表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残照の革命  作者: Nuhs
第2章ー討魔高校編ー
14/49

初任務

 ――静寂。


 


 目を開けた時、視界には白い天井が映っていた。


 鼻腔をくすぐるのは、微かに薬品の匂い。硬めのベッドの感触と、機械音のような微かな電子音。


 


 (……医務室、か……?)


 


 ゆっくりと身を起こそうとしたその時、ガタン、と隣の椅子が音を立てた。


 


 「……! 悠真!? 起きたのか、よかったぁ……!」


 


 顔を覗き込んできたのは、高峯直人だった。


 その後ろから、瀬奈、玲央も顔を見せる。


 


 「しばらく目を覚まさなかったから……心配したわよ」


 「大丈夫、俺は信じてたぞ。」


 


 そう言いながらも、どこか安堵したような表情が三人の顔に浮かんでいた。


 


 「……ごめん。心配かけた」


 


 小さく頭を下げる悠真に、直人は満面の笑みを返す。


 


 「何言ってんだよ! むしろ、マジですげぇもん見せてもらったぜ! ……あの一撃、マジで空間裂けてたからな!? あれ、映像保存されてたら、絶対バズるやつ!」


 


 「バズらせるな。即国家機密よ」


 


 冷静に瀬奈がツッコミを入れ、玲央が肩を竦める。


 


 「にしても、お前……。あんな斬撃、並じゃねぇよ。あれ、訓練用シミュレーターでやっちゃダメなやつだろ」


 


 「……俺にも、わからない。気づいたら、刀を握ってた」


 


 悠真の呟きに、三人は一瞬だけ沈黙したが、すぐに表情を緩めた。


 


 「ま、いいじゃねぇか。強ぇことはいいことだ」


 「……でも、これから先は、自分の力をちゃんと制御しないと。次、壊れるのが施設じゃなくて、自分や貴方の大切な誰かかもしれないわよ」


 


 その言葉に、悠真は黙って頷いた。


 


 ――力の重みを、少しだけ実感した気がした。


 


 * * *


 


 一方その頃、討魔高校・指導教官棟、ブリーフィングルーム。


 月詠奏司は、ログと映像を再生しながら、周囲の上級教官たちへ報告を行っていた。


 


 「以上――これが、『不屈』能力の現保有者ー日向悠真の能力測定結果です。結論から言うと……『測定不能』」


 


 大型スクリーンに映る映像。


 霊子反応値のグラフは天井を突き抜けるような曲線を描き、表示された文字列には――


 


 《ERROR》

 《霊子波形:未知》

 《精神干渉レベル:高位》

 《記録不能:第二種干渉波》

 《実体化傾向:物理次元超干渉》


 


 「この“第二種干渉波”って……まさか、もう一つの……?」


 


 月詠は小さく頷いた。


 


 「はい。おそらく、何らかの“空間干渉”因子が、未覚醒ながら混在しています」


 


 その瞬間、部屋にいた一人の教官が顔をしかめた。


 


 「二重継承自体が前例のないケースだ。それがさらに二つ目の能力の覚醒を伴うなんて……危険すぎる。扱いを討魔省本部に上申すべきだろう」


 議場がざわつくー


 「いずれにせよ、上手くいけば……将来的に彼の力は、“人類戦力”として計算に入れられる可能性が大いにある、という事かね。」

 

 

 「日向 隆正様。……のようにか…………」

 腕を組み眉間に皺を寄せながら、堂島剛志は言う



 紫苑は少し怪訝な表情をして、組んでいた足を組みなおす。


 「……(バカね)」


 もう一人が呟く。


 「あの方の話は、もうよい。終わった事だ、それより……」


 「問題は、その力を我々が御することができるかどうかだ……」


 「……うむ。」


 その言葉に、月詠は目を細めた。


 (……いいや、あの力は我々がどうこう出来るモノではない……下手をすれば全てを破滅に導く可能性すら………)


