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影人、勇者と相見える1

朝早く、霧が辺りに広がっているころ。小屋の中には2つの人影があった。

「やはり・・・来たか・・・」

「あぁ。男女の2人組でな。」

「思ったより早かったと言うべきかな。」

「それで?どうする?」

片方の影が相手に問いかける。

「無視することはできんだろ。やるしかないさ。」

「1人でか?」

「もちろんだ。わかっているだろ?」

「違いない。」

相手の答えに影は笑う。

「さて、奴らが森に入る前にやるかね。」

「気おつけろよ?お前は影魔法を使い過ぎる。もし、限界を超えてつかうと・・・呑まれるぞ?」

「わかっているさ。そうそう呑まれはしない。」

「ならいい。」

そう言うと影はその相手の影に潜って消えていく。それを確認すると相手・・・セルムルスは、オーレルが眠る部屋へと向かう。辺りは朝といっても暗くオーレルはベッドの中で幸せそうに眠っている。セルムルスはオーレルの頭を撫でると部屋を後に家から出る。扉を通るとオルトロスとムーファスパイダーが訴えるようにそこに佇んでいた。魔物は何も語らない。しかし、セルムルスには2匹が言いたいことがわかる。

たとえ、姿が違えど。

血が繋がっていなくとも。

彼らは、"家族"なのだから。

2匹はこう語る。

『俺たちにも手伝わせろと。』

それに対してセルムルスは笑う。2匹もおれと同じ気持ちだったことに。

「お前たちは最後の要だ。俺がもしものことがあったら。お前らがオーレルを守ってくれ。」

セルムルスの言うことに佇んでいた2匹は各々、自分が寝ていた場所に戻る。

「任せた。」

寝床に戻った2匹に一言、残して森の出口の方へと彼は走る。己の敵の元へと。








生い茂る木々を抜け、彼が向く方向の光が多くなる。そして、同時に強い気配が漂う。そして、森の出口を超え彼らは対峙する。2人組はフードを取りその姿を出している。

1人は黒い髪を短く立ち上げその目付きは吊り上げっおり、それ以外は何かしら付与がされている鎧を身につけおり、もう1人は男とは逆に魔法士が好むローブをまとっており男と同じ黒い髪伸ばし後ろでまとめている女性だった。

「あぁ?なんだぁ、魔物か?」

「人型の魔物なんて見たことないけど。」

2人組は、セルムルスの姿を見て魔物と思っていた。無理もない彼らは影人族を知らないため異形のセルムルスは人族には異形にしか見えないのだから。

「初めまして、普人族のお二人。」

「おいおい、喋ったぞ!!この魔物!マジ!おもしれーわ!!」

男の方がセルムルスを指差しながら笑う。彼は、それを無視して話を続ける。

「ここに来た、目的を教えてもらおうか?」

「あぁ?魔物ごときに教える必要ねぇだろ?・・・それに・・・てめぇは、ここで死ぬんだからな!!」

突如、虚空から黒を基調とし刀身が赤みがかっている。剣を取りだしセルムルスに斬りつける。セルムルスは、後ろに飛び攻撃を回避した。

「まったく・・・最近の普人族は、話を聞かないのか?」

「魔物に説教されるいわれはねぇな!マヒル!てめぇは手を出すな。こいつは、このトシノリ様の獲物だ!!」

「はいはい。」

トシノリの繰り出す剣撃をセルムルスは器用に避ける。

「チィ!ちょこまかと動くな!!」

トシノリは大きく振り上げセルムルスの頭にめがけて振り下ろす。それを、両手をクロスさせトシノリの握る手を止める。そして、トシノリの肘を掴みながら懐に入り右手で敵のみぞうちを殴る。

「ぐ!?」

唐突の痛みにトシノリは数歩下がる。

「やるじゃねぇか・・・次は・・・」

「残念だが、次は無い。」

「何ぃ?・・・!何だこれ?」

トシノリは自分の首に黒いヒモが巻きついているのに気づいた。しかも、そのヒモはセルムルスの足元に繋がっている。セルムルスは、そのヒモを掴む。

「それじゃあ、さよならだ。」

そう言って、ヒモを手前に思いきっり引っ張る。

ゴギリ。

何かが折れる音が辺りに響きわたる。その数秒後、トシノリの身体は力を無くしその場に倒れこむ。

闘いは終わった。

しかし、彼は、この決着に疑いがあった。

(呆気なさすぎる。これが、勇者なのか?)

永く時を生きたセルムルスは過去に幾度となく英雄と唄われる人物と幾度となく闘ったことがある。彼からみれば、トシノリはそこまで、至っていない。

技術は兵士より少し上程度。あの喋り口調で知能が高いわけでもなく性格が良いわけでもない。

(だとしたら、あの自信はどこから生まれる。)

人というのは、何かしら他人より少しでもう誇れるものがあると思いたい。つまり、他人より誇れるものが無ければ自信は生まれない。

(それに・・・あのもう1人の女の方だ。仲間が殺されたのになぜ、冷静でいられる?)

彼が見る女は仲間が目の前で殺されたのにもかかわらず冷静に立っている。

(まだ、何かあるのか?だとしたら・・・)

思考は、突如生まれた殺意によって中断された。セルムルスは反射的に後ろに飛ぶ。そして、先ほどまでいた場所に土が巻き上げられ砂煙が立つ。その砂煙の中に人影がひとつ。

「やるじゃねーか。流石のオレ様もびっくりしちまったぁ。」

その砂煙の中から現れたのは先ほど殺したトシノリだった。

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