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1.ほおづえついて
「ああもう行儀の悪い……そんな不貞腐れないでくださいよ」
「なんだって?」
箸からご飯粒がひょいと転げ落ちたかと思うと、真雪さんはすばやくそれを掬い上げた。
食事中だというのに頬杖をついて、明らかに苛立っている。
夕食用に何か簡単なレシピを、ということで、僕が最近気に入っている玉ニラ玉を提案して教えてみたのだが、どうも味付けが濃くなりすぎたらしい。
「だいたい分量がアバウトすぎるんだよ、塩少々だの、オイスターソースはお好みでだの」
「だから、適当に味見しながら、好きなように作ればいいんですよ。コツはだんだん掴めてくるもんです。誰だって最初はそうなんですから」
と、僕はいった。
「練習もしないで最初からいきなりうまい人なんていないです」
「うーん……」
真雪さんは不服そうだった。
本当にプライドの高い人だなあ……と思う。自分では絶対に認めないだろうけど。