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第68撃:「二人目の母を失う日」

今回は少し短めです。


またブックマークをしていただきました!有難うございます!

たくさんの方に読んでいただき、ワタクシ…嬉しくて言葉がありません…!

皆様に感謝を!

 倒れ込んだ綾女を前に、一真は絶望に突き落とされたように叫んだ。


「おふくろ!!」


 苦しげに咳き込みながらも、綾女は必死に声を絞り出す。

「一真……強くなりなさい……困ってる人や、つらい思いをしてる人たちを守れるように……そして、自分に負けないように……」


 その言葉を聞いた瞬間、一真の瞳が大きく見開かれる。

 今、叔母が口にした言葉は――かつて父が最後に残した言葉と同じものだったのだ。


 父は、その言葉を告げた直後に息絶えた。

 そして今、父の妹である叔母までもが、同じ言葉を残そうとしている。

 一真の心に、恐怖と予感が入り混じった。


 綾女の顔色は青ざめを通り越し、すでに白に近づいていた。それでも、彼女はなお言葉を紡ぎ続ける。


「一真……あなたは、自分が望んだ道を歩いていいの。でも、今言った通り……人を助けられる、強い男になりなさい……その強さは……あなたと、多くの人を繋いでくれる……」


 そう言うと、綾女は震える手を一真へと伸ばし、その大きな手に自らの手を重ねた。指先は氷のように冷たい。


「あなたの……この大きな手は、きっと……多くを救える手になるわ……素敵な……手……」


 一真はその手を両手で包み込み、嗚咽を堪えながら言葉を絞り出した。

「お袋……俺……俺はどうしたら……怖い……怖いよ……! 一人は……イヤだ……!」


 弱々しくも微笑を浮かべ、綾女は答える。

「ほんとに……しょうがない子ね……甘えん坊なんだから……」


 そして表情を引き締め、震える声で続ける。

「一真……よく聞きなさい。さっき言った……月城姫咲という人はね……仙女なのよ。戦う宿命を背負った仙女」


「せん……にょ……? こんな時になにを……」

 困惑を滲ませる一真。


 だが綾女は遮るように、激しく咳き込みながらも言葉を続けた。

「いいから聞いて……時間が、無いの……」


 震える声に、確かな切迫が宿っていた。


「姫咲はね……強大な存在たちを……時に封じ、時に滅ぼすために力を得て……百年以上もの時を戦い続けてきた人なの……。もし、あなたが姫咲に会う選択をするなら……あなたもその戦いの宿命を背負うことになるかもしれない」


 一真の頭は理解を拒んだ。荒唐無稽だ。だが――叔母が嘘や冗談で、こんな言葉を遺すはずがないことも知っていた。


 綾女は、命の残り火を燃やすようにさらに告げる。

「もう一度言うわね……姫咲に会うのも、別な道を歩むのも、あなたの自由。でも……きっと姫咲に会えば、あなたは大きなものを得られる……あなたなら、出来るはずよ……」


 その声は、かすれながらも確かな願いを宿していた。


 一真は、迫り来る別れを直感する。

 綾女の手を強く握りしめ、涙と共に叫んだ。


「イヤだ……イヤだ……! 嫌だぁぁぁぁぁぁっ!! 置いてかないでくれ! お袋!」


 その叫びに応えるように、綾女は残された方の手を必死に持ち上げ、一真の頬に触れた。震える指が、愛おしげにその顔を撫でる。


「一真……ありがとうね……私の子どもになってくれて……。あなたは一人じゃない……みんな、あなたを見守ってる……強く、そして優しくなってね……愛してるわ……かず、ま……」


 その言葉を最後に、綾女の手は力を失い、一真の頬から滑り落ちた。

 閉じられた瞳は、二度と開かれることはなかった。


「おふくろぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」


 一真の魂を引き裂くような悲嘆の叫びが、病室に響き渡る。

 その日、一真は二人目の母を――永遠に失った。


まさか一真の過去話がここまで長くなるとは…。

皆様、退屈なさらなかったでしょうか?

もしも退屈に感じさせてしまったのなら、申し訳ありあませんでした。

流石に長くなりすぎたので、姫咲との詳しい出会いや、修行などは、また別の機会となると思います。

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