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ペンはペンで斬る  作者: 吉見アキラ
第一章 創刊
43/43

第43話 エピローグ 木島奏太の件 

本日は二話連続投稿です。

まだお読みでない方はご注意ください。


「いやあ、こんなに上手く行くとはね」


 進は笑いを堪え切れなかった。

 朝のワイドショーでは暴力俳優と散々叩きまくっていたのに、動画が出てきた瞬間、掌を返すように木島擁護に変わった。


 そして、捏造記者叩きが始まっている。


 暴力はいけないとか言っていたコメンテーター達は謝罪の一言もなく木島奏太に同情的な意見を言っていた。本当にワイドショーというのは身勝手な物である。


 そして、『ミヤギヤ』のプロデューサーからは凄い視聴率が良かったと感謝の言葉をいただいた。

 というのも実は裏で手を回していたのだ。


 あの件で木島が出演していたドラマスタッフはかなり頭に来ており、今回の顛末をドラマのプロデューサーに話したら、二の句も無く協力してくれたのだ。

 そうでなければADに成りすまして潜入など出来ない。

 隠しカメラの設置や控え室の手配なども率先してこなしてくれたし、ミヤギヤのプロデューサーまで紹介してくれた。


 もちろん、今回の件に加担していたADは首を斬られている。

 お金や神野のコネでのディレクター昇進をチラつかされての犯行だったのだが、大切な役者をどんな理由があっても陥れるような奴は使えないということだ。


 まあ、自業自得だろう。


 そして、『サーズデイ』の対応だが……


 こういうことになれているのか、対応は迅速だった。

 用意されていたかのように、その日の夕方にはサーズデイのネット版に謝罪文を掲載されていた。

 その前に編集長と役員級の人間が木島奏太の事務所に赴き、謝罪している。


 ただ、『今回の件はフリーの記者の持ち込み記事で一切サーズデイ側は関与していない』と念を押していたのは苦笑ものだ。

 会社の方針として『何度もスクープを上げている記者なので信用して記事を掲載した。裏取りを怠ったことは謝罪するが、今回の捏造には我が社は一切の関与をしていない』とのことだった。


 まあ、落としどころとしては無難なところだろう。

 そして、あの社長はこの件を素直に飲んで謝罪を受け入れた。

 木島奏太としては憤りを抑えられないところだったが、社長は実利をとったらしい。


 一体、どんな条件を取り付けたのか聞いてみたが無言で笑う女社長が怖かったのでそれ以上は聞かなかった。


 そして、木島奏太主演映画だが……


 大ヒットだった。


 今回の件がかなりの宣伝になったのだろう。

 特に木島が隠し撮りをしながら相手の自白をとるところが映画とリンクして話題になっていた。

 出来過ぎの展開に『これって自作自演なんじゃないの?』なんて疑惑さえ生まれたほどだ。

 これは不幸中の幸いということだろう。


 ただ、この動画が出てから木島奏太にドッキリの仕掛け人のオファーが殺到しているのは笑うしかない。

 本当にこの業界の人間はしたたかである。


 映画の大ヒットで喜ぶスタッフ一同だったが、一人この件で喜べない人間がいた。


 そう神野である。



 第一弾で木島を罠にはめる動画を大々的に取り上げて、暴力事件が捏造だったことを公表した。

 神野はことが明るみに出て掌を返して飯島を攻めていた。


 証言の話も否定している。


 確かにあの記事に書かれているのは映画スタッフとか関係者談で実名は載っていない。

 だから、動画で名前が出てきたのは木島を挑発するために記者がブラフを使ったのだろうと言い逃れていた。


 だから第二弾である。


 週刊をうたっているので更新しなければいけない。

 と言う訳で、ホテルで撮った写真を有効活用させてもらった。


『映画の宣伝の為に記者を利用する悪徳プロデューサー』


 完全に追い風な状態での記事なので誰にも疑われなかった。

 神野はネットにこの記事が載ると愕然として、反論することなく辞表を出したらしい。


 ただ、その時の神野の表情はどこかすっきりしていたようだ。


 彼もヒットを義務づけられて苦しんでいたのだろう。

 多分、罪悪感とプレッシャーから解放されたのが彼の表情に現れていたのだと思う。


 そして、第三弾だが……


 これは誤算だった。


 創刊三週目。三号の本題は四宮麗華が木島奏太にハニートラップを掛けたこと。

 彼女が昔、グラビアアイドルをしていた工藤里紗だという事。

 そして、過去にも飯島記者と組んで似たようなことをしていたことなどを暴露した。


 この記事がでる前にも、ちらほら取り上げられていたのだが、進たちの記事は群を抜いていた。


 記事が公開されると我先にと芸能記者が四宮麗華を攻めたてたのだが……


 彼女の対応は周囲を唖然とさせた。


『何が悪いのよ。全部、本当のことよ』


 と開き直り平然と受け流したのである。

 それでも芸能記者の攻勢は止まらなかったのだが、彼女は芸能記者に逆切れで返す。

 それが見ている側からは非常に面白かった。


 今ではすっかりお騒がせ女優のポジションに定着しつつある。

 ワイドショーやバラエティーでよく顔を見るようになった。

 何か起こると芸能記者が彼女にコメントを求めに駆け付け、それに対する彼女のコメントはなかなか秀逸で評判がいい。


 それに彼女はトークの方も達者なようで、毒舌や本音、本当か嘘か紛らわしい話をして場を盛り上げている。

 大半の人間は眉をひそめるのだが、一定層のファンがついたようだ。

 どうやら、これからはぶっちゃけキャラとして生きていくようだ。


 本当に女は怖い存在である。

 転んでもただでは起きないのだろう。

 学生時代に彼女のファンだった進としては何とも言えない気分だった。



 そして、8か月後


「それで木島奏太さん。いま振り返ってあの事件の感想はありますか? あの件が無かったらここまで映画がヒットすることはなかったんじゃないですか?」


「まあ、そうですね。本当に不幸中の幸いという事なんでしょうけど」


 木島奏太が苦笑いで答える。

 そんな彼に進は笑いながらツッコむ。


「次の映画もそろそろ公開なんじゃないですか? もし話題が欲しかったら協力しますよ」


「もう、進さん。勘弁してくださいよ。写真誌騒ぎはもうコリゴリですから」


 そう言って苦笑を浮かべる木島奏太。

 彼は黒のタキシード姿である。


「奏太。そろそろ出ないと遅刻するわよ」


 女社長がこちらに声を掛ける。

 そんな木島奏太に進が


「じゃあ、僕はこの辺で失礼いたしますね。約束通り。あとで受賞コメントをいただきますから」


「まだ、取れるとは限らないですよ」


 そう言う木島奏太の顔は自信にあふれていた。

 そう、あの映画で木島奏太は主演男優賞のノミネートされたのだ。

 今期の顔ぶれを見るとまず間違いないと言われている。

 本当にあの騒動の時には考えられなかったことだ。


 そんなことを考えながら進はその場を後にするだった。


これで第一章は終わりです。

第二章の大筋は考えているのですが、忙しくてプロットにまで出来ていない状態です。

時間は空くと思いますが続きは書きたいと思っているので投稿が再開されたらよろしくお願いいたします。

これまで読んでくれてありがとうございました。

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