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俺と僕の空。  作者: 田村 ポコ。
放課後の夕日
1/8

フェアリーの気付き。

はじめまして。ポコです。


初めてのBL作品です。

心にグッとくる胸キュン小説になるようにしていきたいと思います。


よろしくお願いします。



-あの高校入学の日 それが僕の忘れられない日になった-


校門をくぐり、足早に入学式が行われる体育館へと向かう。校内には桜が咲き、花びらが僕の足音と一緒に空に舞う。-その時、背中に強い打撃を感じた。振り向くと幼い頃からの見慣れた顔がこちらを覗く。

「よっ!七瀬。そんなに急いでどーすんだぁ(笑)体育館は逃げねーぞ!」

そうして犬みたいにまとわりついて、弾丸トークをするのは永瀬悠人くんだ。

「分かってるよ~。でもこれから高校ってワクワクするじゃん!」

「俺は購買とか学食の食い物 何あるか楽しみだなぁ!今 何か売ってるかな?」

「悠人くんは食べ物のことしか考えてないの~?まだこんな時間には売ってないよ~」

「はっはっは(笑)じゃあお前を食べちゃうゾォー!」

「やめてったら、悠人くん!」

そんな会話を続けながら、体育館へ僕と悠人くんは向かった。


開会式が始まり、辺りは静まった。

「入学おめでとうございます。・・・」

ありきたりな校長の祝辞が終わり、生徒会長の祝辞へと移る。




僕はその生徒会長を一目見て、憧れてしまった。




「新入生の皆さん。ご入学おめでとうございます。・・・」




高身長でバランスが良く、外国のモデルのような体つき。顔は彫りが深くて目鼻立ちもしっかりしていた。誰が見ても美男と言えるほどだった。



“堂々としていて、かっこいいな~。僕もあんなふうにかっこよくなりたい。”


入学式も終わり、また悠人くんと一緒に話しをしながら、教室へと向かう。

「そういやぁ。七瀬は入学試験トップだったんだってな!すげぇなっ七瀬はぁ。」

悠人くんは目をキラキラさせながら褒めてくれた。だがすぐに話は変わった。

「テストとかっていい点とると、学食の割引券もらえるんだって!もらったら俺にくれぇ。」

不思議な動きをしながら僕にお願いしてくる悠人くんは、さっきの目とは違い真剣だった。

その後も悠人くんは購買と学食について熱論してくる。入学式前のクラス発表で悠人くんとは同じクラスだと知った時、高校3年間は8割が購買と学食の話で埋まるのではないかと予想したけど、本当にそうなりそうで怖い。


クラスで新しい友達は出来るか?悠人くんの話をどう違う話にするか?不安な心情のなか、やっと放課後になった。クラスメイトが部活見学などで教室を後にして行くなか、やはり悠人くんは僕に話しかけてきた。今度はパンか?麺か?と考えたが、予想は外れた。

「よっ!これから部活の見学行ってくるだけど、七瀬も行くかぁ?」

悠人くんは、もう後ろにクラスの2・3人を待たせており、他の友達と部活見学に行く計画が立っているようだった。

「僕はいいやっ。今度また見学しに行ってみるから。」

「そうかぁ?じゃっまた明日な!」

悠人くんは他の友達と教室を後にして行った。


僕以外誰もいなくなった教室は、夕焼けが窓から差し込み、入学した今朝とはまるで違い、殺風景だった。僕は何となく心細くなった。

“もう帰ろう”っと思い、席を立ったとほぼ同時に、教室の前のドアが開いた。

僕は突然のことに少し驚いてしまった。

そこに立っていたのは、入学式で見た生徒会長だった。僕がいるのを確認すると、僕の前に立った。

立っている僕が見上げるくらい生徒会長は背が高かった。入学式で見るよりも何倍も高身長に見えて、威圧感と彫りの深いお堅い表情は、僕を緊張させた。


「君は、小熊七瀬くん?」

「はっ、はい!そうですが・・・。」


“入学早々に生徒会長が僕なんかに何か用事かな?僕何か悪いことでもしたかな?”


