キャラのリアル化は極上です。
満開の桜の木が続く道。
俺と同じ制服を着た人達が歩いている。
「やっぱり有名な高校だけあって、人も多いわね〜。じゃあ母さん受け付けしてくるから、先に体育館行っててね。七瀬君はちゃんと一人で行けるかなぁ?」
「そのくらい行けるわ!」
「はいはい!怒らない!・・行ってらっしゃい。」
“あれっ。七瀬の母親って誰かに似てんなぁ。”
「行って来ます!」
“たしかアニメでこっち側に行ってたはず・・・。にしても、本当に桜すげぇな。来る時にも思ったけど、アニメを見るだけじゃわからないこととか色々見れるんだな。”
その時、背中に強い打撃を感じた。振り向くと七瀬と親友の永瀬悠人だった。
“こっこのシーンは・・・!?”
「よっ!七瀬。そんなにキョロキョロしてどうしたんだ。まさかっ体育館どこかわかんねーのか?(笑)」
“うわぁ〜本物の七瀬悠人だ。てか顔近かい。でもリアルで見るとイケメンだなぁ・・・。”
「よっ・・・よお悠人。」
「んー?お前今日どうしたんだ?なんかおかしいぞ?ちゃんと朝飯食ったか?俺は食ったぞ!でも腹減ってきたぁああ!購買とか学食あんのかな??どこだ??どこだ??!!」
“まさか永瀬悠人のグルメ弾丸トークを直に聞けるとは思わなんだ・・・。”
「こんな時間に売ってねーだろ。」
「はっはっはっ(笑)じゃあお前を食べちゃうゾォー!」
「やめっ。やめろって(笑)」
“アニメ通りの奴なんだなぁ。しかもかなりイケメン・・・。いやいやっいかんぞ!俺は生徒会長一筋だあ!”
体育館に入ると、そこにはすでに多くの新入生と保護者がいた。
「本当に人多いなぁ。」
「まぁこの都内でも有数の高校だからなぁ。人気なんだろっ。俺は飯が美味らしいから入ったがな!」
「お前ってそんな理由でこの高校入ったのかよ!?」
「そんな理由いうな!俺にとって最優先事項だ!」
“こいつキャラぶれないなぁ(ーー;)”
「それより七瀬。クラス表あっちらしいぞ。見てこようぜ!」
「おっおう!」
クラス表の前は一層人が多くて、ろくに表は見れない状態だった。
「七瀬っ逸れるなよ。」
そう言って悠人は手を差し出してきた。
“えっ!?こんな手繋ぎレアシーンアニメにないぞ!主人公最高だああああ!!!”
悠人の先導で何とかクラス表の見える位置まで来れた。
「俺は・・・1-3か。おっ!七瀬も1-3だ!一緒のクラスだな!よろしくな!」
「おっおう!」
“一緒のクラスになるのもアニメ通りだな・・・。ってことは、もうすぐ生徒会長と運命的な出会いが・・・(΄◉◞∀◟◉`)”
「席はクラスごとに座ってればいいみたいだな。おっ!あそこ縦2席空いてんな。あそこに座ろうぜ。」
“入学式の席は悠人と近いんだな。”
入学式が始まり、順々にプログラムが進んでいく。
「学校長 祝辞。」
“あーっ高校とか中学とかみんな校長の話っていつも長かったなぁ。なんか懐かしいな。”
「おっほん・・・。祝辞・・。桜の蕾も・・・。」
-5分後-
「であるからしてー・・・。」
-30分後-
「であるからしーて・・・。」
-1時間後-
「であるからにー・・・。」
“おい待て。今のプログラムは3番目。校長の祝辞だ。生徒会長の祝辞はプログラムの4番目。未だに校長の祝辞が終わらねぇっ!!長すぎないか??アニメの裏話が体験できんのは嬉しいが、校長の話を1時間も体験したくねぇよ!!長かったなぁとか懐かしさ通りすぎて、校長って何だっけ祝辞って何だっけってゲシュタルト崩壊し始めたよ!?隣の奴はもう関節の構造が分からないくらいの姿で寝てるぞ?どうなってんさこれ・・・。あーもうやめてー!現実離れしすぎだよ!!アニメの世界だけどね!異世界だけどね!”
「おいっ・・・おいっ七瀬!」
後ろから悠人に話しかけられた。
「俺思うんだけどさ。校長の頭ってコッペパンぽいよね。あと少し気になったんだけど校長の話ちょっと長すぎじゃね?」
“悠人・・・少し気になる程度なのか?1時間経ってお前の感覚はちょっとなのか?ませめて30分くらいには長いって思うのが普通だろう。それにコッペパンってなんだよ!頭コッペパンって!”
