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エピローグ

                    *



 その日から、まるで嘘みたいに先輩の父親は、先輩に過度な干渉をしなくなって、先輩はのびのびしてはいるけど、生活は大体今まで通りのそれのままだった。


 多分、先輩は根っこで真面目だって事なんだろうけど。


 まあ少なくとも、先輩からどこか感じていた影みたいなのは、文字通り見る影も無くなったのは間違いない。


 で、大きく変わった事と言えば、


「楓さんー、チューしてー」

「ん。もー、何回するんですかー。先輩」

「うへへ」


 隠す気一切無しの、もの凄いストレートな甘え方になった事かな。


 ちなみに、変わった事はもう一つある。


 それは祖父の発案で、来年度から全寮制を緩和して、自宅か学校の周辺数キロ以内の賃貸から通えるようにする、というものだ。


 旧い形に拘りすぎるのは時代に合わないから、という意図がある、と祖父はインタビューとかで対外的に説明していた。

 だけど、先輩が卒業したときに実家へ連れ戻されるのを防止するためと、私が先輩と一緒にいられる様にしたかった、という本音を後でこっそり教えてくれた。


 ちょっと孫かわいさのあまりが過ぎる気がするけど、まあ貰えるものは貰っておくということで。





 1年後。何事も無く無事に卒業した先輩は、楓葉かえでば高校と近い地元の国立大学に入学して、私も先輩についていく形でそこに移り住んだ。


 つきっきりで先輩に勉強を見て貰えたから、私もその次の年に入試を受けて、追いかけるように入学した。


「響ー。起きて下さい。フェスに遅れますよー」

「ぬー、早いー……」

「響が行きたいって言ったんじゃないですか」

「楓ー……。起こしてー……」

「はいはい」


 相変わらず私生活はぐーたらな先輩を、私はついつい甘やかしてしまうのだった。

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