表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/18

NINJA、死亡フラグを立てる(挿絵あり)

 鶏のトリ丸 (オート命名)が土煙を上げて街道を疾走する。瞬く間に迫る敵影。最初は人間に見えたそれは近付くにつれて相違点が目立ってくる。二メートルを越える体躯に、分厚い脂肪と筋肉で鎧われた体、豚のように潰れた鼻……オークと呼ばれるモンスターだ。護衛とおぼしき男たちはすでにこと切れていたらしく、地面に伏していた体が煙のように消えて魔石だけが残った。その横で震えている少女が一人。



 「幼子に刃を向ける下郎共め!その命、闇に返すがいい!」



 疾走する鶏から飛び上がり、その勢いのまま二体いるオークのうち一体を足蹴にする。




 「サイゾー!後ろ、後ろ!」 



 追い付いてきたロベリアさんが馬上で注意を促す。俺の背後から斧を降り下ろさんとしていたオークをトリ丸が啄むと、オークは肉が抉れた痛みに悲鳴を上げた。



 「あ……あ」



 へたり込んで震えている少女は言葉にならない音を漏らす。銀糸の髪に長い耳、細身の体は恐怖で震えているようだ。



 「闇から闇に消える者、影から影に渡る者……モノノケバスターNINJAサイゾー只今推参!」



 口上の前に怯える少女に声を掛ける気遣いは無いのかこのNINJAは。



 「あの……」


 「助けを求めるそなたの心の叫び、確かにこのサイゾー受け取った。さあ、ここは俺に任せて先に行け!」



 俺が死亡フラグを口にすると、少女はフラフラと立ち上がり街道脇の木陰に逃げ込む。俺は体勢を立て直したオークに向き直る。



 「火炎に巻かれて踊れ!地遁十法・火遁のじゅ……」


 「強いニンゲンだブヒィ!」


 「苗床だブヒィ、強いオークを殖やすブヒィ!」



 火遁の術を発動しようとした俺に二体のオークが同時に飛びかかってきた。死亡フラグは死亡フラグでも尻穴の死亡フラグが立ちました。全力でヘシ折りたいと思います。


 ふざけるなっ、オークの苗床に狙われる役とか褐色おっぱいさんの役目だろ!?尻からオークをひりだすなんて死んでも御免だ。



 「ふっ、房中術で俺に挑もうとは……笑止!」



 え?つまり俺って房中術 (性技)スキルあるの?やったね!夜が潤うよ!……いや、ちげーよ。今は尻穴を守るのが先だよ。頼むからそんな内容で挑まれないでくれ。お尻を大事に!


 俺の焦りとは裏腹にオートモード俺は悠然とオークを迎え撃つ。



 「忍法・幻術無限淫蕩!オークよ、枯れ果てるがいい!」



 相手に幻を見せる忍術の煙がオークたちを包む。一体どんな幻覚を見せられているのか、オークはビクンと震えて立ち尽くしたまま二体同時にいきり立った股ぐらから汚ならしい白いものを噴き出した。



 「ブヒィィィィィィィィィ!」


 「そのような魔羅でこの俺に勝てると思ったか。忍法の深淵はこの程度ではないぞ?」



 地を白く染め上げながら腎虚に至り、ガックリと崩れ落ちるオーク。そのまま全てを噴出したオーク二体はこと切れた。白い水溜まりに魔石が浮かぶ。無理、これは拾えない、拾いたくない。



 「これにて一件落着」




 【オークの魔羅を成敗しました】



 テロップ、お前は許さん。オークじゃなくなんでイチモツのほうに表示の比重が置かれてるんだよ!? 目に優しくない戦いを見せつけられた後の心の傷に塩を塗るなんて。





 俺たちは少女を保護すると、現場から離れて少し早いが野営の準備をした。いや、もう現場がイカ臭くてイカ臭くて……とてもじゃないがあんな場所で事情を聞くなんて出来なかったんだよ。


 パチパチとはぜる焚き火を見つめながら、銀髪の少女は木製のカップに注いだお茶を飲み干す。




挿絵(By みてみん)



 「助けてくれてありがとうございました。わたしはユーニスさんじゅうななさいです」



 ペコリと頭を下げる少女。さんじゅうななさい?三十七才?俺が戸惑ったようにロベリアさんとモーガンさんに視線を向けると



 「その子はエルフだろう?エルフは魔族と並んで長命だからな」



 という答えが返ってきた。なるほど、ロリでアラフォーのエルフか。



 「はい、リムケユの街に帰る途中だったんですが……まさかオークが出るなんて……おにーさんたちが通りかからなかったらどうなっていたか」



 ユーニスちゃんがカップを膝に置いて身震いする。



 「リムケユの街なら丁度良いですな。一人護衛する人数が増えてしまいますが私共と一緒に連れていって頂いても構いませんか?」



 タタルさんの言葉に俺は頷いた。三十七才とはいえ、見た目は少女のユーニスちゃんをここに放置する選択肢は無い。



 「勿論です。いいですよね?二人とも」



 俺の問いに首肯する二人。見た目的にはシェーラちゃんの道中の話し相手になりそうだしな。


 そうと決まれば手早く夕食の仕度を……する必要は無く、すぐに食べられる物を道具袋から取り出す。この世界の魔法のポーチと違い俺の道具袋は時間が経過しないので実に使い勝手が良い。