「小熊くんは、入学試験で一位の成績だって聞いたんだけど・・・。」


1秒か2秒の沈黙でさえ、会長の鋭い目が僕を逃さない。


「ぜひ、生徒会に入ってくれないか?」

「えっ!?」


僕は生徒会長の話の内容に驚きを隠せないでいた。だが会長の表情は今までと変わらず堅い表情のままで、僕は冷静になった。

「生徒会に・・・ですか?なぜ僕が??」

「この学校は毎年生徒会に一年生を一人、入学してから入れる規則なんだけど、入学試験一位の子を誘うのが、習わしみたいになってて。」

「なるほど。急にヅカヅカ来られたのでビックリしちゃいました~。」

僕は意味もわからずやってきた生徒会長の存在を理解し、ホッとして笑みが溢れた。

それを見た生徒会長は、その堅い表情が少し和らいだように見えた。

「それで、生徒会入ってくれるか?」

僕は脳をフル回転させてとっさに答えを考えた。

「あのっ・・・。僕、あんまり目立つ事とか苦手で。生徒会とかそんなすごいところは入れそうにないです・・・。せっかくなんですが、お断りします・・・。」


「そうか。俺は生徒会長の吉岡友晴だ。気が変わったら、明後日までに連絡してくれ。」


生徒会長はそれだけ言うと、連絡先の書かれた紙を残し、教室から去って行った。


“僕はすごく後悔した。入学式で憧れになった会長さんに話しかけられて、近くでそのかっこよさを学べるチャンスが来たのに。僕は何てことをしちゃったんだろう。”


後悔をしているうちにその「明後日」は来てしまった。もう半ば諦めてしまった僕は、気を紛らわすために放課後の屋上で勉強する事にした。誰も来ないこの屋上は僕の勉強する場所として、すごくいい条件だった。風通しがよく、フェンスも無いから町がよく見える。


日も傾き、入学式のように夕日が校舎を照らし始めた。僕は入学式に生徒会長と会った事を思い出し、後悔の念がまた襲ってきた。


鈍い鉄のドアが開く音で、誰かが屋上に来たことがわかった。

ドアの方を振り向くと、あの入学式の日と変わらない堅い表情の生徒会長が立っていた。生徒会長は僕の方へ歩いてくると強い口調で僕の名前を呼んだ。

「小熊!何でこんな所にいるんだ!!」

いつもの顔だと思っていた生徒会長の表情は、怒りとどこか悲しい表情をしていた。

僕は冷静になって怒られている事を自覚する。

「・・・はいっ!ごめんなさい 返信しなくて。やっぱり生徒会には入れません。なので・・・。」

“僕は生徒会に入る気はないって、入学式の日と同じ事を言ってしまった・・・。”

「違う!!!」

「っ!? えっ?」

「えっじゃないよ!この屋上は立ち入り禁止しなんだぞ!」

僕はドアに貼られたボロボロの紙に「立ち入り禁止」と書かれた紙を生徒会長が開け放ったドアに見つけた。

「あっ!!すっすみません!僕気が付かなくて。」


「はぁー。」

生徒会長はため息をつくと、僕の方に向き直った。

「小熊 怪我はないか?」

「っはい・・・。」

生徒会長は辺りを見回した。つられて僕も辺りを見回すと、気が付かなかったが先の尖ったガラスの破片が辺りに転がっていた。

「ここ。こんなにガラス散らばってるんだぞ。それにフェンスもないんだ。もし落ちたらどうするんだ?」

「すみません・・・。」

“もしかして、会長さん。心配してくれたのかな?”

