第60撃:──家族を失った日、始まりの記憶
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静まり返った空気の中で、一真は苦笑を浮かべながら語り出した。
「……俺が十三の誕生日を迎えた頃だな。普段はみんな忙しくて、家族旅行なんか一度も行ったことがなかった。だから、これを良い機会にってことで、みんなで海外旅行に行こうって話になったんだ。場所は――有名どころのハワイなんかを外して、フィリピンのセブ島になった」
その言葉に、晶がぽつりと呟く。
「……フィリピン……」
小さな声ではあったが、耳を澄ます三人には十分に届いた。
一真はそんな晶に軽く頷き、懐かしそうに続ける。
「セブ島にあるアヤラセンター・セブっていう、大型ショッピングモールだ。とても活気があってな。子どもだった俺は、表面上は『面倒くさい』なんて顔をしてたが……内心は初めての海外旅行にワクワクしてたんだ。冒険者にでもなったような気持ちだったな。家族も童心に帰ったみたいにはしゃいでて……今思えば、あれが最後の笑顔だった」
その声音に、紫音も柚葉も自然と背筋を正す。晶は、まるで一真の心を見逃すまいとするかのように視線を逸らさなかった。
柚葉がためらいがちに問いかける。
「それがどうして……ご家族の不幸に?」
一真の笑みが消え、僅かに目を伏せる。
「問題となったのは……現地の宝飾店だった。俺達がそこで買い物をしていた時、店が武装強盗に襲われたんだ」
「――っ」
紫音が息を呑み、思わず口をつく。
「ぶ、武装強盗!? そんなに治安が悪いのか?」
「いや。治安は悪くなかった。危険レベルはせいぜい1。起きてもスリや置き引き程度で、めったにこんな事件は起きないらしい……ただの運か、タイミングか。その双方が悪かったんだろうな。俺達は、その偶然に巻き込まれた」
一段と重くなる空気。晶は、自分がクラスで孤立し、ただ「偶然」目をつけられたことで苦しんでいた過去を重ね、胸の奥が締めつけられる。
一真はそれを感じ取ったのか、おどけるように言葉を挟む。
「当時の俺はな、宝飾品なんかに興味はなかったから、正直退屈だった。スマホなんてまだ無かったから、暇つぶしに苦労してたのを覚えてる」
苦笑して肩を竦めたあと、声色を低める。
「……事件が起きた瞬間、何が起きたのか分からなかった。ただ、辺りが騒然となって、直後に銃声と悲鳴が響いた。怖くなって、家族の顔を見上げたんだ。そしたらみんな、武術の鍛錬のときよりもずっと険しい表情をしていた」
晶、紫音、柚葉――三人の手は、完全に食事から止まっていた。喉に何かがつかえて言葉も出ない。
そんな様子を見て、一真は申し訳なさそうに笑みを浮かべる。
「……こんな話をしておいて、『食事を楽しめ』ってのは無理があるよな。やはりこの話は――」
その言葉を遮ったのは、晶だった。強くはないが、決して揺らがぬ声音で。
「……聞かせてください。一真さんが辛くなければ……。ボク……一真さんを、もっと知りたい」
紫音と柚葉も固まっていた口を開いた。
「オレも知りたい。一真さんにとっては思い出したくない記憶かもしれねぇけど……それでも」
「私も……教えてください。そして出来ることなら、一真さんが背負っているものを、私達にも少しだけ分けてください」
その言葉に、一真は少し驚いたように目を見開いた。
「……驚いたな。そのような言葉を聞いたのは、これで三度目だ。一度目は叔母さん、二度目は姫咲さん。そして三度目が君たちだ。……まさか異世界で、そんな言葉を言ってもらえるとはな」
しばし目を閉じ、そして静かに笑う。
「なら続けようか。俺が家族を失い、叔母に救われ、師に導かれた――これまでの話を」
温かな灯が、食卓を再び照らし始めていた。
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