やっぱアニメの世界入っちゃってるよ。
「ふわぁ・・・。」
俺はあくびをして起きた。
いつもの天井・・・。
いつもの部屋・・・。
いつも景色・・・・・・・・・じゃない!?
「ここっ・・・どこだ!!!!!」
もう一度辺りを見回しても、自分の部屋でないのは明らかだった。
「七瀬ー。どうしたのー。」
誰からの声が聞こえた。
“誰か来る!?でも 今七星って?”
「入るわよー。」
“どうしよう!隠れた方がいいのか????”
扉のドアが開いた。
「あっ!?」
そこに立っていたのは、見知らぬ女性だった。長い髪を後ろで纏めてエプロンをつけていた。
“やばいっ!知らない家にいて、俺完全に侵入者じゃねーか?”
「おっ俺。起きたらっここにいて・・・。意味わかんなくて・・・不審者とかじゃっ!」
「はぁ?七瀬。うるさいからどうしたのかと思ってきたら、なに寝ぼけてるの?」
「はっ・・はぁ・・・?」
「どうしちゃったの七瀬。今日は高校の入学式なんだから。シャキッとして、早く起きてご飯食べなさい!」
俺は自分がどこにいて、この人は誰なのか、現状把握が全くできていなかった。
“不審がられてない??しかも、俺の名前知ってるし・・・どういうことだ?”
「あの!・・・俺っ・・・。」
「どうしたの?」
「いっいや・・なんでも・・・。」
「とりあえず早く下、来なさいよっ。」
そう言ってその女性は部屋からでて行った。
“どういうことだ?全く理解できない。どうするべきなんだ?ここから出た方がいいのか・・・?”
俺はとりあえず、ベットから出た。
どこにでもあるようなベット・机それに本棚。全てきちんと整理されていた。どこを見ても完璧だ。いや、完璧すぎだ。まるでそこにただ置いてあるだけのようにも見る。
どこにも人が使ったような跡がない。綺麗すぎる。
“でもこの部屋、前にも見たこと・・・。”
よく見ると、机の上には一枚の写真が飾られていた。
“・・・んっ!?”
俺はその写真を見て驚いた。
写真には2人の中学生くらいの男の子二人が、肩を組んで写っていた。その写真の右側の人物は明らかに自分だった。
“俺・・こんな写真撮った記憶ない・・・。隣に写っているのは誰だ・・・?”
俺は写真を顔の近くに寄せた。
「この隣の奴・・・。」
一人の人物が頭に思い浮かんだ。
“まさか永瀬悠人!?”
その人物は幼い顔ではあったが、俺の好きなアニメに出てくる主人公の親友にしか見えなかった。
「なんで・・・?」
“なんで俺がアニメのキャラと写真に写って・・・。っていうかリアルだな。合成にみえねぇ。”
俺が写真に驚いているとドアの外の遠くから声が聞こえた。
「七瀬!!まだ降りてこないの!?もう時間ないわよ!」
さっきの女性の声だ。
「はっはい!!」
俺はとっさに写真を持ったまま部屋を出た。
廊下の奥に階段が見えた。
階段を降りるとすぐに扉があった。
「普通の家だなぁ。普通じゃないのもおかしいか。取り敢えず、この部屋入ってみるか。」
そこはリビングらしい部屋で、天気予報が映っているテレビ、朝食の置かれたテーブル、キッチンではさっきの女性が何かを作っていた。
「やっと降りて来たのね。あと15分しかないわよ!早くご飯食べて、着替えなさい。そこ座って!」
「はいっ!」
訳もわからず椅子に座らされた。
「ほら!はやく食べちゃいなさい。母さん今日のために仕事休んだんだからー。あらっ何で写真なんか持ってるの?」
“母さん? 誰の?俺の?”
「これ・・さっき見てて持って来ちゃって・・・。」
「懐かしいわね。中学生になった時の写真よねー。ってほらほら時間ないからっ。」
テーブルに置かれた湯気のたったご飯と味噌汁、目玉焼きにベーコン。昨日の夜はポテチとジュースだった俺は、なんだか食欲が湧いてきた。
「いただきます・・。」
一口食べた。
「ぱくっ・・・うっうまい!」
「そんなに美味しい?珍しいわね~あんたが私の料理褒めるなんて。」
「うまいです!俺昨日の夜とかろくに食べてなくて。」
「はぁ?七瀬急に敬語なんてどうしちゃったの。それに昨日はお弁当買って来たの食べたってLimo送ってくれたじゃない。変な七瀬だわ~(笑)」
「はぁ・・・。」
“昨日ってことは、俺は以前からこの人と関わりがあるのか?でもこのリビングもどっかで・・・。それに写真にも・・・。”
俺はその時、やっと昨日の大学の食堂での会話を思い出した。
-「異世界転生って、最近アニメとかでよくあるやつだろ。現実世界で死んだら、異世界に飛ばされる的な?」
「そうそう~。でも最近面白いネタがネットでも広まってて・・・。ここ!」
「“実体験!アニメの世界に転移した男”・・・。」
「ネットのオカルト界では今すごく人気なんだよ~。」-
“まさかっ・・そんなっ・・・。”
「ねっ・・ねぇ。」
“俺・・アニメの世界に・・・。”
「どうしたのー。食べ終わったなら早く支度しなさい。」
「俺、今日林華高校に入学するんだよね?」
「まだ寝ぼけてるの?悠人くんと同じ学校に行くって猛勉強してたじゃない。」
「まじかよ・・・。アニメの学校じゃねーか(´⊙ω⊙`)」
“俺はアニメの世界に・・・入っちゃった的な!?しかも俺が好きなアニメじゃんか!”
「ほんと今日七瀬おかしいわよ。大丈夫??」
「うっ・・うん!大丈夫だよ。」
“落ち着け俺。落ち着くんだ。”
「すーーーっ。はああああああ!」
「七瀬 今日の入学式緊張してるのー?」
“「ななせ」って呼ばれてるってことは、俺主人公に成り代わってるってことか?じゃあ見た目も七瀬か?”
「そっそんな訳ないってー!おっ俺、ちょっと顔洗ってくる!」
「あらそうっ?」
俺は足早にリビングを出た。
“洗面台ってどこだ?”
俺はテキトーに合い向かいのドアを開けた。
「おっ!ビンゴ!」
そこには、洗面台と洗濯機が置いてあった。
洗面台の鏡の前に立つ。
「俺っ・・・。」
鏡に映ったのは七瀬ではなく、いつもの自分の顔だった。
“容姿はそのままなのか、残念だぁ。本当に残念だ。リアルな七瀬見たかった〜。見てぇな。俺が七瀬だったら・・・あはっ(΄◉◞∀◟◉`)笑。おいおいおい!待て、冷静になって考えろ・・・俺アニメの中にいるのか?そうだとして俺が主人公ってことは、後々生徒会長と・・・。あはははっ(΄◉◞ཀ◟◉////`)”
俺は蛇口をひねって顔にビシャビシャと冷水を当てた。
もう一度、俺は鏡を見た。
“やばい・・・やばい・・・やばいって!この状況は!”
「七瀬!いつまで顔洗ってるの!本当に時間ないんだから!」
「はーい!」
洗面台を出て、七瀬の部屋に戻った。
クローゼットを開けると、アニメで見た林華高校の制服がかけてあった。
「本物・・・ニヤッ。」
制服に腕を通す。
“俺にぴったりだ。”
「七瀬ーもう出るわよー!」
「はーい!」
そうして、俺の超絶ゴットアニメライフが始まった。