—————-バンッ


 机を叩き堂島は声を荒げる

 「バカな事を!あの隆正様でさえ完全に制すことができず。一部封印なされたあの能力を、覚醒したてのましてや幼い少年に!制御できる訳ないだろうっ!」


 往年の隆正を知る、堂島は続ける。


 「ましてやもう一つの因子だとっ?そんな不安定な状態で………..!……できる訳が無い!」


 その時、紫苑がポツリと呟く。


 「……もう一つの因子ねぇ…..。」


 中央に座する老齢の教官が口を挟む。

 「もうよいっ!どの道覚醒したのなら、その使い道を考えねばならぬじゃろうて。」


 「日向悠真を第一級監視対象者へと移行する。能力の暴走、及び当局が危険だと判断した場合は……処分する事とする!心してかかれぃ。」


 会議は紛糾したが、監視対象としての設定。その制御をするという事で話は纏まった。


—————翌日


討魔高校 訓練生待機区画


 朝の訓練が終わったばかりの時間。体力回復用の回復ドリンクを片手に、悠真たちは談笑していた。


 「はぁー……明日こそは筋肉痛なく過ごしたい……」

 直人がソファに体を預けて伸びをする。玲央は無言で自前のプロテインを飲んでいた。


 そのとき、室内に設置された壁面モニターに赤い表示が浮かび上がる。


 《注意:監視区域D-32にて、霊子異常反応検知。臨時小隊を現地に派遣中――》


 瀬奈がピクリと眉を動かした。


 「……何か、妙な揺らぎを感じる。数じゃない。質が違う……」


 「ん、何だよ瀬奈。何か見えたのか?」


 「《千鳥の瞳》を使って、少し周囲を観ていたの。……この波形、普通の霊子の乱れじゃないわ」


 その言葉に、悠真も身体を起こした。


 やがてドアが開き、一人の女性が姿を現す。黒のスーツに身を包み、鋭い眼差しを持つ職員だった。


 「三級訓練生・日向悠真、高峯直人、音無瀬奈、黒木玲央の四名。任務だ。――現地での監視任務に同行すること」


 「……いきなり実戦ですか?」

 瀬奈が問うと、職員は頷く。


 「警戒レベルは《A-軽度》。任務内容は、監視区域Dにおける霊子異常の調査および、必要であれば初動対応。上位戦闘員は近接配置中だが、訓練生としての実地経験を積ませるには最適だと判断された」


 「はは、急に実戦とはなぁ。早すぎね?」


 直人が肩をすくめる。玲央は一言「了解」とだけ返し、すでに支度を始めている。


 その姿を、蛇の様な眼差しで紫苑が見つめていた。

 


地下通路 第D警戒区画・入口


 討魔高校から伸びる地下通路の奥、地上への連絡口を抜けると、外郭の《監視区域D》が姿を現す。


 そこは、朽ちかけた倉庫群と廃棄されたビルが点在する、半封鎖区域だった。


 「……こんな場所あったんだな。」

 直人が心配そうに辺りを見回す。


 瀬奈が膝をつき、ゆっくりと手を地面に当てる。


 「《千鳥の瞳》、展開」


 術式光が静かに広がり、空気の粒子を読むように散っていく。


 「……っ、いた」


 瀬奈がすぐに立ち上がる。瞳が真っ直ぐ一点を射抜いていた。


 「この先の倉庫の影。魔徒、2体確認。……でも、それだけじゃない。――妙な“違和感”がある。……何か、違う」


 


廃倉庫前


 四人は倉庫を前にして、警戒を強める。


 「玲央、前頼む。悠真、サポートを。瀬奈は後方感知、敵の動きが変わったらすぐに知らせてくれ」


 直人が冷静に指示を飛ばすと、全員がそれぞれの持ち場に立った。


 その瞬間――


 「ギギャアアアアッ!」


 魔徒が姿を現した。人型とは言い難い、獣のような姿をした個体。刃のような尾を振りかざし、玲央に突進してくる。


 「来いっ!」


 玲央が盾を展開し、霊子の膜を身に纏って真正面から受け止める。鈍い衝撃音。だが、その足は一歩も退かない。


 「右側、もう一体っ! 高速度で接近――!」


 瀬奈の警告と同時に、直人が印を結ぶ。


 「術式《鳳眼・側面演算》!」


 戦術マップが空間に展開され、直人の指示で悠真が動く。


 「……右、後方!」


 悠真が足を踏み出し、《不屈》の霊子がほとばしる。


 炎のように燃える力が身体を駆け巡り、彼は獣型魔徒の頭に拳を叩き込む。衝撃が魔徒の体内で爆ぜ、壁に激突したそれは呻き声を上げて消滅していく。


 「もう一体、左後方から……違う、これ、魔徒じゃないっ!?」


 瀬奈が顔を上げたその先、空気が歪む。


 現れたのは、仮面を被り黒衣を纏った“人型”の存在――人間のようだが、その瞳には虚無が宿っていた。


 「お前ら……討魔省の犬か」


 「……魔徒じゃない。人間だ。だが、霊子反応が異常よ……!」


 

  瀬名が叫んだとき、男の右手が虚空を裂いた。


 「まぁ良い、今回の目的は果たした。貴様らに、我らの“変革”を止められると思うなよ……」


 ――直後、霧のようにその姿が掻き消えた。


 


 「……消えた?」


 「いや、撤退したんだ。それより….変革….って。」


 悠真が霊子を抑えながらつぶやく。


 そして瀬奈が再度、感知を展開して小さく頷いた。


 「霊子反応、消失。……完全に、離脱したわ」


 任務は完了。だが彼らの中に残ったのは、“勝利”ではなく、確かな“不穏”だった。


 


 討魔高校への帰路。


 「……あの仮面の奴、“変革”って言ったよな」

 直人が何気なく漏らしたその言葉に、悠真は心が何故かわずかにざわつくのを感じた。



 



 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