第66撃:「叔母の病と手紙」
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晶が悲しさをこらえて、ようやく口を開いた。
「叔母さんは身体が弱かったって……何か病を患っていらっしゃったんですか……?」
一真は焚き火を見つめ、悲しみを秘めた声で答える。
「ああ。もともと幼い頃から身体が弱かったらしいが、いつの頃からか――間質性肺炎という病気にかかっていたらしい」
その言葉に、紫音が聞き返した。
「間質性肺炎? それってどういう……?」
一真は淡々と説明する。
「肺の中には酸素を血液中に取り込むための『肺胞』という細胞が無数にあるらしいんだ。その肺胞と、その周りの『間質』という部分が炎症を起こして、次第に固くなっていくらしい」
詳しいことまでは理解できなかった三人だが、それが重い病気であることは察した。
柚葉が恐る恐る尋ねる。
「その……間質性肺炎って病気は、治せないんですか?」
一真は少し悲しそうに首を振った。
「ああ。当時の医療技術では……いや、今の技術でも治療は出来ないらしい。病気のはっきりとした原因が分からないそうだ。今なら抗線維化薬という薬で進行を抑えることは出来るらしいが……それでも治すことは出来ない」
紫音は涙をこらえながら声を震わせる。
「そんな……そんなのって……。今ならっていうことは、当時はそのなんとかって薬は?」
一真は悲しそうに笑った。
「叔母さんが他界した数年後に開発されたそうだ」
その答えに、三人は言葉を失った。焚き火の音だけが重苦しい沈黙を埋める。
一真は小さく息を吐き、口を開いた。
「……辛いか? 聞くのが辛いなら、もうこの話は――」
だがその言葉を、晶が遮った。
「一真さん……聞かせてください。さっき柚葉が言ってたように、ボクたちにも……背負わせて」
涙をこらえながらも、真っ直ぐに一真の目を見つめる晶。その強い言葉に、紫音と柚葉も力強く頷いた。
一真は三人の様子を見て、一つ小さく頷いた。
「……お前たち、ありがとうな。続けよう」
そして再び言葉を紡ぐ。
「叔母さんはな、俺に病気のことを隠していた。馬鹿な俺は気づかなかったよ。倒れた叔母さんが病院に運ばれて、そこで初めて知ったんだ。俺は先生に頼んだよ……頼み込んだ。いくら金がかかってもいいから、叔母さんを治してくれってな。……治せないって、はっきり言われちまったがな」
紫音が小さな声で尋ねる。
「叔母さんは……なんて?」
一真は苦笑を浮かべた。
「『お金は大切だ。自分のために使え』って、怒られたよ。そして喧嘩さ。俺は叔母さんに食ってかかった。何で俺の気持ちを分かってくれないんだってな。でも……気持ちを分かってなかったのは、俺の方だった。叔母さんの気持ちをな」
そう言って一真は少し視線を落とし、続ける。
「叔母さんは自分が長くないことを知っていた。だからこそ、残された時間を全部……俺に使ってくれたんだ」
一真は苦しそうに微笑みを浮かべながら語る。
「叔母さんの治療は、ステロイドや免疫抑制剤の投与による対処療法しかなかった。だが、病院に入院してからの病状の進行は早かった。俺は毎日見舞いに行ったよ。叔母さんが心配だったし、何よりも寂しかった。また家族を失うのが……堪らなく怖かったんだ」
三人は何かを言おうとしたが、言葉が出なかった。下手に言葉を口にすれば、一真の心に土足で踏み入るような気がしたからだ。
一真はそんな三人の無言の優しさを感じ取り、わずかに笑みを浮かべた。
「叔母さんは日毎に衰弱していった。それでも、俺が顔を見せると『こんな場所に来ないで、自分のために時間を使いなさい』って言いつつも、嬉しそうに笑ってくれた。でもな……そんな時間も長くは続かなかった」
一真の表情が少し揺れる。
「ある日、見舞いに行った時に、叔母さんから一枚の手紙を渡されたんだ。宛名は――『月城姫咲』。その時、叔母さんは真剣な顔をして、俺に姫咲さんのことを話し始めたんだ」




