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りけーじょし!

作者: ミスター

暇つぶしに書いてみました。

今年初の短編です。


ギャグです。

…………4月!…………


「あー…。なんで進級して早々にテストあるかなー…」


「…んー。今年受験だからじゃない?」


「去年もあったよぉー…」


「そーだっけー?」



桜咲く4月。


温暖化によりもはや入学式には桜は散っているが、それでも4月には桜のイメージは堅い。


高校も最後の年となる予定の今年、新学期早々うな垂れている女子高生。


梶原沙月かじわらさつき


くりくりしたタレ目をした、茶色い長髪が印象的な少女。


しかしその可愛さというのもこう机にでろ~んと伸びていては宝の持ち腐れである。



その沙月の嘆きを聞きながら、そーだっけと言い頬に右手の人差し指を当てるこっちの少女は熊澤瑞帆くまざわみずほ


黒髪のポニーテールを、黄色いリボンで結んでいる。


メバチマグロ並みにぱっちりしたつり目がチャームポイント(自称)。


新学期早々テストがあると告げられて、沙月の精神は既にノックアウト。


方や瑞帆はああやっぱりと言った感じで、自分の前に座る沙月を見ている。


「というか、もう3年目なんだから学びなさいよ」


「だってさぁ…」


テストとは言っても、あまり成績には響かない。


今までの勉強覚えているかな?といった確認の意味が強い。


まぁ、テストはテストなのだが。


「うえー…嫌だー…。帰りたい。帰ろう!帰ればまた来れるから」


「私は残る」


「うえー、鬼ー」


「なんでよ…」


「宿題終わってないぃー」


「え」


進級の場合、春休みにも宿題が出る。


提出自体は最初の授業なのでまだ間に合うのだが、問題はテストの内容。


この宿題から出るのである。


「まぁ、頑張りなね」


そうこうしてる間にテストは始まり、そして終わりを迎えた。



翌週、テスト返却が行われた。


「ふふふ…!実はボク国語だけ超勉強したんだ!テスト前のあれは演技よ!」


「ほぉー、で、何点?」


「96!」


「何ぃ!こいつマジだ!理系のくせしてなぜ国語だけ…」


「みんな苦手そうだから!」


「ぬぅ~…」


何だろ…異常に悔しい…。


「さらにさらに~!理科は化学はなんと62点!今回のは難しかったよねー」


「(^_^)」


「あ、お前何点だ!?は?82?なんで?」


「理系だし…」




…………5月!…………


「ぬあぁ~。彼氏欲しいー」


「沙月…」


「ん?」


「あんたにそんな願望があったなんて…!」


ショックの表情を隠せない瑞帆。


「ちょっと!ボクにも恋愛したいって思う時はあるよ!」


「へぇ~。どんな人が好み?」


「ん~…。具体的には無いけどぼんやりしたイメージ図ではね~」


「うんうん」


「リービッヒ冷却管みたいな人…?」


「…ん?…え?」


因みにリービッヒ冷却管とは、ガラスの筒が二重になっていて、外側は水を通し、内側は過熱して気体になった物質が通るようになっている実権器具。


水を直接当てずに気体を冷やすのに使う。


「ボクを冷やしてほしい!」


「冷たくされたいの?ドM?」


「違うよ!またはじゃあ…フェノールフタレイン溶液って言えば分かる?」


「ごめん…全然わかんない…。いや、フェノールフタレインは分かるよ?でもあんたの言ってる意味が分からない」


「ほら…中和滴定でさ」


「だから!」


フェノールフタレイン溶液とは、簡単に言ってしまうと他の液体がどのくらい強い酸性なのかを調べるのに使う薬品である。


「…どういう意味?」


「えーと…。私色に染めたい!」


フェノールフタレイン溶液はアルカリになると色が透明から赤に変わります。


「もうあんた恋愛すんなよ…」



…………6月!…………


学校生活最大のイベントは、なんといってもこれであろう。


「修学旅行!」


「沙月うるさいよ!」


班は当然二人一緒。


「沙月は友達少ないからな、私と一緒じゃなきゃぼっちだもんなー」


「あははは!何言ってんだよー!瑞帆以外友達いないよー」






「なんだよ!何か言えよ!冗談だよ冗談!信じてやんのー!」


「いや…存分に信じられる話だったからさ…」


「え…?」




やってきたのは沖縄。


「おー!なんかあったけー!ここは南国か!?」


「沖縄だ沖縄」


那覇空港に着いてすぐ、沙月が騒ぎ出す。


