02 理由
再び真っ暗になった。さっきまで聞こえていた笑い声が嘘のように聞こえない。
「では本題に入りましょうか。なぜ安田様と東様がここに連れてこられたか」
先ほどとは打って変わりシリアスな口調で話す新堂さん。だが童顔な顔つきのせいであまり決まらない。
「なあ陽太。新堂ちゃん、童顔だからあーゆー口調似合わねぇよな?」
どうやら智也も僕と同じことを思っていたらしい。そしていつの間にか智也は新堂さんのことを『新堂ちゃん』と呼んでいた。……まあどうでもいいんだけど。
「ごほん。では説明したいと思います。まずこの『勇者になろう』は試作品なのです。そしてなぜそんな試作品のゲームを渡したのか。単純に試作品をプレーしてくれる人がいなかったのです」
ん? それはおかしいぞ。だって智也のおじさんは……
「それはおかしいぜ、新堂ちゃん」
僕が反論する前に智也が反論した。
「新堂ちゃん。オレのおじさんはよぉ、結構ゲームに関してはそこらのぺーぺーとは違うぜ。新作ができたんならおじさんが勤めている会社の誰かが来るはずだ。そんぐらいあの人は有名人なんだよ」
智也が自信満々といった様子で自分の意見を述べた。どうだと言わんばかりに胸まで反る。
「確かにマスターは有名なお方ですが…………安田様は知っていますよね、マスターの性格を」
悪戯っ子のような大きな瞳で新堂さんは智也を見つめる。
一方智也はというと……
「智也、どうした!?」
めっちゃ顔色が悪かった。先程までは驚きと興奮で頬が紅潮していたのに対し今は恐怖で真っ青であった。
「忘れてたよ、おじさんの性格。そうだ、あの人は狂ってたんだった」
「そうですよ。マスターは狂ってるんです。思い出しました?」
「うん、思い出した。続きをどうぞ」
結局智也のおじさんのことは分からずじまいだった。
「まあそんなこんなでマスターは試作品をお二人に託したのです」
僕の隣では智也がうんうんと頷いている。智也はそんなこんなの部分は理解できたようだ。どうやら僕だけ取り残されてしまったようだ。
「簡単に言うと僕らはなにをすればいいんですか?」
理解していないとばれないように素っ気なく訊く。
「あ、それはですね……」
どうやら気付かれなかったようだ。
「この『勇者になろう』を全クリしてもらうことです!」
「やっぱりか……」
隣で智也が苦い顔をして頷く。どうやら智也は何となくこうなることを予想していたようだ。僕にはさっぱりだが。
「そういうことなので……まずはご自身で体験なさるのが私はいいと思うのですが……どうですか?」
そういうことといわれても全く理解できない。
「嫌だね、オレは。おじさんの作るゲームは難易度超たけぇんだよ。オレ達みたいな高校生が全クリできるもんじゃねぇ」
智也の言うことは正しい。安田さんの作るゲームは神的な内容だ。それにレベルも比例してレベルも神的に難しいのだ。
「忘れてませんか?」
新堂さんが静かな声で僕らを見つめる。
「貴方たちはどうやってこのゲームから出るんですか?」
出る、ということはログアウトができないということだろうか?
「このゲームの管理は私がしています。貴方たちが言うことを聞いてくれない以上私は貴方たちにログアウトをさせるつもりはありません」
新堂さんが試すような目で僕らを見つめる。