「俺っもう校長の頭にどう焼きそば乗っけたら焼きそばパンっぽくなるか考えるのも考え尽きたぞ!」
“これは尽きる尽きない以前の問題なんだろう。”
「食い物の想像もそこまでくると天才だな。」
「俺は天才なのか!」
“いやアホだ。”
「であるからしてー以上で祝辞を終わりにします・・・。」
“やっと終わった。アニメで出るのはほんの数秒だったぞ・・・。気持ち切り替えよう!次は憧れに生徒会長だ。”
「生徒会長 祝辞。」
ゆっくりと壇上に上がる生徒会長。
モデルのようにバランスの良い体。彫りが深くて目鼻立ちの良い顏。言葉で表しきれないかっこよさ。
“ずっと、ずっと憧れていたアニメのキャラが目の前に!やばいっすげえ嬉しい。”
それはアニメで見るのと全く違った。1秒1秒がゆっくりと流れるのような感覚に襲われ不思議な感覚だった。今なら「忘れられない入学式になった」という七瀬の言葉も分かる。
入学式が終わり、悠人と一緒に教室へと向かった。
「あーっ終わった終わった。校長の話本当に長かったなぁ。もう俺腹減っちゃったよ〜。なぁ七瀬。」
「・・・。」
「七瀬ー。七瀬!聞いてるか?」
「あっ!ごめんっ。何だっけ?」
「だから腹減ったなーって。」
「あーっ。そうだなっ。」
「本当に七瀬大丈夫かよ?今日は朝からおかしいぞ。」
「そうか??σ(^_^;)」
「まぁ いいかっ。あっあとあの生徒会長!」
「へっ!?」
「生徒会長だよっ。スラッとしててモデルみたいだったなぁ。あれだなっチュロスだな。」
「お前は食い物専門だな。」
「おう!俺は食い物大好きだ♡」
“やっぱぶれない奴だな。”
「そう言えば、お前入学試験トップだったんだってな!すげぇなっ七瀬はぁ。もうちょっとで七瀬に勝てたのに。」
悠人は目をキラキラさせていた。
「学食の割引券はやんねーぞ!」
「あちゃーバレてた。」
「まぁ俺も自分の力で頑張ってみるわ。」
“あれっ。こいつのことだからせがんでくると思ったんだが・・・。”
「そうかっ。」
“だけど、入試トップって言っても俺自体はそんな成績が良いわけじゃないが・・。まぁアニメの設定でどうにかなるかもな。”
教室の座席は出席番号順に座った。さすがに悠人とは少し離れた席になった。
「あっあの、小熊くんだよね。」
“小熊・・・?あっ主人公の名前か。”
「僕・・・藤間春っていうんだ。よろしくね・・。」
“こんなキャラいなかったよな。裏話か。そりゃクラスメイトとも話すだろうし・・・。”
「おう!よろしくっ俺は奥間っ・・小熊七瀬だ。」
「小熊くん入試トップだって聞いてさ・・。すごいなって思ったんだ・・・。」
「そうかっ。俺も正直自分がトップとかそういう自覚なくて(笑)偶然だって偶然。俺はもともと成績良くなかったしな。」
“入学式からアニメの世界に入ったからな・・・。俺がアニメの世界に来る前の主人公の設定は、小熊七瀬の設定なのか?でもそれだと俺自身のキャラと全然合ってない。もしも俺自体がアニメ世界全体に反映されてるなら、入試でトップの成績になってないはずだ。”
「おーい!全員席につけー。」
教室に入ってきたのは生徒会担当教師の横田だった。
「この1-3の担任になった横田健一だ。担当教科は科学だ。よろしくな!」
“横田って科学教師だったのか。見た目まるで体育教師だな(笑)へ( ̄∀ ̄)”
「俺が今教室に入って来て、体育教師だと勝手に思った奴は・・・。シバくぞ?」
“明らかに目線が俺に合ってる・・・。寒っ。”
俺は背筋に凍りつくような寒気を覚えた。
やっと放課後になり、アニメ通り悠人が部活見学に誘って来たが断った。
一人で残った教室に夕日が差し込んできた。
そろそろだ・・・。
教室のドアが開いた。
“ドキドキしてきた。”
教室に生徒会長が入ってくる。
生徒会長は僕がいるのを確認すると、僕の前に立った。
入学式で見るよりも何十倍も何百倍もかっこよかった。威圧感と彫りの深いお堅い表情。
「君は、小熊七瀬くん?」
「そっそうです!」
“キターーーーーー!!(*≧∀≦*)”
「小熊くんは、入学試験で一位の成績だって聞いたんだけど・・・。」
数秒間の沈黙が続いた。
会長は俺に合わせた視線を外さなかった。
「ぜひ、生徒会に入ってくれないかな?」
「はい!ぜひっ・・・いやっダメです。」
“まだ ダメだ!ここで承諾すると「明後日」がなくなってしまう。”
「この学校は毎年生徒会に一年生を一人、入学してから入れる規則なんだけど、入学試験一位の子を誘うのが、習わしみたいになってて・・・。ダメ・・かな?」
“ずっきゅううううううん♡”
会長の堅い表情が少し緩んだ瞬間、俺は一瞬理性を失いかけた。
“落ち着けー。落ち着くんだあ七星。”
「だっダメです!俺全然生徒会とか分かんないし。入学したばっかで考えられないっていうか・・・。すいませんっ。」
「いやいやっ謝らなくても大丈夫だよ。俺は生徒会長の吉岡友晴だ。気が変わったら、明後日までに連絡してくれ。」
「はっはい!わかりました!」
会長はそう言うと、連絡先の書かれた紙を置き、教室から去っていった。
「おっしゃあああ!!「明後日」ゲットおおおお!!!」