ある国の行動
神々の庭からさらに遠く西へ西へと進み続けると、ある国が見えてくる。周りが禿げた山に囲まれているこの国の名は、シナプス王国。その王都プロスプで高くそびえる王城の1番豪華な部屋の中で、ある人物が執務に励んでいた。彼がペンをはしらせながら制服を着た人たちの列を丁寧に対処していく。
「少し、農業が遅くなっている。この場所の開拓を急がせろ。」
「かしこまりました。」
命を受けた人が列から抜けまた、新たな人が前に出る。
「申し上げます。フルヘル男爵の帝国との密約の件ですが・・・」
「男爵は処刑して爵位を剥奪。領土を没取し新しい奴を入れろ。処刑の日は後日決める。」
「かっかしこまりました。」
順番に対処していくと駆け足で列を抜いてある男が人物に近づく。
「陛下!」
「スフム。列を抜くな。」
「しかし、これはすぐにでもと思いまして・・・森羅族の件で少し・・・」
その言葉を聞くと目が鋭くなり彼の気配が変わる。
「・・・今日は皆下がれ。必要な書類はまとめて明日提出せよ。」
陛下と呼ばれた人物が命令すると列を成していた人たちは一礼して部屋から退出する。部屋には陛下とスフムだけが残った。
「・・・それで?森羅族の生き残りは見つかったのか?」
陛下は机に手を組むとスフムを見る。
「いえ・・・ですが、行ったと思われる場所は特定出来ました。」
「ほぅ・・・場所は?」
「はっ神々の庭かと思われます。」
「ちっ、面倒な所に逃げたものだ。」
神々の庭。かつて神が作られたとする神秘の森。
しかし、そこに行くには並大抵のことではなかった。
「はい。いかが、いたしましょう?」
陛下は、アゴに手を当てて考える。そして数分、考え込むとある答えを導く。
「仕方ない。勇者に追わせる。」
「よろしいのですか?」
「今、軍を動かすわけにはいかん。・・・使える勇者は?」
「はい。勇者トシノリと勇者マヒルの教育は完了しました。」
「よろしい。その2人に森羅族追撃の任務をあたえる。荒野を越えるための装備を準備せよ。」
命令を聞くとスフムは一礼し部屋から退出する。そして1人になった陛下は机に積み上がった書類に手を出していった。
これが、時代が大きく変わる転換期になるとはまだ、この世の人々は知らない。