アニメ転移!?夢だろ!
-現実は、アニメのようにうまくいかないんだ。-
大学生活も早2年目。俺の毎日はありきたりで、大学行って、バイトして、ゲームして、アニメ見て・・・。
「ああああああああ!!!!!何も楽しい事ねぇ!!」
「うるせぇ奥間!飯のときくらい静かにしろ!!」
俺は大学の食堂で、できたばかりのソースカツ丼を食べながら、愚痴を吐いて いた。
「たまには俺の悩みを聞いてくれよっ卓也~。なぁ卓也~。」
「言わせてもらうが、それいつものお前の口癖だからな。毎日、毎日!たい焼きかよ!てめぇは!」
卓也の言葉を俺は聞き流し、話し続ける。
「あー。まじ二次元行きてぇ。現実逃避してぇよ~。」
「本当にお前、人の話聞かねぇな。」
「俺がお前の呆れた顔見るの何回目だと思ってんだよ~(笑)」
「誰のせいだと思ってんだよ!」
卓也のムカついた顔を見るのは楽しい。なんてっ・・・。
「悪い悪い、怒るなって(笑)」
「お前を一生もずく食えないように、もずく市場シメてくるぞ!」
「やめろ!いやっ やめてください、卓也様!!」
卓也は本気だった。あの顔は本気だ・・・。
「大企業の御曹司はやり兼ねないから怖いね~。」
「浩幸!お前 全国のもずく買い占めてこい!」
「できるわけないだろ~。そんなにムキになるなよ~七星。」
そう言いながら、浩幸はオカルト雑誌をめくっていた。
「浩幸は本当平和だなっ。あー。まじ謝るからもずくは勘弁な。卓也。」
「お前は、もずくにどんだけ命かけるんだよ。」
「もずくは食の王様。いや神だ!崇める存在だからな!」
「どこの宗教だよ(笑)」
「宗教って奥深いんだよ~。これ見て!」
オカルト雑誌に載っている“いかにも”なページをニコニコしながら浩幸は見せてきた。
「“食材全てを神に崇めた活動内容非公開の宗教”?? 七星にお似合いじゃねーか!」
「俺が崇めてるのはもずくだけだ!!」
「やっぱ崇めてるのかよ・・・。」
俺と卓也がそんな会話をしているなか、浩幸はまたペラペラとページをめくっていた。
「あった!」
「どうしたぁ?浩幸。」
「これこれ!」
浩幸が差し出したページの見出しには、“異世界転生・転移特集!” と大きく書かれていた。
「異世界転生って、最近アニメとかでよくあるやつだろ。現実世界で死んだら、異世界に飛ばされる的な?」
「そうそう~。でも最近面白いネタがネットでも広まってて・・・。ここ!」
「“実体験!アニメの世界に転移した男”・・・。」
「“俺はファンタジーアニメ「シールド・マート・オンライン」の世界でゲームの世界を体験し、アニメの最終話と同じ体験をして現実世界に戻ってきた。そこで出会った人々はアニメと全く同じで・・・。”」
「こんなの妄想だろ。科学的にあり得ない。」
そう言って卓也は話を遮ったうえ、全く興味のない様子だった。
「ネットのオカルト界では今すごく人気なんだよ~。」
浩幸は残念そうに雑誌をしまった。
「俺は面白いと思うぞ!最近のアニメはゲームとか異世界に行くのは結構あるけど、アニメに転移するとかないしな。俺も夢でいいからそんな体験したいなぁ。「放課後の夕日」の生徒会長。一回でいいから生で見てぇ!」
「お前のゲイ話は要らんぞ!」
「そういうなよ~。まじかっこいいぞ生徒会長。本当にあのアニメの主人公と俺名前ほぼ同じなのに、現実とアニメじゃ待遇違いすぎるぜ!」
「七星くんそのアニメ好きだよね~。」
「まあな、今まで見たアニメで一番の俺の理想の恋愛なんだ。こんなこと言えるのも、お前らくらいだけどな。」
そうだ。ゲイは一般で受け入れられないだろうな。
「湿気た顔してんじゃねーよ。」
「なんだよぉ~。卓也くん慰めてくれるの~?」
そう言って近寄る俺を卓也は全力で押し返してきた。
「近寄るな!ゲイ野郎!!俺はそっちには行かねー!」
「まぁまぁ、卓也くんも落ち着いて。」
