死の荒野
死の荒野。
そこは生物が生きることを許されない世界。
また、神々の庭に続くための唯一の道でもある。
その死の荒野にコートを深くかぶった2人が歩みを進めていた。
「くそ!オレ様がこんなことしなくちゃならないんだ!!」
1人の男性が怒りを隠さずに進む。
「仕方ないでしょ。王様に命令されたんだから。」
その愚痴を宥めるように女性が言う。
「森羅族の残りがいるとされている場所に行って確認して、いたら殺せだろ?わかってるさ!!でもよ!」
「文句言ったて変わらないじゃない?」
女性が言ったことが事実を言い、男は舌打ちをする。
「たっくよー。その森羅族を殺しに行った2人にやらせればいいじゃねーか。」
「ソノハとユキカゼなら今、魔人族の方に行ってるわ。あの2人は私たちより早く戦闘に参加してるから。」
「はっ!!あんな2人よりオレ様の方が100倍強いね!!」
「つい、先月に教育が終了したあんたが言う?」
「当たり前だ。なんせオレ様の異能は最強だからな!」
本気で言っている男に女性は深いため息をつき会話を止めようとするが男の愚痴は止まらない。
「てかよ?お前の異能でどうにか何ねの?確か転移移動能力だろ?」
「出来たら最初にしてるわ。私の異能は一度視覚して記憶した場所へしか転移出来ないの。」
「はー。使えねーじゃあ、何で来てだよ?」
「私は、後衛役。あなたと違って異能特化型じゃないから。」
「あっそうかい。」
女性の答えに興味ないように男はかえす。男は当たりを見渡すとまた舌打ちをする。
「それにしても、何もねぇーところだな。こんなところ歩かせるなんてよ。」
「炎龍の衣に十分な食料もらっているでしょ。」
炎龍の衣。
希少な炎龍から得られる鱗を粉々に潰しそれを塗した布で作られたコートでありこのコート1つで豪邸が一個、買えるほどである。その効果はすさまじく外からの熱を完全に遮断することができる。
「うるせぇよ。言いごたえするんじゃね。」
そんな会話が続いていると荒れ果てた景色の奥に緑色の美しい木々が見えてくる。
「あれか?」
「えぇ。あれが目的地の神々の庭よ。」
「えらく、時間がかかったがまぁ、いい。」
男は口角を吊り上げ笑う。
「楽しませてくれよ?森羅族。」
「ほどほどに」
そして、2人は森に向けて歩みを続ける。
この2人を森の中から見ている黒い人影が1つあった。その人影はただじっと2人を見ると森の奥へと姿を消した。