「いやー、飛行機が飛んだ時は落っこちるかと思ったぜー」


「何言ってんのあんた…?」


「今日はどこ行くの?」


「えっと…。国際通りかな」


「おっしゃー!行こうー!」


「待て!」


周りを何も見ずに点呼すら待たずに歩き出す沙月のリュックを掴んで制止させる瑞帆であった。




国際通りにて。


「おー!シーサー!」


「あ、こっちにはチギムナーもいるよ!」


「チギムナー?シーサーのほうがこう…強い!」


「え…?」


「ボクはコロボックルが好きだなー」


「あれ?シーサーは!?」



公設市場にやってきた。


「おー!スゲー!ヤシガニ!ヤシガニ!」


「…///」


「ん?どうした瑞帆?」


「いや、あんたが生物の名前を言えるなんて…。理系なんだなって…」


「ボクを見くびりすぎだぞ!イリオモテヤマネコとかも知ってる!」


「ヤママヤー!」


「ふふふ…。瑞帆、ヤママヤーってヤマネコのことではないんだぜ!」


「な、なんだって…くっ…。私が沙月に負けるなど…」


「あんた何様よ…」




…………7月!…………


「ふふふ…!ボク、明日から夏休みなの!」


「そうね、私もよ」





…………8月!…………


海にやってきた。


「たまには海もいいわね」


「でしょー!」


シーズンだけあって込み合っている砂浜に適当に隙間を見つけてパラソルを立てた。


天気は快晴。


凄く暑い。


というわけで…。


「泳ぎますかー!」


「そうね!」


ビキニ姿の少女二人は海に駆け出した。


が…。


「あー!あっつい!ちょっ…!砂…!」


「サンダルは?」


「あるよ?」


「履けよ!」


「…パンツを?」


「サンダルを!」



紆余曲折ありながらも海に到着。


「よーし!クラゲ獲るぞー!カツオノエボシかかってこい!」


「ごめん…それは勘弁して…」


カツオノエボシとは海水浴場にたびたび現れる、きわめて強い毒があるクラゲである。


「ああー、勉強しなくていいのかなー。こんな海に浮いてていいのかなー」


浮き輪にかっぽりはまりながらプカプカ浮く沙月が呟いた。


「ああ、そういう考えあるんだ」


「ほら!受験生だし!」


「胸張るところではないよ?張るほど無いくせに」


「ああああんたよりはあるし!」


どんぐりの背比べ。


「で、沙月志望校どこ?」


「ん?沼大化学部化学科」


「え?…変えなさいよ」


「なんでよ…」


「一緒だから」


「…これからもよろしくね!」


「あんたは…無理だよきっと!」


「勉強するから!」


「人の嫌がることはするなって習ったでしょ!」


「え…?え?」


「冗談よ」


海の上でなんだか傷つく沙月だった。




…………9月!…………


文化祭の季節。


「何やるんだっけ?」


「たった今決まったことをなぜ覚えていない?」


「寝てた…」


「ああ、やっぱりね」


せっかく理系のクラスなので理系っぽいことをやろう!ということで。


化学室貸し切って実験を披露することになった。


「あー、じゃあ私液体窒素やろうかな」


「ならボクも!」


決定。



ようは液体窒素とかいうすっげー冷たい液体を使った実験。


バナナを入れて釘を打ち、薔薇を入れて粉々に砕き、ゴムボールを入れて砕き、お菓子を入れて食べる。


そんな実験であり、言ってしまえばすごく簡単。




そんなわけで、文化祭当日。


「ほい、液体窒素!これを廊下にパーっと撒きますとー!あらまビックリー!転がっちゃうんですよねー!あ、素手で触っちゃダメ」


意外とうまくやっている沙月。


「じゃあこれ、はい」


「ほい。じゃあこれからバナナ入れちゃうよ!ああ、入ってくよぉ~」


「あんた何言ってんの?」


瑞帆の仕事は沙月に実験道具を渡すのと、沙月の補助(半ば監視)。


瑞帆が実験やれば全て済むが、それだと沙月の出番がなくなってしまう。


瑞帆が補助なら、瑞帆の仕事がなくなることは無い。


バナナがカチカチに凍ったところで、木片に釘を打ってみる。


「はい!打てました!ほら!」


観客からは拍手が飛ぶ。


沙月はバナナを素手で掴もうと…。


素手…?


「素手はダメだって!危ないから!」


瑞帆が止める。


音頭が低すぎて素手は危ないのである。


ほら、瑞帆の仕事がなくなることはないのだ。


何がともあれ、怪我無く終わったのは瑞帆の力あってこそだろう。





…………10月!…………


さぁやってきました体育祭!


