【天使】養殖・第三話(13)
惨憺たる【天使長】を目の当たりに、【仙女】たちが高所から気づかわしげに【神女】を見下ろしてる。意識を取り戻した【くしゃみの仙女】も心配そうに彼女のそばに寄り添う。
けど、【神女】は顔色ひとつ変えてへん。
フードプロセッサーの中で踊るミニトマトみたいな【天使長】を後方間近の特等席から昂然と、腕組みまでして眺めてる。むしろ事態の張本人たる【始天使】の方が頬こわばらして口元ふるわし、今にも仮装者どもに制止を命じそうな気配。
「……ってどうかな? いけル?」
て、少女。
「わかったそかりねん!」
て、襟紗鈴。
二人は笑みあい、少女が襟紗鈴の背に軽くふれよった。
ふれられた箇所を中心に襟紗鈴の全身の産毛がさざ波を走らせ、頭髪が発達中の熱低みたいに逆巻き、広がった。
襟紗鈴は駆けた。
駆けて流血地点に飛びこみ、【天使長】以外の動くもんを手当たり次第にびんたした。
された相手はたちまち眉尻さげて崩れ落ちる。
貧血や。
今の襟紗鈴はふれた相手を貧血にする。
誰もがおのれの体内に持ってよる『海』。
すなわち、血。
血の制御。
大いなる『海』の申し子と化してよる襟紗鈴はびんたで骨肉の奥にある潮騒に呼びかけた。
「受けてみよ! わが秘術『血迷いの貧血たちくらみ』!」
テンションか、悪ノリか、それとも【天使長】の嫁の【準奇跡】を部分的にでも喰ろたんか、そんな忍法ものみたいな台詞まで言うてのけよった。(『【天使】養殖・第三話(14)』に続)




