序幕
この小説は、偶然という名の奇跡、というシリーズ物の続編です。前作を読まなくても楽しむことができますが、より本作を楽しんでいただくために前作を読まれることをお勧めします。
さて。無駄なことをやり、やるべきことを全然やらなかった二月の学年末試験から、早二ヶ月が経ち、俺たちは新学期と向かえた。三月については特に何もなかったと言っておこう。言うなれば、テストの成績はなかなかよかったこと、ホワイトデーには無理難題が押し付けられたことなど、報告しようと思えばできなくもないのだが、別段必要ないと思うので、今回は割愛させてもらうことにする。また別の機会にでも報告できたらしよう。
四月の新学期と言えば、進級がメインとなり、クラスも変わったりする。
今回俺たちはめでたく二年になることができ、クラスも大幅に変わった。二年になると、三年に向けて文系やら理系やら進路を決めるために重大な作業がある。一番最初に言ったと思うが、俺たちは進学クラスである。しかし、二年になり、文系理系に分かれるため、他のクラスと混合されて、もはや進学クラスの影はなくなりつつあった。
気になるクラス分けだが、俺はかなり孤独な雰囲気にさらされていた。知り合いはほとんど皆無で、転校でもしてきた気分だ。麻生とも、小学校の低学年以来クラスが別になった。
ところが、ちゃっかりというか何というか、この女とは同じクラスになってしまった。
「成瀬さん、また同じクラスですね!麻生さんは残念でしたが、まあ新たに交友関係を増やす絶好の機会ですから!前向きにいきましょう!何はともあれ、また一年よろしくお願いします」
わざわざいう必要もない、一年次のクラスメートおよびお悩み相談委員会の長、岩崎である。
正直なところ、俺は一人でいるのが好きな人間である。別に知り合いがいなかろうが、麻生がいなかろうが構わないのだ。どうせ放課後には顔を合わせることになるのだから、クラスでまで同じになる必要など感じないし、実を言えば別のクラスになりたかった。
とはいえ、今更何をわめこうがどうしようもないのだから、これ以上は何も言うまい。今の状態を受け入れるしかない。
こんな感じで前向きなのか後ろ向きなのか解らない雰囲気のまま新学期を迎えることになったのだが、相変わらず俺には貧乏くじしか残っていなかったのか、このクラスには岩崎並とは言わないが、ややこしいのがたくさんいた。
ややこしいのがたくさんいるクラスに、何もないことを望むのは、近くの池に恐竜がいるといううわさ並に期待できないのだが、どうやら何か起こってしまっているようだ。俺の知らないところで起こる分には、何ら文句など言う必要もないのだが、身近に妙な出来事が起こってしまったことをとりあえず報告しておこう。
一応言っておこう。今回は百パーセント俺のせいではない。