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残照の革命  作者: Nuhs
第8章ー新生討魔省編ー
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怒りー赤の襲来

 霊子核兵器の座標端末を確認していると、警報音が鳴り響く。


ーーー異常霊圧感知、異常霊圧感知、異常…….ーーー


警戒音が鳴り響く中、悠真と直人の背後で、雷鳴学舎跡地の空が不穏に歪む。


 「……これは、何か来る!」


 直人が霊子を感知した瞬間、上空から深紅と漆黒の螺旋が疾風のように落下する。

 地を穿つ激震の中、現れたのは──紅黒の鎧を纏う女性の騎士。


 紅蓮の怒気の霧を纏い、全身に灼熱の亀裂を走らせたその姿は、見る者の本能を震わせる。


「ようやく……“お前たち”の顔を見られたわ」


 「我が名は――《アマルシア》。原初ノ魔徒、“怒り”の化身。」

 

 遥か昔、討魔の英雄に敗れ、永き封印の中で復讐の念を燃やし続けた存在。


「不屈の因子……そして“希望”の徒たち……。なるほど、悪くない面構えね」


 悠真はすぐに抜刀、緊張感を高める。

 だが、アマルシアは悠然と彼を見下ろし、挑発するように笑った。


「戦う気?まだ、貴方達じゃ早いわね。

……でも代わりに、“私の獣たち”が、お前たちの力を見極めてくれるわよ」


 彼女が指を鳴らすと、瓦礫の陰から黒衣に包まれた無数の兵が姿を現す。


 それは、王庭直属の実働部隊――《猟兵りょうへい》。

 生粋の魔徒と、堕ちた継承者たちで編成された精鋭の狂戦士部隊。


「目的は二つ。“霊子核”と、その守り人……白瀬綾、行け!」


「……っ、来るぞ直人!」



 猟兵たちが一斉に襲いかかる。


 「こいつら……一人一人が、つ……強い……!」


 直人が奥歯を噛み締め、空間に陣を展開する。だが、次々と破られていく。


 「綾さん、コレを――!」


 綾は一瞬だけ振り返り、表情を硬くしたまま端末をもう一度受け取る。


「これだけは、絶対に渡さない……先輩が命懸けで守ったものだから!」


 その叫びに、悠真の瞳が力強く燃え上がる。

 《不屈》と《変革》を交錯させ、空間を切り裂いて前線に飛び込む。


 猟兵の一人が、重力を操る魔徒因子を発動し、悠真の動きを封じるが――


「止まるかよ……!」


 一閃。刀が蒼焔を纏い、敵を撃破する。


 しかし、戦局は圧倒的不利。

 猟兵たちは“陣形”を組み、戦術的に交戦する。


 戦場の中心、紅の魔徒アマルシアは、まるで観劇でもしているかのように腕を組み、悠真たちの奮闘を見下ろしていた。


 彼女の周りには霊子装備を備えた、屈強そうな兵士達が立ち並ぶ。


 そして、その一人――銀髪の指揮官級らしき男が跪く。


「アマルシア様……あと少しで霊子核は確保……しばしお待ち下さい……」


 彼の装備――淡い水色の霊子装甲が光を反射する。


 その瞬間、アマルシアの表情が歪んだ。


 「……あら?」


 彼女はゆっくりと首を傾げ、その男に視線を向ける。

 瞳が細まり、深紅の光を帯びる。


 「貴方の“色”、気に入らないわね」


 「……えっ?」


 男が言葉を発する間もなく、アマルシアの掌が軽く振られる。

 空間が赤黒く捻れ、次の瞬間、男の存在は熱量すら残さず霧散した。


 まるで燃え尽きた紙切れのように。


 静寂。


 猟兵たちが凍りついたように息を潜める中、アマルシアは軽やかに肩を竦める。


 「ルイナの色を纏うなんて、反吐が出る。

 あの青白い顔だけは、本当に気に食わないのよ……あの涙色の女……」


 その名が吐かれると同時に、周囲の空間が再び熱を帯び始めた。


 ――《怒り》が揺れる。


 猟兵達が次々と燃え尽きてゆくーー


 悠真は、恐怖とも違う戦慄を覚える。


 この女は本質的に、何も信じていない。誰も信用しない。感情で世界を焼き尽くす“業火”そのものだ。


 だが次の瞬間、アマルシアはふっと肩の力を抜いた。


 「……あぁ、興が削がれたわ。」


 その声には、どこか“強者”の余裕が滲んでいた。


 「少しはマシな火種を見つけたし……せいぜい燃え広がるか見物させてもらうわ。不屈の継承者。」


 そう言い残すと、アマルシアの周囲に業火の螺旋が巻き起こり、空間ごと彼女の姿を呑み込む。


 最後に響いたのは、熱に染まった、女の高笑い。


 「アァハハハハ……! もっと怒って、もっと壊れて、もっと焦がしてよ……!!」


 アマルシアは焦げた空気と”熱”だけを残し消え去った。


 悠真と直人は言葉を失いながら、腰を落とす綾のもとへ駆け寄った。


 アマルシアが消え去った後も、地には深紅の余熱が残っていた。


 空は晴れ渡っているのに、まるで夕焼けのような色が大地に差し込む。


 綾は呆然と、震える手に端末を持ち

地面を見つめていた。


 焼け焦げた跡には、かつて存在していた一人の猟兵の痕跡すら残されていない。


 「……仲間を、あんな……気まぐれで……」


 その震えが恐怖によるものか、怒りによるものか、綾自身にも分からなかった。


 だがその肩に、そっと何かが触れる。


 悠真だった。


 彼は傷つきながらも、綾の目の前に立ち、真っ直ぐに言った。


 「俺は……母さんの残した遺志を奴らには絶対渡しません。」


 綾は静かに目を伏せると、小さく微笑んだ。

 その瞳には、どこか英香に似た、柔らかな光が宿っていた。


 「……あの人に、似てきたわね。本当に」


 彼女はゆっくりと、手にしていた小型端末を悠真に差し出す。


 「霊子核兵器の封印座標と、最終制御キー。……あの人が、命懸けで守ったものよ。任せたわ、“彼女の息子さん”」


 悠真はそれを両手で受け取ると、静かに頷いた。


 「守ります。母の遺したものも……あなたの想いも」


 直人が後方から歩み寄る。

 瓦礫の中から魔徒の残骸を調べ、猟兵の装備と意図された霊子核兵器奪取作戦の痕跡を探していた。


 「急ごう。奴らは“再び来る”。次はきっと、本気で――」


 その言葉に、悠真と綾は互いに頷き合い、すでに封印施設を離れかけていた。


 遠く、上空の雲の向こう――


 異形の“光の柱”がゆらりと立ち上がる。


 それは、世界の“封印”が、また一つ解かれようとしている兆しだった。


 ――こうして、“雷鳴学舎”は守られた。

 だが、アマルシアの襲来は予兆に過ぎなかった。


 彼女は“王”の意志に従い、七原初の封印解放を進める尖兵。

 次なる標的は、まだ誰も知らない――


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