中学から一緒にいるこいつらは、俺の恋愛対象が男だってことも知ってて、唯一相談できる親友だ。
だが、これから俺があんな体験をするとは自分でも想像つかなかった。
「ただいまー。」
家のドアを開けると、久しく見るハイヒールが揃えてあった。
二階に上がってすぐのドアを開ける。
「ねーちゃん。入るよー。」
部屋には新聞と雑誌の山ができてきた。
「やっぱり。帰ってきてたんだ。」
「これはこれは!七星どの!ご無沙汰しておりました。」
姉は俺にふざけた態度を取りながら、パソコンで記事を書いていた。
「そのオタクじみた喋り方やめろよ。いい歳こいて。」
「何言ってんの!これはオタク同士の通常会話でしょうが!」
「しねーよ!普通!」
ムスッとしながらもパソコンの音は止まらない。
「それ、今度は何の記事書いてるの?」
「これー?これはねー、最近ネットで有名になった人物や事柄が社会にどう影響をしてきているかを書いた記事よー。読んで見る?」
「いいよ、俺は。大学の授業とゲームでチャット見るので精一杯。」
「どうせあんた授業中寝てるんでしょ?」
“バレてる・・・。”
「図星か(笑)」
「うるせーな!」
「はいはい!怒らない!私も仕事の途中だから、学生は自分の部屋に行った行った。」
「言われなくても行くわ!」
俺は姉の部屋を後にしようとしたとき、雑誌の山に浩幸が昼に持っていたオカルト雑誌を見つけた。
「ねーちゃんいつからオカルト好きになったの?」
姉はパソコンを打つのをやめ、こちらに向かった。
「いいところに目つけたね~。その雑誌に最近ネットで反響の高い話が記事にされてて、参考に買ったんだ。」
“もしかして、昼に浩幸が話してたやつか?”
「それって異次元に行ったとかそういうやつか?」
「そうそう!やっぱ オタクは違うわね。」
「オタクを強調すな!」
「まぁまぁいいじゃない(笑)ネットで話読んだけど、結構オカルトとしては面白かったわよ。」
それだけ言うと姉はまたパソコンを打ち始めた。今回は忙しいのだろう。
「あー。疲れた。」
俺は帰りに買ってきたポテチとジュースを机にセットして、テレビを点けた。
「アニメに転移・・・か。」
俺がゲイになった理由。
中古DVD店で、普通の恋愛アニメだと思って買ったDVDがBLアニメだった。
聞いたことない会社に声優。そういうジャンルもなるんだなって、ちょっとした興味で見てみたが・・・。
「また見るかー。」
そのアニメを見たとき、リア充なんかF★ckだった俺がこんな純粋で綺麗な恋がしたいと、心から思った。それに主人公はフェアリー男子で、他の主要キャラクターは美男ばかり。特に生徒会長は俺の理想のど真ん中で、キャラクターの熱狂的なファンになるどころか、ゲイにまでなってしまった。自分が韓流スターを追いかける主婦みたいに思えてくる・・・。
現実が上手くいかなくて、心細くなるといつもこのアニメを見ていた。何度も、何度も。
実際に男と付き合うなんかできっこない。現実は、アニメのようにうまくいかないんだ。
“俺・・・。女子かよ。”
なんて思いながらDVDをレコーダーに入れた。
「“-あの高校入学の日・・・。”」
「始まった!」
“やっぱ生徒会長かっこいいな!”
“この主人公が生徒会長に告白する場面!主人公視点だとすごい切ないんだよなぁ。”
「ふぁ〜。ねみぃ。」
“ちょっと横になりながら見るか。”
これがフラグになるとも知らずに・・・。
「ふわぁ・・・。」
俺はあくびをして起きた。
「朝っ・・・?」
“俺、確か・・・。アニメ見てて・・・寝ちまったのか。”
よく見えない目をこすった。
じんわり、明るい部屋が見えてきた。
“俺、ベットでちゃんと寝てたっけ。”
いつもの天井・・・。
いつもの部屋・・・。
いつも景色・・・・・・・・・じゃない!?
「ここっ・・・。」
「どこだ!!!!!」