2、花開く世界
いきなり現れた美少女が居るんだが?
学校中でその様な噂があった。
俺は興味無さげにその男子達を見ながら教室に入った。
すると梓が「あれ凄いね」と言ってから俺に近付いて来た。
「確かにな。どんな噂か知らんけど興味無いな」
「君はいつでもクールだよねぇ」
「クールな訳じゃないぞ。...ただ興味が無いんだ。つーか誰だよその美少女って」
「うーん」
そして俺は昨日の事をふと思い出す。
それは嫁と関わったあの時の事を。
嫁は俺を羨望の眼差しみたいな感じで見ていた。
俺はその眼差しを否定してから家に帰り...そして過去を思い出していた。
それが昨日。
やっぱり俺はタイムリープしたっぽい感じだった。
「まあこうなった以上は」
そう呟きながら俺は教科書を机に置く。
すると梓が「実はさ。...その美少女って昨日の新島さんって話だよ」と切り出した。
俺は「は?」と眉を顰める。
梓は「うーん。あくまで噂だけどね」と言いながら苦笑した。
新島...か。
「見に行ってないから分からないけどね」
「そうか」
「...君は興味無いの?」
「無いな。...どうでも良い」
そうしているとその男子達の声が大きくなってきた。
俺と梓は声の聞こえた方を見る。
人だかりが出来ていた。
そしてその人だかりはやがてこの教室に伸びてきた。
「!」
そしてその人だかりをよく確認すると中央に長髪の優しく微笑む女神が居た。
というかコイツ...は。
新島由紀だった。
俺は「...」となってから新島を見る。
立ち上がってから教室を後にしようとした。
「あの!」
そう声がする。
俺は背後を見てから確認すると新島が俺に声をかけていた。
コンタクトレンズにした様だが...小顔の美少女が居た。
間違いなく嫁だった。
前世の嫁。
だけど今回は論外の嫁。
「間違いないです。佐元くんですよね」
「...そうだな。...どうしたんだ。イメチェンか」
「そ、そうです」
「...そうか」
それだけ言ってから俺はトイレに向かう為に歩き出す。
すると「あ、あの」と声がした。
俺は溜息を盛大に吐く。
それから「なんだ」と返事をする。
「その。本当に危なかったんです。お礼をしたくて」
「お礼をされる程じゃない。ありがたいけどな」
「...でもやっぱりお礼がしたいので」
そして彼女はチケットを取り出す。
俺は「?」を浮かべてそのチケットを見る。
それは猫カフェのチケットだった。
そういえば思い出したけど。
コイツ猫が好きだったな。
「猫アレルギーは無いですよね?」
「無いな。...これはなんだ?」
「はい。私のお気に入りの猫カフェのチケットです。なので...一緒に行きませんか」
周りは状況が読み込めてない感じでざわざわする。
こんな中でキャンセルするってのもな。
そう考えながら俺はまた溜息を吐きながら「分かった」と返事をする。
それから俺は「...アンタが行きたいなら付き合う」と言う。
男子達は嫉妬の目をしていた。
「だが新島」
「...はい?」
「こういうのは隠れてした方が良いぞ。...周りが...」
「...!...ですね。分かりました」
それから新島は苦笑する。
そんな姿を見つつ俺は「...」となってから新島を見る。
コイツと関わるのは高校3年生の時だった。
親から虐待を受けて警察案件になる時だ。
つまり時期が早すぎる。
何か時間軸でも狂っているのだろうか。
「...」
「佐元くん?」
「ああ。いや。何でもない」
俺は首を振りながらチケットをポケットに仕舞う。
それから俺は「ありがとうな」と新島に言ってからそのままトイレに行く為に踵を返してから向かった。
なんだこの胸のざわつきは。
☆
放課後になってから俺達は猫カフェに向かう為に2人で表に出る。
梓には詫びを入れてある。
それから俺達はゆっくり歩き始めた。
「とても楽しみです」
「...いつも行っているんだろ?」
「はい。でも学校の人と一緒に行くの初めてです」
「...そうなんだな」
「...はい」
俯く新島。
俺はその顔をチラ見してから歩く。
そして歩いていると目の前に少女が居た。
少女は大人達を不安げに見ている。
なんというか幼い。
「...あれ...迷子ですかね?」
「そうらしいな。幼い感じに見える」
「...」
新島は歩いて行ってからしゃがんで少女と目線を合わせた。
少女に話を聞いている。
俺は「...」となってから同じ様に近付いてから話を聞いた。
結論から言って迷子になっていた。
「交番に行きましょうか」
「そうだな」
「うん!」
少女は、かな、というらしかった。
俺達はかなを真ん中にしてから手を繋いで連れて行く。
というかこれ...。
まるで親子だ。
「ありがとう。お兄さん。お姉さん」
「気にすんな」
「気にしないでね」
それから俺達はまるで親子の様に3人で歩きながら近くの交番に連れて行く。
かなの母親が待っていた様だ。
涙目でおどおどしていたがかなを見て抱きしめていた。
俺達は顔を見合わせてから苦笑し合う。
そうしていると抱きしめられていたかなが俺達に近付いて来た。
「お兄さん。お姉さん。これ」
「...これは?」
「おりがみ!かめ!私がおったの!あげる!」
「かなちゃん...」
警察官とかなの母親から「ありがとうございます」と言われる俺達。
俺達はその光景を見てから最後に膝を曲げてからかなを見る。
「もう迷子になるなよ」と言いながら、だ。
かなは言いつけを守る様に「うん」と言った。
「でもパパとママみたいだった」
「...ま!?」
まさかの言葉だったのか赤くなる新島。
俺はその言葉に少しだけ複雑になりながらかなとお別れした。
それから歩き出す。
新島は「そう見えるのかな?」と呟いていた。