 「わあ、美味しそう」



 さっきの戦闘で怯え気味だったシェーラちゃんがパッと顔を明るくした。


 肉と野菜のマリネを厚めに焼いたグリーンポテトのパンケーキで挟み、スイートチリソースのようなものが掛けられている。デザートにはビッグアップルの蜜煮。全て我がパーティーのオカマ魔術師お手製だ。なんて無駄な女子力だ。



 「あ、美味しい」



 ユーニスちゃんが微かに笑みを浮かべた。随分怖い目にあった彼女だが、飯が食えるならとりあえずは大丈夫だろう。俺も空腹に任せてパンケーキサンドを頬張る。甘くないもちもちしたポテトのパンケーキとスイートチリソースが実に良く合い、マリネの酸味が肉の脂を中和してくれていてとても美味い。



 「いつもながらモーガンの料理は絶品だな」



 ロベリアさんが満足げに口元を緩めて言った。ちなみに俺はロベリアさんが料理しているのを見たことがない。



 「うふふ、将来の夢は素敵なお嫁さんよぉ~」


 「婿の間違……いえ、何でもありません」



 反射的に突っ込みを入れそうになるが、今朝の息子へのダメージを思い出して黙る。モーガンさんは股の間のパーツが無ければ完璧なんだけどなぁ……股間のゾウさんのせいでプラマイゼロだ。まあ、俺はおっぱい原理主義者なので胸のボリュームも重要だけれど。



 「何か失礼なこと考えてなぁい?サイゾーくん?」


 「いえ、まさか。料理もこなせるなんてさすがモーガンさん。素敵なお嫁さんになれますよ」


 「きゃー、嬉しい。ならサイゾーくんのお嫁さんに立候補しちゃおうかしら」


 「丁重にお断りします」



コントのような会話の後、モーガンさんがお決まりのように「ヒドーイ」と泣き真似をする。



 「料理か……私は野戦料理くらいしか出来ないな」



 野戦料理、所謂男の料理的なものか。



 「野戦料理ですか、今度御馳走になりたいですね」



 料理の味はどうでもいいから、褐色おっぱいにフリルのエプロンというギャップのある夢のコスチュームで料理を作ってみて欲しい。裸エプロンだとさらに嬉しいけれどそれを言うと斬られそうだ。



 「味は保証しないぞ?……と、言っても見栄もあるからな。モーガンに少し料理でも習うか」



 そうロベリアさんが苦笑する。見栄と素直に言うところが見掛けによらず可愛らしい。



 「あら、ライバル登場?フフーン?モーガン先生の料理教室を開催しちゃう?」



 茶々を入れるモーガンさんを横目にシェーラちゃんがジト目で俺を軽く睨んできた。



 「モテモテなんですね、サイゾーさんは」



 いや、片方オカマだけどね?



 「だったらいいんだけどなぁ……言うほどモテないよ、俺は」



疑わしそうに見つめてくるが、シトリンのギルドでは珍獣扱いなのは事実だ。



 「その二人はサイゾーさんの奥様なの?」



 不意にユーニスちゃんが爆弾を投下。俺たちは三人同時に飲みかけのお茶を噴いた。



 「え?ふたり?え?片方オカマ……ゲフッ」


 「やーん、そう見える?見えちゃう?困っちゃうなー、もう」



ノリノリで答えるモーガンさん。オカマさん少し黙って。



 「私たちはパーティーメンバーだよ、ユーニス」



 冷静に真実を述べるロベリアさん。そこは少し照れたりしてくれた方が可愛いのに。


 ん?さらりと二人って言ってたが、この世界って一夫多妻なのか?マジか。やったね、ハーレム作れるよ!……オカマと男にばかりモテるから作れないけどさ!世のハーレム男共はすべからく爆散しろ。もしくは代われ。



 「……そう、違うならサイゾーさんの子種貰ってもいい?」



 瞬間、場の空気が凍りついた。今、この子何て言った?



 「サイゾーさん強いからきっと強い子が産まれる……」



 思考停止している俺に代わってモーガンさんが対応してくれる。



 「そっかー、ユーニスちゃんエルフだもんねぇ……でもサイゾーくんはダメよ?」




 モーガンさんの説明によると、モンスターが跋扈するこの世界は元々強さも魅力の一つに数えられるらしいが、その中でもエルフは特にそれが顕著なのだとか。回復系の魔法に特化しているが肉体的にはあまり強くないエルフだからなのかもしれない。


 でも俺はおっぱい原理主義者なのでツルペタエロフはノーセンキュー。



 「ダメ?」



 ユーニスちゃんが上目遣いで問う。可愛いけれどツルペタはちょっと……。俺は子供にするようにわしわしとユーニスちゃんの頭を撫でた。



 「そういうのはもっと(おっぱいが)大きくなったらな?」



 ここはひとまず気のいいお兄さん的ポジションに退避。



 「……わかった。頑張っておおきくなる」


 あっさりと引き下がるユーニスちゃん。俺は内心ほっとして胸を撫で下ろす。



 こうして、ロリでアラフォーのエルフあらためエロフを伴い俺たちはリムケユの街を目指すのだった。



山田風太郎の忍法帖的な淫術をと思ったらただの下ネタと化した。後悔はしている、反省はしない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