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影人、人の子を育てる3カ月

オーレルを拾って3カ月が経ち、セルムルスは、己の考えの甘さを痛感していた。

「まさか、子育てがこんなにも大変だったとは・・・普人族の連中は、すごいな。」

数時間置きに泣かれその都度、乳を飲ませて寝かせる。排便したら、自分で処理など出来ないためやらなければならない。影人族と違い温度に感じるため服を作らないといけない。そして、一番の問題は、基本泣くだけだから何がしたいのかわからない。普人族の母親は子供を産んだらこれだけのことをやっていると思うと、素直に感心するしかない。

「えっと、ここをこう縫えばいいのか?」

オーレルの為に作ったベッドに寝かせセルムルスは、オーレルの服とおしめを作っていた。しかし、中々上手く作れない。今まで数十個作って1個か2個、マシなのがあれば上々という成果だった。

「チィィ、せっかく、ムーファースパイダーを捕まえたのに無駄になっちまう。」

ムーファースパイダー。

全身、白い毛皮に覆われている蜘蛛の姿をした魔物だが全長4メートルを超える化物でありその尻から出す糸は、鉄より硬く時には、武器の素材として用いられることもある。そんな、ムーファースパイダーは現在、セルムルスの家の庭でオルトロスと一緒に仲良く、彼が用意したエサを食べていた。本来、覆われているはずの毛皮は存在せずただのデカイ蜘蛛と化したムーファースパイダーは、10人中10人は同情してしまうほど哀愁がただよっていた。しかし、安心してほしい。ムーファースパイダーの毛皮は数ヶ月もすれば、また生えてくる。

「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!また失敗したぁぁぁぁ!!」

そして、今日で6個目の失敗作が完成した。





おしめを必要数、作れたのは、日が傾き始めた頃だった。セルムルスは、オーレルを新しく作ったオーレル専用のカゴに入れそして、普段から使っていた畑用のカゴを背負い、畑に向かった。

前ならば、全力で走っていたところをオーレルが傷つかないように慎重に走る。オーレルは、それを楽しそう笑っていた。

畑に着くと直ぐにある野菜の収穫を始める。オーレルを育て始めて間もない頃にセルムルスは、新しく1つの野菜を植えていた。

その名はナイトオニオン。

このナイトオニオンには他の野菜とは違った性質がある。

収穫する時間によって性質が変わる。

朝早くに採れば辛い味を真昼に採ればすっぱい味をとその時間によって味と摂れる栄養価に日持ちする時間が変化するのである。そして、セルムルスが収穫し始めた時間が最も甘くそして、栄養価が高く日持ちする。

「この時間のなら、数ヶ月は楽に持つ。これで、オーレルの離乳食は問題無いな。」

長年生きた記憶の中からかつての仲間が語っていた離乳食についてセルムルスは思い出していた。

「ふふん。これで、おれも立派な父親みたいに見えるもんだな。」

自分で自画自賛しているセルムルスは知らない。普人族の赤ん坊が離乳食を食べ始めるのは2、3年後だとは。

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