影人、昔の知り合いと会う
影人族が亡される前、影人族は様々な種族と交流を持っていた。森羅族もその内の1つである。森羅族は、森の中に住み、そこから出ることはない。そのため、閉鎖的になり殆ど交流はない。影人族との交流は希少だった。
「まさか、サリーとまた、会うことが出来るとは・・・」
セルムルスは彼女を家に招き入れお茶を出した。
「ええ、本当に・・・奇跡みたい。」
出されたお茶を飲みながらサリーはしみじみと言う。
「普人族に影人族が滅されたと聞いて私とてもショックで気絶しそうだったんですよ?」
サリエルクス・シャレンテ
森羅族を束ねる族長の娘でセルムルスはよく遊んでいた子である。
「それは・・・悪いことをしたな。」
「はい。でも・・・本当に生きてて良かった。」
目に涙を浮かべ笑顔を見せる彼女を見て本当に嬉しかったとわかる。自分が生きてて良かったと言ってくれる彼女を見てセルムルスは少し救われる気持ちになった。
「それにしても、大きくなったな。」
「もう、立派な淑女ですよ?」
膨らんだ胸を強調し髪を巻き上げる仕草をして言う。
「ははは。淑女は自分のことを淑女とは言わないものさ。」
「もう!相変わらず失礼な人ですね!」
懐かしい。
素直にそう思える。彼女が子供だった時にも同じやりとりを何度もやった。
「さて・・・本格的な話をしようか。サリー。・・・どうしてここに来た?さっき族長と言われていたが・・・まさか?」
「・・・去年の夏頃でした。普人族が・・・普人族が私達の森に攻撃をして来たのです。」
「普人族だと?だが、森での戦闘なら森羅族の方に分があるはず。」
「確かに最初は私達が優位に立っていました。けど!あいつらが!あいつらが出てきてすべてが変わったんです。」
「あいつら?」
「勇者・・・そう普人族に言われていました。たった2人でみんなを!」
「そうか・・・」
「父さんが!私に若い奴らを連れて逃げろって・・・任せたと・・・」
「もういい。わかったから。」
セルムルスはサリー抱きしめ頭を軽く撫でた。
「頑張ったな。辛かったな。大丈夫。もう、大丈夫だから。」
サリーの目に涙が溜まり溢れるように流れだした。
父親の死。本当なら泣きたかった。しかし、それはできなかった。
族長としての重荷。
自分が不安になれば他の人にも伝染する。族長として種族を引き連れなければならない。だから、流せなかった。その貯めた悲しみがセルムルスによって流れて始めた。今、ここにいる彼女は族長ではなくただの少女だった。
「先ほどは、見苦しいものを見せました。」
サリーは、頬を赤く染めて恥ずかしそうに謝る。
「なに、気にすることはない。君の父親とは友だった。その娘となれば俺の娘である。」
「娘ですか・・・」
サリーが不満そうに呟くがそれはオーレルの泣き声によってセルムルスには聞こえなかった。
「あーすまないオーレル。すぐにご飯用意するからなーもうちょっと待っててくれ。」
「・・・そう言えば聞こうと思ったんですけど。その赤ちゃんは・・・」
「ああ。そうか・・・まだ、紹介してなかったな。こいつは俺の子供のオーレ・・・」
突然、部屋の中の気温が下がりセルムルスは言葉が詰まった。
「こ・ど・も?」
「あっあぁ・・・そうだが?」
「つまり、結婚したと?・・・そうですか・・・」
「サリー?」
本能的に危険だと身体が伝えている。何故、サリーが突然こうなったかセルムルスはわからなかった。
「どこの泥棒ね・・・もとい奥さんは誰ですか?1度お会いしたいのですが?」
「いっいや、別に結婚しているわけではない。」
彼は、オーレルと育てるまでいたった経緯を話した。サリーはそれを聞くと落ち着きを取り戻していった。
「・・・事情はだいたい把握しました。けど・・・いいんですか?その子供は普人族ですよ?貴方の一族を滅亡にするまでやった一族ですよ?それを許せるのですか?」
その意味をセルムルスはよくわかっていた。
彼の中で今でも残る記憶。時に夢に出てくる。
目の前で仲間が死ぬ絶望感。それを笑う兵士。その仕打ちに対する怒り。自分の手に残る敵の血液。
そしてなによりも強く残っているのは自分の弱さに対する失望感。
「・・・滅ぼされたのはもう、500年前の話さ。今の普人族には関係のないことだ。それに・・・この子の笑顔を見て復讐なんて馬鹿らしいと思ったんだ。」
穏やかに笑うセルムルスを見てサリーは安堵と自分とは違う感情を持つ彼に僅かな疎外感を感じた。