影人、子供を育てる0歳
名前を決めた後、5つの遺体から使える布切れを取りオーレルの身体に巻き付けた後、穴を5つ堀りそれぞれの穴に遺体を埋めた。オーレルの本当の母親を埋めようとした時、遺体から何かが落ちた。良く見るとそれは、宝石がちりばめられた首飾りだった。
(この子に、本当のことを話す時にこれを渡さないとな。)
セルムルスは、その首飾りを強く握りしめるとオーレルを抱いてオーレルの母親を埋めた場所を見ると。
「安心してくれ。この子は、俺がしっかりと育ててみせるから。」
そう言って、その場から立ち去った。
オーレルを引き取って数時間後。セルムルスは、イスに座って難関に立ち向かっていた。
「オーレルが、何を食べるかわからない。」
口を見てみたら歯がないので果物などを食べられない。では、赤ん坊は一体、何を食べるのだろう。
「思い出せ。昔に普人族の国で赤ん坊を見たことはある。その時に母親は、何をしていた?」
普人族の国と交友を持っていた時のことを思い出そうと頭をひねる。
「そうだ!胸を赤ん坊は吸っていた!つまり、胸から栄養を摂るのか!」
間違った答えを出しさっそくとオーレルを自分の胸によせる。しかし、それは母親から乳を吸うためでありけっして、胸に当てればいいというわけではない。オーレルは、セルムルスの求めていた行動などするはずもなくキョトンとした顔でセルムルスを見ている。
「違うのか?じゃあ、何なんだ?」
育てると決めたからには、しっかりやらなければならない。でなければ、あの母親に示しがつかない。それなのにこんなところでつまづいていてはダメだ。
「まてよ・・・確か、メルリスの奴が何か普人族の子供について言っていたような・・・」
同じ集落で暮らしていた人間好きの友を思い出していた。影人族の姿並みに変な奴だったことを覚えている。
「確か、乳とか何か・・・なるほど!それか!!」
セルムルスは、勢いよく立つとオーレルを自分のベッドに置き扉を開け放って森の奥に出て行った。
「やっと・・・見つけた・・・」
森に出て数時間後、セルムルスは目的のものを発見した。高い木の上に登り、その様子を伺う。彼の目には巨大な双頭のヤギが草を食べているところだった。
オルトロス。
普段は大人しい性格をしているが、1度怒らせると落ち着くまで手出しが出来なくなる。かつて、オルトロスを怒らせた魔人族の街が滅ぼされた記録が存在する
。
「あいつらは、雌雄一体。なら、乳だって出る。こいつを捕まえて、オーレルのご飯係にしてやる。」
セルムルスは、足元に魔力を集中させ魔法を撃てる準備をする。
魔法には、火、水、風、土、雷の5つの属性が存在し人は、自分に一番合った属性を扱う。しかし、影人族は、その5属性を使うことが出来ない代わりにある魔法を使うことが出来る。
「影糸」
セルムルスが魔法名を唱えると足元の影が形を変え、糸のような形になりオルトロスに襲いかかった。影で出来た糸は、オルトロスの双頭の首元に絡みついた。
「メェメェェェェェェ!!」
突如の襲撃に驚いたオルトロスは、首に巻きついたモノを取ろうと暴れる。セルムルスは、木から飛び降りオルトロスの近くに着地した。そして、オルトロスの影に手を当てて魔力を込める。
「影糸」
今度は、オルトロスの影が糸になり四肢に巻きついた。セルムルスは、その糸を束ねて、思いっきり引っ張ると縛る力が強くなりオルトロスは地面に倒れた。その隙に、新たなに作った糸で口に巻きつけ魔法を封じた。
「ふう。よし!これで、オーレルのご飯は心配ないな。」
打つ手が無くなったオルトロスは、諦めたようでその場でぐったりとしていた。
セルムルスは、ご満悦になってオルトロスを引き連れて愛しい我が子がいる家に帰ったのだった。