だ」

 光岡先生に手渡された。

「いっせいのせい!」

 掛け声を上げ、加奈子と同時に私立高校の合否通知を開けた。

「良かった。合格だ」

 彼女が先に声を上げた。加奈子が合格、間違っても不合格はないだろうと思っていたけど、本当に良かった。

 私の合否は……。通知をしっかり目を見開いて、かなり驚いた。そこに『貴殿に特別進学コースへの入学を許可する』と書いてあったからだ。

「美夏大丈夫?」

 心配そうに加奈子が私の様子をうかがう。

「うん。なんか特進コースに合格してた」

 信じられなくて茫然としていた。

「凄いよ、努力が実ったんだね。結果は今回負けたけど美夏になら悔しくないんだよなぁ」

「それは鈴木の人徳が為せる業だな」

「森君いつの間に後ろに」

 私はよろめいた。危ないと、森君が軽く肩を支えてくれた。

「森は油断も隙もないね」

 加奈子は屈託なく笑った。

「ところで君も結構な名門私立受けてたよね、受かったの?」

 さらっと加奈子は尋ねたが緊張している感じがした。

「ああ、安心しろ合格だ」

「おめでとう」

 と彼女は微笑んだ。

 元々美人の加奈子の浮かべた穏やかな微笑みは、これまで私が見た中で一番綺麗だった。

 

「公立高校の入試は三月七日だ。それまで結果が良かったものは油断せずに、不本意だったものは今までの努力を信じて頑張れ。数学でも理科でも英語でも解らなかったらなんでも訊きに来い。どの先生も同じ気持ちだ。今日は気をつけて帰りなさい」

 光岡先生がとホームルームを締めた。


「加奈子、森君、私先に今日は帰るね」

 私は、悪いなと思いながらも伝えた。

「くっ、家庭教師の日か。健闘を祈る」

 森君は苦虫噛み潰したような顔で言った。

「美夏ファイト」

 加奈子はウィンクした。

「うん、二人ともありがとう」

 私は自宅へ走った。合格を早く両親に伝えたかった。なにより芳原先生に少しでも可愛い私で会いたかった。



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