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残照の革命  作者: Nuhs
第3章ー序列戦編ー
17/49

深淵の序列

———-訓練生アリーナ


悠真の初勝利から二日後。

序列戦の熱は、訓練生たちの間で加速度的に高まっていた。


「次の試合、また日向じゃん! 二連勝中だぞ?」


「まぐれじゃないってことか……。けど、次の相手、確か――」


「うん。氷室蓮。あれは手ごわいぞ……」


ーーーーー


その頃、対戦表を確認していた悠真の元に、直人がやってくる。


「次の相手、氷室か。あいつ、序列じゃ今んとこ一桁。完全に上位だぞ」


「……知ってる。氷の異能使い。強力な冷気で範囲ごと凍らせるタイプだ」


玲央が隣でぼそりと呟いた。


「動きを封じられたら、近接の悠真には分が悪いかもな」


「でも、逆に言えば接近できれば勝機はあるってことだ」


悠真の声は静かだが、確かな自信が滲んでいた。

“序列”は、彼にとってただの数字ではない。

――己の力を測る、試金石でもあった。


ーーーー


その夜、異界――禍憑ノ王庭まがつきのオウテイ・黒の間。


「氷室蓮が、日向悠真と次に当たるらしいな」


「仕込みは済んでいる。例の“痣”が、奴の中で静かに疼いている」


「哀れな男だ。家族を守るために、“自らの中の人間性”を差し出した」


「いいえ、彼は選んだのよ。“生きる”ことを。背負う者のために」


闇の幹部たちは、黒衣の中で静かに笑った。


「紫苑も、そろそろ動き始めるわね……王庭は、“中から崩す”」


ーーーーー


翌日、試合開始直前――第二訓練場。


氷室蓮と悠真が向かい合う。


「……俺は、お前を潰さなきゃいけないんだ。……….理由は聞くな。聞かないでくれ」


氷室の目には、かすかな“迷い”と“苦しみ”があった。

だがその奥には――黒く澱んだ霊子の“揺らぎ”が宿っていた。


(この気配……これは、あの時の半魔徒と同じ――)


悠真の背筋を冷たい感覚が撫でる。


「開始!」


号令と同時に、空間が凍てついた。


「《氷葬領域アイス・バインド》!!」


地面を這うように冷気が這い、観客席にまで凍結の圧が届く。

悠真は《不屈》を高め、正面から突き進む。


氷室が放った氷槍を回避し、間合いを詰める。


しかし氷室は冷気の煙で姿を隠す。


 「…気配を…..感じろ。」


その瞬間悠真の四方から氷の刃が閃く。


 「….ここっ!」


体を捻りながら後方に高く跳躍すると、悠真は空中で赤い霊子を展開、踏み台の様に空を駆ける。


(――届く)


拳が氷室の胴に叩き込まれる――


 「うぐっ…!」


 「終われない、俺が…やらないと…..!」


凍てついた地面を更に氷結させる様に霊子を集めていく。


———-バキッバキッバキン


その冷気は氷室自身をも蝕むほどに高まっていく。


「くっ…….、まずい。」


赤い霊子を身の回りに展開する悠真だが、次第に冷気におされていく。


だがその瞬間、氷室の霊子が黒く変色し“黒い霧”に染まりかけた。


「う……あああああああああっっっ!!」


顔と腕に、黒くひび割れたような痣が浮かび上がる。

霊子の暴走、それも“外部由来の干渉”を思わせる異常な波動。


「霊子異常! 戦闘中止、緊急封鎖!!」


上級教官達がただちに結界術を発動し、氷室を押さえつける。



意識が遠のく中、氷室は小さく口を開いた。


「……すまない……日向……」


「……!?」


「俺……妹が……病……治療……。……与え……..“痣”を……」


「氷室……!」


「…..ほん….と…..うに……..ごめん……」


その言葉を最後に、氷室は完全に気を失った。


* * *


訓練後、控室に戻った悠真は呟いた。


「……ゆるせない……」


瀬奈が言う。


「妹さんがね…….特別な病らしいの。それで……利用されたのね」


玲央も腕を組みながら重く言った。


「卑怯で狡猾な手口」


悠真は静かに拳を握りしめた。


(なら俺は、……誰よりも強く――)


(“救い”を偽らせない。あいつらに、絶望を利用させない)


悠真の眼差しは、戦場よりも深い“人の闇”を見据えていた。

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