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残照の革命  作者: Nuhs
第6章ー不屈の継承編ー
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咎と継承

夜明け前の薄闇の中、討魔省・東海第三封鎖区画《守護の壁》の定期報告が、突如として消失した。


 無人偵察機の映像に映し出されたのは、廃墟と化した施設跡。重厚な結界も、監視霊子塔も、原形を留めていなかった。


 そこに駐屯していたのは、討魔省でも屈指の戦力を誇る部隊――


 ──第101部隊《黒鋼連隊》。


 魔徒襲撃守護のために編成された10名×15部隊構成の重装守備連隊。全員が元・特級候補であり、A級魔徒をも各自で討伐可能な“戦場の城壁”。


 ――だが、その全員が、たった一人の存在によって葬られていた。


 映像の奥。霧煙る通路の先に、その“存在”はいた。


 白い仮面。目も口もない、ただ滑らかで無機質な仮面。


 赤黒い霊子が身体の周囲を滲み出るように漂い、周囲の結界霊子を食い破るように波打つ。


 記録に残っていた最後の一瞬、部隊長・志波岳斗の霊子障壁が内部から破砕される描写と共に、映像は闇に包まれた。


 その男は次の標的を探すかの如く、ゆらりとその姿を消した。

 

 



 守護の壁、崩壊の一報から2日後ーーー


 討魔高校・地下旧資料室。


 月夜は、悠真たちに極秘の記録映像を見せた。


 映し出されたのは、あの“仮面の男”。


 その剣筋、佇まい、気配……悠真は、否応なく“既視感”に突き動かされる。


 月夜が低く唸った。


 「……剣筋が隆正様に、似てる……」


 「断定はできないけど。霊子構造の一部に、“不屈”の波長と近似したゆらぎが検出されたわ、確証はないけど….」


 月夜は映像を止め、静かに告げる。


 「……だから、私たちで調べるの。極秘に。そして、絶対に他の誰にも知られないように」


 「仮面の男の正体。その背後にいる何者か。そして討魔省が、今もなお隠し続けている真実を――」


 悠真は、短く頷いた。


 「必ず見つけ出してみせる。父さんのこと、母さんのこと、そして……じいちゃん、あんた自身のことも。俺は、何があっても諦めない!」





 同刻、討魔省本庁・上層秘密会議室。


 記録映像と共に提出された報告書を読み終えた男が、窓の外を見下ろす。


 討魔省ー現最高執行長官――有栖院是清(ありすいん•これきよ)。


 「黒鋼連隊……壊滅か。まぁ良い、代わりはまた作れば良い。しかし……まったく、またあの“血”が邪魔をする。….というわけか」


「…..ふむ、気に食わぬな。」


 男は静かに立ち上がり、決定を下した。


 「神崎月夜、日向悠真……《影ノ丘》を掘り返し、討魔省の秩序を乱す存在。これに必要な処置は…….“排除”」


 “グシャ”と持っていた報告書を握り潰すと、少し微笑みながら机の端末に指を滑らせると、命令が送信される。


 ーーーーー《命令通達:暗部・灰犬はいいぬ


 「任務対象:日向悠真、神崎月夜、その小隊。コードネーム《黄昏の子ら》。処理優先度・A」




 闇の中、命令を受けた一人の男が封筒を燃やす。


  玖堂冥(くどう•めい)――特級討魔士であり暗部“灰犬”の頂点。


 右顔に焼け焦げた呪痕、二振りの双刀を背負い、感情を見せぬ男。


 


 ――幼き日、戦火の中で家族を失い、名も知らぬ死体の山の中で泣いていた。


 拾ったのは、有栖院是清だった。


 「生きたければ、“誰よりも”使える者になれ」


 そう言われて連れてこられたのが、《暗部》だった。


 任務に失敗すれば処分、訓練は殺し合い。

 共に剣を交えた少年少女たちは、生き残った冥以外、もういない。


 


 (俺にとって“正義”とは、生き残ることだけだった)


 冥は無言で立ち上がる。


 「またもや日向か……お前の“意志”も断つ。ここで」




 月夜の持つ旧改革派の極秘資料に記されていた謎の地。


 ──《亡者の森》──


 長野山系地方のさらに奥、地図から消された霊域。


 「かつて隆正様が修行に打ち込んだ場所……そして、その背を押した“師”と呼ばれる人物が今もこの地に息づいているらしいの」



 「もし彼が生きているなら……仮面の男の正体も、解るかもしれない」


 悠真たちはその地へと向かう。


 


 そして――


 森の入口、古びた鳥居をくぐった瞬間、世界が歪んだ。


 霧。感覚の混濁。視界の崩壊。霊子波長が千々に乱れ、誰が誰なのかも分からなくなる。


 「術式……これは、侵入者を拒む精神干渉結界……!」


 瀬奈が警戒を叫ぶも、悠真と月夜だけは何かに導かれるように進み続けた。




 やがて、霧の奥から現れたのは、古びた山庵。


 そして、その前に立つひとりの女。


 


 長く流れる黒髪、緋色の衣、紅い瞳。そして、その纏う黒い霊子から魔徒である事がわかる。


 咄嗟に構える悠真と月夜。


 「こんな所に、魔徒?」


 「….悠真君、こいつ超越体よ…..気をつけて!」


 ──イヴリン──かつての王庭の幹部、“心読”と”操作”の能力を操る魔徒。その佇まいから、彼女が圧倒的な強者である事が窺い知れる。


 だが今、その瞳にあるのは、敵意ではない。


 「警戒せずとも良い、ようやく来たのぅ……神崎の娘、そして日向の孫よ」


 「この霧は、妾の術式。外からの者を拒む結界よ。じゃが、己らの霊子波長には……懐かしさを感じたわ」


 顔を見合わせる悠真と月夜。



 彼女は静かに扉を開く。


 「ほれ、上がるがよい。真実を知りに来たのであろう?。其方たちが知らぬ、隆正をそして“日向家”を」


 悠真たちは、霧の奥の庵へと足を踏み入れる。


 


 過去の真実と、未来の革命を繋ぐ答えを求めて――。

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