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影人、人を助ける。

自分が知らない間にあった出来事を聞いたセルムルスだが、一旦それは隅に置き今の森羅族の現状に目をやった。

「とりあえず、水がある場所で危険がかなりま少ない場所か・・・」

彼には1つ心当たりがあった。彼が畑を作っている場所である。あそこの泉は地下から別の場所に流れ、川が出来あがっている箇所が数か所、存在していた。

「まずは、怪我人を運ばないとな。」

セルムルスは、自分の影に魔力を込めて魔法を発動させる。

「影魔法変異型、ドッペルゲンガー。」

彼がそう唱えると下にある影は沸騰した水のように泡立ち始め膨れあがる。そして、様々な形に変わりあるセルムルスと同じ姿に変わる。そのような光景がしばし続き合計で10人のセルムルスが現れた。

「さぁ、始めるぞ俺よ。」

「あぁ、わかっているさ俺。」

セルムルスが目の前の自分自身に言うと1人の自分が反応しそれに伴って2人1組で動けない怪我人を運んで行く。その運ばれる怪我人は不気味そうな表情を浮かべながら運ばれていく。

「相変わらず、ズゴイですね。」

「なに、これぐらいしか取り柄がないんでね。」

サリーと軽いやりとりをすると移動を始める。子供が遅れないようにゆっくりと歩く。途中、魔物に襲撃されるようなことはなく目的地には日が真上に昇る前に辿りついた。場所は、セルムルスの畑から近い場所を選んだ。

「よし、怪我人をそこの木の下に下ろしたら簡易なテントを作るための素材を集めよう。」

彼は、さらに影に魔力を込めて新たに20人作りだした。

「やるぞ、俺たち。かつての友を助けるんだ。頑張ってやろうや。」

『あぁ、任せろ俺よ。』

そう言うと人数分のテントを作るための材料を集めに駆り出した。

「・・・なんか、不気味ですね。」

みんなが思っていたが黙っていたことをサリーは言った。

「おいおい、酷い言い草だな。可能な限り森羅族に負担を与えないようにしようとしているに。」

「確かに、それはありがたいのですが・・・不気味なものは不気味で・・・」

想像してほしい。自分の友人が、目の前に同じ姿の同じ声で30人もいるところを。サリーの目の前では、これと同じことが起きている。

セルムルスは肩をすくむと自身の帰りを待つ。日が真上から少し左に傾いた頃に彼らは、それぞれ材料を持って戻ってきた。テントの骨格となる木の枝、それを結ぶ蔓。そして、雨風を防ぐ布としてムーファスパイダーの毛。

「さて、やるか。」

「・・・ちょっと待って下さい。」

「なんだ、サリー?」

「木の枝と蔓はわかりますが・・・その毛はムーファスパイダーの毛ですか?」

「あぁ、十分だろ?」

「十分と言えば十分過ぎますが・・・」

また、ムーファスパイダーがただのデカイ蜘蛛となったが、そんな些細なことをセルムルスは気にせずに簡易テントを作っていく。人数分のテントが作り終わったのは日が暮れ、夕焼けが見える頃だった。

「お疲れ様だったな。俺たちよ。」

「何、お互い様だ俺よ。」

セルムルスは自分自身と労いあっているとオーレルが可愛い欠伸をして起きる。

「おー。今日はよく寝たな。オーレル。」

彼は、カゴを覗き込む。しかし、彼はここで、失敗をしてしまう。それは、魔法を解除しなかったこと。それにより30人のセルムルスが覗き込む形を作ってしまった。いきなり増えたセルムルスにオーレルが驚き

「ビィヤァァァァァ!!」

大きな声で泣き出した。

「おぉ!?しまった!!俺たち早く戻れ!!よーしよしよし。いい子だ。いい子だ。落ち着けー落ち着けー」

必死に泣くのを止めようとするセルムルスを見て森羅族はただの父親に見えた。






夜は深くなり月が優しく照らす頃、セルムルスは1人で森羅族のテントの周りの近くにある岩の上で月を眺めていた。

「・・・どうした?」

後ろを見ずに彼は言うと茂みの奥から1人の森羅族が現れた。

「お前は・・・」

そこに現れたのはセルムルスと戦った若い森羅族だった。

「サルナ・リケだ。」

若い森羅族は自分の名を言う

「隣いいか?」

「好きにしろ。」

そう言うとサルナはセルムルスのとなりに座り月を眺める。

「・・・あの赤ん坊は?」

「サリーが面倒みてくれてる。」

そこで、会話が終わる。

「・・・悪かったな。」

「何だ、突然?」

「お前と赤ん坊を殺そうとした。」

「それなら、謝るのは俺の方だろ?」

「いや、原因は俺にある。だから・・・」

サルナは頭を深く下げた。

「別に謝ることはない。お前は、自分の仲間を助けようとした。それだけだ。」

仲間を助けたい。

その気持ちで他のことに目がまわらなくなる。そうなる気持ちは彼には良くわかった。

「なぁ・・・」

彼は深く下げるサルナを見ずに月を見ながら続ける。

「よかったな・・・仲間が生き残って・・・」

「・・・俺は何も出来なかった・・・奴らが来た時に・・・身体が動かなかった・・・・怖かったんだ勇者が・・・」

その言葉に宿るのは懺悔にも似た後悔。

森羅族の戦士が死んでいくのを見ていることしか出来なかった。戦わずに負けた。勇者を見て心が折れた。

あの時、恐れなければ。あの時、戦えていれば。その想いが今も抱いていた。

「別に恐怖は抱いていけないものじゃない。恐怖を知らないものは強くなれない。」

セルムルスは優しく応える。今にも後悔の念に壊されそうなサルナに。

「お前は1度負けてもなお、仲間を守ろうとしている。それは、尊いものだ。忘れてはいけない。」

彼は、決してサルナを見なかった。その夜は優しい月の光と僅かな嗚咽で満たしていた。

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