「ったく。ヒヤヒヤさせやがって。教室にもどこにも居ないからまさかと思ったが。」

「本当に、すみませんでした。会長さんにそんなに迷惑かけてたんですね・・・。」


「本当に、世話の焼けるやつだなっ。」


そう言って生徒会長は僕の頭を撫でた。

その生徒会長の顔は来た時の表情と違い、また少し和らいでいるように見えた。


「とりあえず、ここに居るのが先生に見つかると呼び出しになるから、教室まで行くぞ。」

「はいっ。」


僕は生徒会長と一緒に屋上を後にし、教室へと向かった。


「なぁ、小熊。何でお前屋上なんかに居たんだ?まさか良からぬ事考えてたりしないよな。」

「あの・・・。僕静かに勉強がしたかったんです。屋上だと誰も来ないし、景色も綺麗だし、いいなって思ったんです。」


「そうか。」


あの入学式の日と同じだった。僕はあの日の夕焼けを思い出した。


「じゃあ 俺のうちに来るか?」


「えっ?」


僕は生徒会長にまた怒られるのかと思っていたが違った。

「俺の家は、両親共働きで忙しいからほとんど家に帰って来ないし。静かだぞ。それに俺が勉強教えてやる。」

「いいんですか?・・・。」

僕は生徒会長の話の展開がよく掴めなかった。

「その代わりに、もう屋上には行くなよ。」



-会長さんの初めてみた暖かい笑顔-



「じゃあ、明日放課後にこの教室で。」

また、素っ気ない挨拶で生徒会長は去って行った。


僕は今あった事を一つ一つ頭の中で整理した。

“会長さんに勉強教えてもらえる!”

喜びで死にそうになった。





この日から生徒会長と僕は定期的に勉強会をした。日を重ねるごとに勉強もはかどり、生徒会長のことも分かってきた。



「会長さん!ここの数学の問題教えて下さい~。」

「これっ基礎問題だぞ(笑)入学試験本当に一位だったのか?」

「一位でしたよ~!」


最初の頃はあんなに堅い表情で怖かったのに、今は常に表情は和らいでる。(あんまり表情変わんないけど(笑))


でも、生徒会長は家の事と恋愛の話はしようとしなかった。


“家のことは色々あるんだろうな。いつ会長さんの家に行っても、会長さんのお父さんとお母さん見たことないし。でも恋愛の話はしたことないな。思い切って・・・。”


「なぁ小熊・・・。」

「あっ・・・。」

タイミング悪いな。


「まぁいいやっ。」

「そっ そうですか・・・。」




「会長さん!」

「なんだ?」

「会長さんって、今まで何人の人と付き合ってたの?」

生徒会長の表情が堅くなった。

「んー・・・。」

「どうなの~?」

「2人くらいかな・・・。でも今は大学受験控えてるし、彼女とか考えたことないな・・・。」

「そっか~。皆んな可愛い子だった?」



“何だろう・・・。何でこんなに胸が窮屈なんだろう。”



「そうだな。」

「ふ~んっ。じゃあ じゃあ 会長さんはどんな子がタイプなの?」

「胸がデカイ方がいいかな(笑)」

「会長さん むっつりみたいだよ~(笑)」



“あれ・・・? おかしいな。”



「むっつりじゃねーよ!(笑)」



“なんか、すごい・・・苦しいな・・・。”



「そっか。でも、会長さんはこんなに僕に勉強教えられるんだから、大学受験は楽勝!楽勝!恋愛しても大丈・・・。」

生徒会長の表情が変わった。


「楽勝なんかじゃねーよ。」



屋上で見た時と同じ顔だ。



「・・・。」


「・・・。」


「そっ そうだよねっ!さすがの会長さんも手強い相手がいるよね~。」



「まあな。」





“僕、気づいたんだ・・・。


僕は、会長さんのことが好きだってこと・・・。


それと、会長さんが・・・ 普通の女の人が好きで、僕は会長さんにとって特別にはなれないこと。”





-あの時の夕日は、まだ僕の瞼の裏から離れない。-

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