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俺と僕の空。  作者: 田村 ポコ。
放課後の夕日
2/8

フェアリーの告白。


また生徒会長からメールが来ていた。適当に内容見繕って、勉強会は行けないと返信する。


“身勝手だって分かってるけど、今会ったら、自分の気持ちを確かめてしまう。”




「ぉ–ぃ、、ぉ–ぃ、、、。おーい! 七瀬!」


「・・・はっ!」

気がつくと悠人くんが僕に話しかけていた。

「おいっ、七瀬大丈夫かよ? 昼飯も全然食べてないし。話しかけてもぼーっとしてるし・・・。それに最近仲よかった生徒会長も見かけねーし。」

そう話しながら、悠人くんの目は僕のお弁当に視線が合っていた。

「食べないなら、俺が食べちゃうゾォー!」

悠人くんが入学式のような不思議な動きで迫ってきた。

「いいよ食べても。食べる気分じゃないんだ・・・。」

「冗談だよ。七瀬マジでお前大丈夫か?なんか ここ最近おかしいなぞ。ずっとぼーっとしてる。」



「・・・。」



「お前とは長い付き合いなんだから、相談くらいしろよっ。」


「何でもいいだろ。」


「何でもよくなんかない。俺たち・・・友達だろ。」




「・・・じゃあ言うけど、もし好きな人と絶対に結ばれない場合ってどうしたらいい?」



「えっ・・・。恋の悩みだったのかぁ。」

悠人くんは困った顔をした。



「えーと。えーと・・・。」



悠人くんは眉間にシワをよせながら考えていたが、この調子だと答えは出そうになかった。


「そうなるでしょ。何もできない。だから悩んでるんだよ。もう忘れるくらいが楽なんだよ・・・。」

そういうと悠人くんが机を叩き、立ち上がった。


「諦めるなよ!俺には、何で結ばれないのかも分からないけど・・・。俺だって色んなことで悩んだことはあるんだぞ。 七瀬はすごいって俺は思う。勉強だっていつもトップで、俺なんか足元にもおよばねー。うまく伝えられないけど・・・。俺は・・・。」



悠人くんの声にクラスは静まっていた。



「悠人くん・・・ありがとう。でも、どうすることもできないことってあるんだよ・・・。」


悠人くんのあんなに熱の入った言葉は、初めて聞いた。




“僕は、知らない間に周りに迷惑をかけていたんだ・・・。”




次の日には、もう悠人くんはいつもの悠人くんに戻っていた。


「悠人くん。昨日はごめんね。」

「いいって。俺も熱くなっちまった。」

悠人くんは普段の表情で、また学食の話をし始めた。





僕は悠人くんに相談をしていない後ろめたさが耐えられなかった・・・。





「悠人くん!!」




悠人くんは話の途中で名前を呼ばれ、少しビックリしていた。


「ちょっと来て。」


僕は悠人くんの手を引いて屋上まで連れて行った。


「おいっ ここ立ち入り禁止じゃねーの?」

「いいから!」


僕は悠人くんの手を離し、深呼吸をした。


「おいっ。七瀬どうしたんだよ急に?」


「昨日、僕が悩んでるって言ったでしょ。実は・・・。」





「・・・。」






「・・・僕会長さんのことが好きなんだ。」





「っ!?」





悠人くんは驚いた様子を隠せないようだった。



「七瀬・・・お前。なんで・・・俺。」




「僕、会長さんが好きで・・・、どうしようもなくて・・・。」






「でも・・・。でも男同士だろ?なんで・・・。」



「だから、悩んでたんだよ!会長さんは僕とは友達でしか見られない。だから・・・。だから・・・。」






「・・・。」








「っう・・・。」





「七瀬。・・・辛かったんだな。気づいてやれなくてごめんな。俺が気づいていれば・・・。」


悠人くんは黙って肩を貸してくれた。



“悠人くん、少し震えてる・・・。そんなに考えてくれてたのかな・・・。ごめん・・・ごめんね。”



「・・・僕、何も言わずに悠人くんに当たって迷惑かけてた。それをちゃんと謝りたくて・・・。ごめんね。」

「いいってよ!お前と何年一緒にいると思ってるんだよぉ。七瀬は七瀬だ。」



-そう励ましてくれた悠人くんは、僕を強く抱きしめていた。-




夏休みに入り早3週間が経つ。


「台風13号が本州に接近中です。関東地方には今日午後6時ごろ・・・。」

テレビでは朝から天気予報ばかり放送してる。

“特に予定もないし、どうでもいいか。”



生徒会長との勉強会も一学期だけで、もうメールも来なかった。

僕もやっと生徒会長への気持ちを忘れられそうだった。


携帯の着信が来た。


-会長さん-


その文字を見るのも、大昔前のように思えた。




「もしもし・・・。」




ずっと聞かなかった声。


「おー。電話出てくれたか!久しぶりだな。」



「お久しぶりです〜。」


“声が震えた。気づかれたかな?”