「ボクは綱引きに出るよ!」


「私は大縄跳びなんだけど…昨日の予選で敗北したから仕事ないわ」


大縄と綱引きは前日に予選がある。


大縄は敗北した。


綱引きはギリギリ予選突破。


で、出場競技が大縄しかなかった瑞帆は今日やることがない。


端っこでトランプでもやってようと思っている。


「リレーとか運動部にお任せだよね」


「そりゃあ…うん」


帰宅部二人に出る幕無し。


そんなわけで開会式が終わると同時に校庭の端っこでトランプ三昧。


「あ、じゃあ次は7並べね」


「うん」


トランプの輪はどんどん広がり、最後は8人でやっていた。


途中からウノにシフトチェンジ。


暫くして綱引きのために3人抜けた。


もちろん沙月も抜ける。


それでもトランプは続行。


結果、最後まで競技を見ることなく閉会式。


それでもなぜか順位だけは気になるものである。


結果は…。


2位。


「えー!2位かよ!もっとみんな頑張ろうぜ!」


「たぶんみんなあんたには言われたくないと思うよ。私も人のこと言えないけど…」





…………11月!…………


帰り道。


「受験勉強やってる?」


「やってるよー?」


「沼大…難しいからね」


「ボクの学力だとあとちょっとって感じかなー」


「え?嘘!?え?」


「え?ホントだよ?合格確率50%だってさ」


「え…?あ…」


負けてる…。


無性に悔しい。


「およよー?どうしました瑞帆さん?え?まさかボクに負けてると?おほほほほ!」


「くぅ~…。次!次は倒す!下剋上よ!」


「下剋上ってことはボクの方が上だと認めたってことですね?」


「あ、しまった!」


「やーいやーい下賤の者ー!」


「う、うるさい!」


こっから瑞帆の快進撃が始まるのであった。




…………12月!…………


「よーし!学校終わりー!」


「ふぅ、テストも終わったし快く年末…って行かないのよね今年は」


「ははは…ははははははは!」


「どうした?沙月どうした?」


「歴代天皇すべての誕生日を祝日にしてほしい…」


「それもう平日がほとんど無いわよ…」


さっと勉強道具を片付ける瑞帆に、沙月が声をかける。


「あ、クリスマス暇?」


「暇だけど…?勉強しないの?」


「いいじゃん!クリスマスだけ!ね!」


「…?うんまぁ、いいけどさ」


「よし、瑞帆に彼氏がいないことがわかった!安心して勉強できる!」


「おい」




…………1月!…………


「ねぇ、沙月。初詣行かない?」


「ん?いいよ」


そんなメールをして、現在神社。


込み合っている。


「どうする?これはぐれたらまずいよ?」


「んー?じゃあはぐれたら私のところに集合!」


「いや…携帯使おうよ…」


お賽銭を投げいれてガラガラを鳴らしてパンパン手を叩く。


二礼二拍手一礼など彼女たちには関係ない。


「いいから!なんでもいいから!とにかく合格させて!いいから!」


「合格できますように…」


二人の願いは届くのだろうか?




…………2月!…………


受験が始まった。


第一志望は沼大。


第二志望も二人共通。


滑り止めはそれぞれ違うところを受ける。


「さぁ、ここからは敵同士よ!」


「敵…?んー、まぁ敵っちゃ敵か」


「負けないよ!瑞帆!」


「負けないと言うか…受かろう!」


「おお!」





結果が返ってきました。


瑞帆の自宅にて。


ベッドの上で封筒と向き合う瑞帆。


「スー…ハー…よし!」


深呼吸のあと、封を切る。


「………!」




沙月の家にて。


リビングで一人、机の上に茶封筒を置き見つめる沙月。


「さぁ…行くよ!」


一気に封筒を開いて中を見た。


「………お!」





翌日。


「滑り止めの結果が返ってきたよー」


「あ、私も」


「合格だった!まぁ、滑り止めだしチョロイチョロイ!」


「……ん」


「瑞帆は?」


「…うえええぇぇぇぇぇん!滑り止め落ちた…」


「あ…」



まだ本命は残っています。




…………3月!…………


三月の初め、本命の合格発表。


二人そろってやってきました。


「さぁ…行くよ!沙月」


「…うん」


この時ばかりは沙月も緊張の面持ち。


「じゃあ…せーの!で見よう!」


「…うん!」


「いっせーのっ!」


「待って!」


「え?」


「今、『せーの』じゃなくて『いっせーの』って言ったよね。なんで変えちゃうのよ!」


「そこ重要?」


「重要!」


仕切り直しとなった。


「じゃあ、行くよ!」


「…うん!」


「せーn」


「待って!」


再び止められる。


「何よ沙月。怖いの?」


「せーのの後、小休止入れてから見る?それとも、せーのと同時に振り向く?」


「どっちでもいいわ!」


「決めて!」


「じゃあ、すぐに見よう」


「了解!」


三度目の正直。


「いくよ!せーの!」


番号を探す。


「…あった…!あったよ!私受かってる!」


はしゃぐ瑞帆の横で今だ探す沙月。


「あれ…?無い…」


「え?」


「ば、番号は?」


「1238」


「んー?」


瑞帆も探す。


「あ、あるじゃん!」


「え?あ、ほんとだ!あった!焦ったー!」


とにかくこれで二人一緒に同じ大学に行ける。




やがてやってきた卒業式。


「みんなありがとう!」


「また、会えるよね!」


友達にそれぞれ挨拶を交わす。


「大丈夫!卒業してもみんな一緒だよ!」


「…そうね!」



みんな、ありがとうございました。

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