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アルビット、地球を知る。

<キャラクター紹介>

アルビット 性別:男

クラン『セントラ・エッジ』のリーダーで、物語の主人公。髪は金髪で立てている。

左目の下から頬にかけて、引っかかれたようなアザがある。

気さくな性格だが、色々と謎が多い青年。


身長:171cm

体重:61kg

_____ここはクラン『セントラ・エッジ』。

 最近できたばかりの無名のクランに、三日ぶりに依頼者がやってきた。

「やあ、いらっしゃい!ごめんね、いきなり叫んじゃって」

 三日ぶりの依頼者に、アルビットはとても上機嫌だ。

「い、いえ…大丈夫ですけど…。」

 それとは正反対に、依頼主の少女は少し怯えている様子。

「とりあえずここに座って座って!依頼があって来たんでしょ?」

「は、はい、ありがとうございます…。」

「じゃあちょっと待ってて、飲み物でも持って来るから」

 そう言って、アルビットは二階へかけて行った。



(………うう、どうしよう……。注目されるのは苦手なんだけどな………。)

 少女はそう思いながら、あたりをキョロキョロと見回す。だが……。

(あれ…?でも、よく見たら私以外の依頼者はいないみたい……。それに、クランの人もさっきの人と階段に座ってる人の二人だけだし……。)

 安心したのか、少女はほっと胸を撫で下ろす。ふと机を見ると、一枚の紙が広がっていた。

(何だろう、これ……。日別依頼者数…?)

紙に書かれた文字を心の中で読み上げ、一瞬驚く。

(このグラフ…、最後に依頼者が来たの、三日前だ…。しかも一人だけ…。)

 不安の汗が頬をつたう。このクランに依頼して大丈夫なのだろうか…。しばらく少女が悩み込んでいると、どこからか子供の声が聞こえた。

「チョコ」

「ひゃあっ!?」

 ばっと声のした方に顔を向ける。すると十二歳くらいの男の子が、少女のカバンの匂いをくんくん嗅いでいる。

 突然現れたその男の子に少女はしばし呆然とするが、再度「チョコ」の一言で少女はハッとし、手に持っていた紙切れを机に置いてから、カバンのジッパーを開きチョコを取り出した。甘さ控えめ、黒いパッケージが目印の、未開封の板チョコだ。

「おぉ〜〜……。」

 男の子は、少女の持っているチョコに釘付けになりながら、目をキラキラ輝かせている。

「……もしかして、欲しいの?チョコ」

 少女の言葉に一瞬首を傾げながらも、突然我に返ったように男の子はこくこくと頷きはじめた。その一連の行動にふふっと笑いながら、少女はチョコを差し出した。

「はい、どうぞ。」

 ぱぁっと周りが明るくなるくらいの目の輝きをしながら男の子は両手でチョコを受け取り、頭の上にそれを掲げながら小走りで階段へと向かっていく。その途中で、くるりと少女の方へ振り返り、

「あり…がとう。」と小さく呟いた。

 少女が笑顔で手を降ると、男の子は階段を上って行った。

 その後姿を、少女は珍しい物を見る様に眺めていた。

(…なんだか、不思議な男の子だなぁ…)

 背は小さく、寝癖のように所々はねてる黒髪。目をキラキラと輝かせていたものの、どこか悲しげな表情をしていた。そしてなにより男の子の後姿には、普通の人間にはない……動物の尻尾が生えていた。



