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終幕(上)

終幕feat.岩崎。

「いつから考えていたのですか?」


 教室に戻ると、真嶋がいなくなっており、現在俺の席で岩崎と会話中だ。


「何のことだ?」

「とぼけないで下さい。泉さんの加入のことです」


 とぼけたつもりはない。何の脈絡もなく、こんな質問されたら普通は聞き返すだろう。


「連中の話を聞いてからだ」

「本当ですか?立場を利用して仲間にしてしまえ、とかずっと考えていたんじゃないんですか?」


 こいつの中の俺は、一体どれだけ嫌なやつなのだろうか。


「文句があるならその時に言えよ」


 もう決まってしまったことを今から変更することはできないぞ。


「別に文句があったわけじゃありません。ただ理由が聞きたかったんです」


 明らかに文句があるだろう。現に岩崎はとても不満そうである。


「本当に他意はないぞ。本来の目的はあのイトコたちを解散させることだけだったんだ。ただ、あいつらの意志を尊重しようとしたとき、解散させてあとは知りません、じゃ決まりが悪いだろう。あの子の教育と罰の両方を兼ね備えているいい手段だったと、俺は思うぞ」

「だから別に文句があるわけではないと言っているじゃないですか。ただ、」

「ただ?」

「ただ、成瀬さんが一人で全部決めてしまった事が少し納得いかないだけです」


 その件については、俺が納得いかないぞ。


「俺に全権を委ねるって言っていたじゃないか」

「その前の話です!彼らの話を聞く前から、占い研の解散のことは考えていたんですよね?何で話して下さらなかったんですか?」


 若干論点がずれているような気がするが、一理あるな。


「そういうことか。悪かったな。あんたは仮にも部長だったな。少しくらい話しておくべきだったな」


 俺は若干反省したのだが、


「それだけですか?」

「は?」


 それだけって何が?


「相談するべきだったと思った理由はそれだけですかと聞いているんです!じゃあ何ですか、私が部長じゃなかったら、成瀬さんは私に相談してくれないんですか?」


 またしても論点がずれているぞ。何をそんなにムキになっているんだ。現に部長であろうとなかろうと、相談してなかったわけだし、麻生にも何も相談していない。


「私は部長じゃなかったら、成瀬さんに必要とされないんですか?部長じゃなきゃ隣にいられないんですか?」


 まったく意味が解らない。もはや完全に話が違ってきているぞ。脈絡ないにもほどがあるぞ。拗ねているだけだと思っていたのだが、どうやら話は別路線に移ってしまっているらしい。いつ路線が移ったのか皆目見当もつかないのだが、岩崎は真剣な様子。何となく適当にごまかしが聞くような状況ではないような気がした。


「今回の事件、解決できたのはあんたのおかげだと思っている」

「嘘です。だって私は何もしてません!全部成瀬さんの力です」

「結果から見ればそうかもしれない。だが、細部を見ると答えは違ってくる」

「どういうことですか?」


 こいつは本当に面倒なやつだな。


「俺は今回の事件、全く興味なかった」


 最初は特にな。


「俺が解決できたのは、あんたが積極的に動いて、必要な情報がすでに俺の手元にあったからだ」

「で、ですが、私だけでは解決できなかったと思います!」

「だが、俺だけでもできなかった」


 これは確実だ。


「じゃあなぜ解決できたんだ?」


 答えは簡単に導き出せるはず。


「ですが、成瀬さんは別に解決したくてしたわけではないのでしょう?」


 まあそうだな。少なくとも積極的ではなかったのは間違いないし、岩崎の行動により、俺が得をしたわけでもない。だが、


「世間的にはどうだ?」

「え?」

「解決してほしいと思っていたはずだろ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・」


 まったく何でこんなこと言わなければいけないのだろうか。正直口に出したくない。だが、こいつがこんな様子じゃ仕方がない。岩崎が落ち込んでいるのは、俺の日常にふさわしくない。


「だから、あんたが俺の隣にいるのは世間が望んでいるからだ」


 今回の事件を解決できたのは、俺と岩崎が一緒にいたからだと言えないこともない。かなり大まかな言い方をすれば、間違っていないと言えなくもない。大枠で捉えれば、そう表現しても差し支えないような気がしないでもない。


「つまりは、俺たちがどんなにお互いを必要としていなくても、世間的には一緒にいてもらいたいということだ。俺たちがどんなに離れたいと思っても、世間がそれを許してくれないというわけだ」


 正直恥ずかしいね。何が悲しくてこんなことをほざいているのだろうか。もし俺が誰かからこんなことを言われたら、脳がどうにかしてしまったのだろうと即座に判断するね。もしかすると、現在俺の脳はどうにかなってしまっているのかもしれない。


「・・・・・・・・・・・・」


 何か言ってもらいたいね。無言でいられると困るので、またしても俺が口を開くことにする。


「全く迷惑な話だと思わないか?」


 すると、岩崎は意識を取り戻したように、はっとして、


「ほ!本当です!全く迷惑な話です。私はもう成瀬さんの面倒なんて見たくないんですけど、世間がそう望んでいるなら仕方がありません。本当に、全く迷惑な話です!勘弁してもらいたいです。ですが、世間がそう望んでいるなら仕方ないですよね」


 と、あわてた様子ですごい勢いでまくし立てた。

 とりあえず、納得してくれたようだ。やれやれ。無駄に頭を使ってしまったし、無駄に恥をかいた。昼休みなのに、全く休めなかったな。


 しかし、隣でぶつぶつ言っている岩崎が嬉しそうだからよしとしよう。こいつの機嫌を取るのが俺の役目らしい。全く迷惑な話なのだが、世間の望みなら仕方がない。だが、


「迷惑だと言っているわりには、やけに嬉しそうに笑うじゃないか」

「は!こ、今度は騙されませんよ!今回は絶対に顔に出てなかったと思います!」


 こいつをからかうのは俺の趣味だ。




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