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ペンはペンで斬る  作者: 吉見アキラ
第一章 創刊
20/43

第20話 古本屋の裏の顔

 

「それで今回のターゲットは工藤沙里のなのか? それともそのバック……」


「バックンにいる奴だ。そいつが映画プロデューサーの神野隆文と組んで木島奏太を嵌めようとしている」


「なるほど映画の宣伝のためにね」


 おやっさんは本当に頭の回転が速い。

 まあ、そうじゃないとこんな仕事できないのだろうけど


「それでそのバックにいる奴の目途はついているのか?」


 こちらをニヤリと笑って聞いてくる。


「おやっさんの知り合い?」


「この業界は広いようで狭いからな。顔と名前は知っている。なかなかあくどい手口で荒稼ぎしている奴だ。写真をネタに強請りたかり。金がとれなければ週刊誌に売る。はっきり言って子悪党だよ」


「で、そのネタいくら?」


「「…………」」


 二人の間に沈黙が訪れる。

 軽くにらみ合い。

 そして、おやっさんの方が肩を竦めた。


「今回はタダでいいよ。祝儀だと思ってくれ」


 そう言うとカウンターの方に向かう。

 そして、中にあるパソコンを操作しだした。

 しばらくすると脇のプリンターが動き出す。


 おやっさんこと、須藤耕助。

 彼の裏の顔は情報屋である。


 ここには古い記事を確認しに記者が良く訪れる。

 確認している記事がわかればその記者の狙いも分かるというものだ。

 それに世間話などにも情報は詰まっている。


 そんな情報を商売のついでにお得意さんに渡して小銭を稼いでいると今度は情報を売りに来るものが出てくる。

 そして、いつの間にか立派な情報屋になっていた。

 今では子飼いの者までいる。


 そんなおやっさんが印刷された紙を進に乱暴に手渡した。


「飯島康之。こいつが工藤沙里のバックにいる奴だ」


 進は印刷された紙を見ながら頷いた。

 そこには顔写真と簡単なプロフィールが書かれている。


「ありがとう。お礼はいつ――」


「いらねえよ。オメエみたいな若造に気を使われる方が気持ち悪いわ。どうしてもというなら美味い酒でも持ってこい」


 そう言って強面な顔で笑った。

 進だから笑ったとわかる凶悪な笑顔。

 進は再度、頭を下げて踵を返した。


 その時


「ちょっと待てや、進」


 振り返るとさっき以上に凶悪な面をしたおやっさんがいた。

 なんだかいやな予感がする。


「どうしてもお礼がしたいなら一つ頼みたいことがあったんだ」


 自分で言っておいてなんだが、嫌な予感しかしない。

 顔を顰める進を見ておやっさんは高笑いを上げていた。


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