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残照の革命  作者: Nuhs
第2章ー討魔高校編ー
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訓練と能力の真実

第3訓練区画


 巨大なドーム型の訓練場は、コンクリートと術式鉄で構築された圧迫感のある空間だった。天井には重力調整機構、床面はタイルの様な物が一面に敷き詰められている――無機質な空間だった。


 悠真たちが息を切らしながら到着すると、すでに整列している生徒たちの前に、ひときわ異質な存在が立っていた。


 筋骨隆々の体躯に、刈り込まれた髪。腕には古傷がいくつも走っている。全身から“戦場の気配”をまとった男。


 ――堂島剛志。通称「鉄拳の堂島」。


 「訓練開始だ。貴様ら、俺が誰かは知ってるな?」


 重低音のような声が響く。


 「今日からお前らの基礎訓練を担当する堂島だ。“気に入らねえ奴は鍛えてやる”“気に入った奴はもっと鍛えてやる”。……いいなっ!」


 教官の言葉にざわつく生徒たち。しかし堂島は構わず続ける。


 「まずは身体の耐久を見せてもらう。腕立て・腹筋・スクワット、各千回。終わらん奴は……“素材”として失格だ」


 どよめきが走る。


 「千回!?」「本気かよ……!」


 だが誰一人、拒否の言葉を口にできなかった。威圧感が、そうさせなかった。



 訓練が始まる。


 腕を突き、膝を曲げ、息を切らす――。たちまち崩れていく生徒たちが出始めた。


 直人は肩を震わせ、瀬奈は顔を青くしていた。玲央は静かに続けているが、その額には汗が滲んでいる。


 一方、悠真は黙々と動いていた。


 (山で、毎日爺ちゃんと木を担ぎ、道具を背負い、崖を登った時を。――思い出すな)


 回数を刻むごとに、周囲の視線が彼に集まる。


 堂島が、近づく。


 「……貴様、名前は?」


 「日向悠真です!」


 「ほう……腕も足の筋肉も悪くない。体幹も崩れん。なるほど、“実地で鍛えた身体”ってやつか」


 堂島は満足げに頷く。



 やがて時間が経ち、全体の訓練が終了した。


 「今日、脱落せず残った者は、“最低ライン”は合格だ。……だがこれは始まりに過ぎん。明日は今日の倍やるぞ」


 生徒たちの絶望のうめきが響くなか、堂島は悠真を見て、わずかに口元を吊り上げた。


 「日向。貴様は、この訓練を生き残れるかもしれん。気に入った。……“鍛えがい”がありそうだ。」


そう言うと踵を返し堂島は訓練場を後にした。


 「はぁ、マジハンパねぇ。アイツっ….鬼だろっ!」


 肩で息をしながら直人は不満そうに言った。


 「……….。」


 瀬奈は終始、青い顔をして一言も喋らない。いや、喋れない様だ。


 玲央はもう汗を拭いながら、帰り支度を始めている。


________


 訓練場を後にし、自室への帰路へ向かう途中、またスピーカーから放送が流れる。

 

 《3級学生各位に告ぐ。昼食後、13時より、異能制御訓練を開始する。担当教官は、異能研究学部所属・月詠奏司 教官。異能制御研究区画、第五研究室へ集合せよ。》 


 「あぁぁあ、死ぬー……」

 

 直人は嫌そうに何かブツブツ言っている。


昼食後


討魔高校・異能制御区画 第五研究室


 薄暗い訓練室に、生徒たちの緊張した視線が集まっていた。


 床一面に張り巡らされた何かのケーブル。空中には計測用の霊子浮遊端末が漂い、壁面には歴代継承者の記録データが投影されている。


 だが、そこに立つ教官の姿は――その空気に似つかわしくなかった。


 「……あー……全員いる? 開始時間は……まぁ、過ぎてないからセーフ、ってことで」


 声の主は、猫背で黒髪ボサボサ、目の下には深いクマ。虚ろな目でぼんやりと端末をいじるその男こそ、

 月詠奏司。異能理論の権威にして、討魔省きっての変人教官だった。


 「えっと、初見の子もいるね……あ、君だ。日向悠真くん。噂は聞いてる。“二重継承者”なんだって?」


 不意に名前を呼ばれ、悠真はやや驚いた様子で小さくうなずいた。


 「……はい」


 「うん、いいねぇ。そういう“特殊サンプル”は、大好物だよ」


 うっすらと笑いながら、月詠は指を鳴らした。瞬間、訓練室の空間にモニターが浮かび上がる。


 「今日から数日かけて行うのは、君たちの“異能特性の解析”と“発現プロセスの観察”だ」


 ざわつく生徒たちを手で制し、彼は続けた。


 「継承された力が“誰のもの”かは、必ずしもすべて分かってるわけじゃない。だが――」


 彼が小型端末を操作すると、モニターに偉人の肖像や逸話がいくつも映し出される。


 「“真名しんめい”と“由来ゆらい”。

 この二つを、君たち自身の中で明確に捉えることが、継承能力の真価を引き出す鍵になる」


 音無瀬奈が手を挙げる。


 「先生、それはどういう原理ですか? 名を知ることと、能力の発現にどういう因果関係が?」


 「いい質問。簡単に言うとね――“異能”ってのは、その偉人の魂の“記憶の結晶”なんだ。

 自分の内にあるそれを呼び起こすには、名前(真名)で心を繋ぎ、由来で意味を理解する必要がある」


 「じゃあ、それって……全員が有名な偉人の継承者ってことですか?」


 別の学生が問う。月詠は首を横に振った。


 「いや、中には“歴史に名前を残さなかった者”もいる。けど、力の質自体は有名無名に関係ない。例えばそう、有名だけど大した能力のない人物。名も知らぬ人物だがその能力は極めて優秀な人物。とかね」

 「ただ、“何者の、どんな生き方を継いだか”を理解するのが難しいだけだ」


 彼は天井を仰ぎ、淡々と続ける。


 「まとめるとね、異能は、その人間の“魂の結晶”。真名は鍵、由来は地図。――君たちは今、自分の中にある“誰かの人生”を旅している最中なんだ」


 「まぁ、有名な偉人はその生き様や逸話が多く残ってるから、《真名》と《由来》に辿りつきやすいよね。

 ……その結果、能力の完成度も高くなる。それが“強い”とされる所以だね」


 

 月詠奏司が指を鳴らすと、研究室中央のフロアに浮かぶ魔法陣のような陣形が淡く発光を始めた。


 「では、実験を開始するよ。順番に“仮想異能覚醒フィールド”へ入ってもらう。名前通り仮想空間だけど、負荷は現実に近い。死にはしないけど、痛みは……まぁ、普通にあるからそのつもりで」


 その奥には、まだ誰も知らない真の力と物語が、静かに眠っていた。


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