序列戦開幕
朝の訓練が終わり、食堂ではざわめきが広がっていた。
「なあ、聞いたか? 今年の三級、序列戦が始まるってよ」
「おいおい、マジかよ……。アイツも参加するんだろ?あの暴走継承者。」
「そりゃ当然だろ。あの斬撃? ヤバすぎんだろ、マジで……」
「けど、制御できてなかったら意味ないし。俺たちにも勝つチャンスはあるぜ?」
生徒たちの視線が自然と集まる中、悠真はパンを齧りながら黙って耳を傾けていた。
(……序列戦、か)
「はいはい、注目だ!」
けたたましい声と共に、食堂に教官の一人が現れた。長身で筋骨隆々の男、堂島剛志だ。
「今週末から、三級訓練生による『序列戦』を正式に開始する。これは訓練校内での順位を決定するための個人戦であり、戦闘成績・異能運用・戦術理解などを評価する重要な訓練だ!なお、上位10名は二級訓練生への昇級とする。」
生徒たちがどよめく中、堂島は悠真の方へわざとらしく視線を投げた。
「もちろん、今年の注目株――二重継承の坊主も参加だ。お前の順位は最下位からスタートだがな!」
「……っ」
食堂に笑いが巻き起こる。
「そりゃそうだよな。制御不能だもんなー!」
「でも……楽しみだな」
そんな中、悠真は立ち上がり、静かに食器を片付け始める。その背に、直人が声をかけた。
「気にすんなって。むしろ、ここから見返してやればいい」
「……ああ。最下位からなら、あとは上がるだけだ」
そう呟く悠真の瞳に、静かな火が灯っていた。
—————-
翌日
討魔高校、西棟一階•訓練生アリーナ
序列戦の第一戦が開始された。
円形のアリーナの観客席には、同級生や教官たちが集まり、初戦の組み合わせに注目が集まっている。
第一戦の相手は、三級訓練生の一人――神山蓮斗。剣術系の異能を持ち、訓練生の中でも安定した実力を持つ男だ。
「悪いけど、俺、あんたの“過大評価”にはちょっとムカついててさ」
神山が肩を回しながら言う。
「伝説の継承者? 二重継承? それってさ、あんたの実力とは別だろ?それに、あの刀。アレから使えないんだろ?」
神山の口元が歪む。
「……そうだな。でも、俺にはそれだけじゃない。 それを証明する為にここに来た、この“序列戦”ってやつで」
悠真が静かに構えを取る。
――開始!
訓練場に響く開始の合図。
神山が先に動いた。体術と剣術を融合した戦闘スタイルで、一瞬で間合いを詰めてくる。
「ッはああああっ!!」
鋭い斬撃。悠真は紙一重でそれをかわしつつ、拳で牽制を入れる。まだ“力”は使わない。
「動きは悪くないな。でも――俺の剣に届くには、ちょっと足りない!」
神山の霊子剣が閃く。
だが――
「……なら、こっちはこれで返す」
瞬間、悠真の背から赤い霊子がふっと立ち上がる。千子村正は具現しない。だが、“不屈”の力が全身に満ち、反応速度と耐久が一段階上がる。
神山の剣が肩を掠めるが、悠真は構わず突き進んだ。
「うおっ……!?」
正面から拳――ではない、肘打ちが叩き込まれる。間合いの読み合いで勝った悠真の勝利だった。
その一撃で神山は地に倒れ、立ち上がれなかった。
—————
「勝者、日向悠真!」
堂島の声と共に、場内がどよめいた。
「うおっ……マジで勝ったぞあいつ!」
「やっぱ“伊達”じゃねぇってことか……!」
仲間たちの声援の中、悠真は肩で息をしながら静かに立ち上がる。
ベンチに戻ると、直人、瀬奈、玲央が待っていた。
「初勝利、おめでとさん。」
「まあ、相手も強かったけど、悠真も冷静だったわね、」
「……ありがとう。けど、まだ一戦目だ。ここからが本番だろ」
その時、ふと視線を感じて観客席を見ると――教官席の端、紫苑が静かに彼を見つめていた。
冷たいが、どこか意味深な眼差し。その隣に座る副官らしき女が何か耳打ちをするが、紫苑は小さく笑みを浮かべただけだった。
――悠真の戦いは、まだ始まったばかりだ。