「やぁ、お待たせ!」

 男の子と入れ違いになるように、アルビットが2階から降りてきた。少女は背筋を伸ばし、姿勢を正した。

「はい飲み物。ごめんね、こんなのしかなくて。」

 二人分のドリンクを少女と自分の前に置く。シュワシュワした黒い液体。コーラだろうか。

「あ、ありがとうございます…。」

 先程の男の子と話してほぐれた緊張が、少しぶり返す。アルビットは右手を軽く振った。

「あぁ、いいよそんなに固くならないで。あそこにいるオッサンだって、顔は怖いけど悪いやつじゃないから。な、ディレス!」

 振り向きながらディレスを呼ぶ。が……

「……zzz」

「…あの野郎、寝てやがる」

 まるでどうでも良さそうなディレスに、アルビットは右頬を引きつらせた。

 その一連のやりとりで、少女はくすっと笑い、安心した。どうやら悪い人達ではないみたいだ。

「お、楽しんでもらえて良かった。それじゃあ早速だけど、依頼の話を聞こうか。」

 アルビットはそう言って、椅子に座る。

「……っと、その前に軽く自己紹介しなきゃな。俺はアルビット。そこで寝てるやつはディレスだ。君は?」

吉野(よしの) 風香(ふうか)です。」

聞きなれない名前に、アルビットは少し突っ込んだ。

「ヨシノフーカ……?珍しい名前だな。どこから来たんだ?」

「えっと…、地球から来ました。」

「地球?もしかして異世界から来たのか?」

 アルビットは、片眉をあげながら尋ねた。

「はい、そうです。この世界から三つ、世界を隔てた所から来ました。」

「三つ隣の異世界……。地球なんて世界、あったかなぁ」

 人差し指を眉間にトントン当てながら、アルビットは考え込む。

「おそらく『エア』のことだろう。機械の発展した、魔法のない世界だ。」

 アルビットの後ろから、ディレスの声が聞こえた。

「お前…、いつの間に起きたんだよ。」

「だが、『エア』からこの世界『ミディリア』に来るのは相当困難な筈だ。一体どうやって来たんだ?」

 今度は、ディレスがフーカに尋ねる。アルビットの「無視か。」の呟きにもお構いなしだ。

「それは…、すみません、話せません…。でも本当に地球から来たんです。信じて貰えないでしょうか…?」

 フーカは、何かを思い出す様に(うつむ)いた。それに若干の疑問を感じながらも、

「いや、信じるよ。依頼者を信じられなきゃこの仕事はやってけないからな。」

 アルビットはそう返し、自分のコーラに口をつけた。

「あ、ありがとうございます!」

「なに、いいってことよ。それじゃ、話を戻して依頼について聞かせてくれ。」

 お互いの自己紹介も済んだ所で、依頼の話へ進む。

「は、はい。えっと、じゃあまず、これを見てもらえますか。」

 フーカは、机に置いていた1枚の紙切れを広げた。その紙切れを、アルビットとディレスは覗き込む。

「これは…地図みたいだな。宝の地図か……?」

「そうです。ほら、ここのドクロマーク。きっとお宝の在り処を示した物に違いありません!」

 さっきまで静かだったフーカが、意気揚々としている。

「確かに何かありそうだな。で、その宝を探し出すのが依頼ってことだな。」

「はい。お願いできますか?」

「それは大丈夫だけど…それにしてもどこの地図だ?ディレス、分かる?」

 ディレスは宝の地図を手に持ち、しばらく見つめる。

「……おそらく『マカ鉱山』だろう。あそこなら確かに、多くの財宝が眠っている。」

「マカ鉱山か。それならここから遠いって訳でもないし、すぐにでも出発できそうだな。よーし…」

 アルビットは準備体操を始めた。

「あ、あの…私もついていってはダメでしょうか…?」

 突然のフーカの言葉に、一瞬驚く二人。だがすぐにディレスは切り返した。

「駄目だ。今から行っては帰りが遅くなる。依頼者を危険な目に合わせるわけにはいかん。」

 時刻は十五時。今から行くにしても、帰ってくるのは夜明けになる。ディレスはそう計算していた。となると、当然危険も伴う。それを考慮しての言葉だったが、フーカも引き下がらなかった。

「でも…このままじっとしていられないんです。足手まといにはなりませんから…!」

フーカは椅子から立って答える。彼女のその瞳からは、何か固い決意でもあるかのように、その真剣さが伝わってきた。

「……ええと、フーカ、でいいか?」

しばしの沈黙を破ったのは、アルビット。

「……はい。」

「これから行くのは危険な所だ。自分より何倍もデカい、凶暴な魔物がうようよいる。命の保証だってできないんだぜ。それでも……一緒に来る覚悟はあるのかい?」

「…う……」

 その言葉に一瞬フーカはたじろぐが、すぐにまた真剣な顔つきに戻り、「あります。」と答えた。それに対しアルビットは笑顔を見せ、

「ははっ。そうか、気に入ったよ。分かった、一緒に行こうぜ。ディレスもいいだろ?それで」

「……勝手にしろ。」

 後ろを向いたディレスは背中でそう答える。

「あ…ありがとうございます!」

 フーカは二人に何度もお辞儀をした。

「まぁ安心しな。俺たちがいる以上、フーカを危険な目に合わせたりはしないさ。じゃあ行こうぜ、宝探しに!」

「はい!」



 依頼『宝探し』。

 かくしてクラン『セントラ・エッジ』の、三日ぶりの依頼が始まる。


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