「後ちょっとで夏休みも終わるな。1年も休み明けのテストあるんだろ?また俺の家で勉強しないか?」


突然の誘いに戸惑った。


「だっ 大丈夫ですよ。」

「そうか。じゃあ 今日なんてどうだ!?」



「・・・えっ。今日ですか?」



「何か予定あったか?」

「いえ!ないです!!」

とっさに答えてしまった。悪い癖だ。


「じゃあ 俺の家でまってるからな。」


「ちょっ・・・。」


-すでに電話は切れていた。



僕は生徒会長の家へ向かった。

あいにく、空は曇り空。

無意識に聞いていた天気予報を思い出した。

“大丈夫かな?”





「久しぶりだな。」

そういって生徒会長は、僕を出迎えてくれた。


「夏休みの課題やったか?」


“予定もさほどなかったし・・・。”


「やりましたよ。」

「じゃあ テスト対策そのままできるな。」

そう言って生徒会長は僕の頭を撫でた。



勉強会が始まり数時間が経った。外は雷と雨の音が激しくなってきた。

「おっ 雨強くなってきたな。」

そう言って生徒会長はテレビを点けた。

「台風13号が関東地方に上陸中です。不用意な外出は・・・。」

「うわっ!? 今日台風来てたのか。ごめんな小熊、今からでも家 帰るか?」

「・・・いいです。もう今帰ってもいつ帰っても同じですよ。」

「そうか。じゃあ 帰るときは送っていくからな。」



生徒会長は僕がずっと勉強会を断り続けたことの理由も、連絡をしなくなったことの理由も聞かなかった。

ただ、いつもの勉強会だった。



「夏休み中何してたんだよ〜。全然会わなかったからちょっと気になってた。俺は勉強ばっかしてたな。親も大学受験にうるさいしな。なぁ小熊、お前の友達の永瀬とかと遊び行ったりとかしたか〜?海とかいいぞ。」




「別に・・・。」




「別にってなんだよっ。勉強に明け暮れる日々って感じか?」





「関係・・・なぃ・・・。」







“違ぅ・・・。”







「ちゃんと課題もやってたしな。」






「関係なぃ・・・じゃん。」







“違うんだ・・・。”






「おい、小熊。どうした?具合悪いのか?」






“忘れるなんて・・・できるわけないよ。”






「大丈夫です。別に悪くないです。」






「本当か?念のため薬取ってくるから待ってろ。」






そう言って立ち上がった生徒会長を、僕は引き止めた。





「会長さん・・・・・・。」







「どうした?他にも何か必要なもの・・・。」








「会長さん!」







「なんだっ?」





「もぅ・・・。もう僕に・・・優しくしないでください。」






“分かってる・・・。”








「でも、本当に調子悪そうだぞ。顔色もよくなっ・・・。」







「あなたはいつもそうやって!なぜ僕に優しくするんですか!?」






“分かってるんだ・・・!”






「もう やめて下さい!!」





「すまん。俺、気に触るようなことしたか?」





“絶対に結ばれないって・・・。”





「これ以上。僕は耐えられないんです。僕は・・・先輩の前でとんでもないこと言い出しそうで・・・。」






僕はもう生徒会長の顔は見れなかった。






「小熊・・・。言ってくれなきゃ。俺はどうすることもできないんだよ。聞かせてくれ・・・。何も怒ったりしないから。」










“好きを言ってしまったら・・・。”









「・・・。」










“言ってしまったら・・・。”











「小熊・・・。」
















「す・・・っきなんです・・・。」










「ん?」










「す・・・きなんです。」








「・・・ちゃんと言ってくれよ。」














「・・・好きなんです!。会長さんが好きで・・・。一緒にいたら・・・僕、もう何も考えられない・・・・・・。」













「小熊・・・。」










「・・・。」










「俺っ・・・。」










「気持ち悪いですよね・・・。男が男を好きだなんて・・・・・・。もうこれ以上。あなたに嫌われたくないんです・・・。」








「・・・・・・。」








「帰ります・・・。お邪魔しました・・・・・・。」










「待ってくれ・・・。 台風来てんだぞ!」









「・・・。」








「・・・七瀬!!」


















“もう 戻れないって。分かってた。”














-後悔の雨音は消えず、雷は近くなって来た。もう何も残りはしない・・・。-

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