第46撃:《王の告白と決断》
ブックマーク、リアクションありがとうございます!
嬉しくて何度も見てしまってます!
バルト国王は、立ち尽くす紫音と柚葉に向かい、重く口を開いた。
「――これで、最初の話に繋がるというわけだ。二柱の神によって召喚された初代勇者は、その加護を得た。その加護を受け継いでいるおかげで、余は完全に奴に支配されずにすんでおる」
紫音が小さく息を呑み、ぽつりと呟く。
「すごいな……二人の神様に、当時の魔王まで力を合わせたなんて……それで、邪神は倒せたのか?……の、ですか?」
最後の語尾を言い直す紫音に、王はわずかに頬を緩めた。しかしすぐに表情を引き締め、低く答える。
「……いや、倒せはしなかったらしい。弱体化させ、封印するのがやっとだったそうだ」
柚葉の顔から血の気が引く。
「封印……ということは……まだ……?」
王は重々しく頷いた。
「うむ。ゼルグノスは――未だ滅んではおらん」
その言葉が空気を冷やす。二人の表情は曇り、その曇天は王の次の言葉でさらに濃くなる。
「……重い話ばかりで済まぬ。だが、知っておくべきことだ」
そう前置きし、王は続けた。
「封印の際、生命の女神エルフェリーナと、当時の魔王ダンダリオンは残された力のすべてを注ぎ込んだ。封印は成功したが……二人は命を落とした。そしてエルフェリーナの消滅と共に、この世界から治癒系の魔法もスキルも消え去ったのだ」
「……治癒の力が、失われた?」紫音が呟く。
「だからオレたちの中にも、治癒系スキルを持つ者がいなかったのか……」
その言葉を引き継ぐように柚葉が言う。
「つまり……この世界で大きな怪我を負ったら……」
王は静かに頷く。
「……その場での回復は、ポーションなど薬品に頼るしかない」
「ポーション……薬はあるのか」紫音がわずかに顔を明るくする。
「なら……まだ……」
しかし、その淡い希望は王の次の一言で打ち砕かれる。
「安堵するのは早い。今の世界では、ポーションは非常に高価な代物だ。好きなだけ使えるわけではない」
紫音と柚葉の顔は再び陰りを帯びた。王は二人を真っ直ぐに見つめ、静かに告げる。
「紫音殿、柚葉殿……無理を承知で言うが、できる限り怪我はするでない」
柚葉がわずかに唇を震わせ、問いかけた。
「なぜ……ここまで私たちに話してくださるのですか?」
王は低く、しかしはっきりと答える。
「言ったであろう――知っておくべきだと。……ここから逃げる前にな」
「なっ!? 待ってくれ王様!」紫音が目を見開く。
「オレたちは逃げるつもりなんか……!」
柚葉もすぐに続く。
「陛下、私たちは皆を見捨てて逃げたりなんて……!」
だが王は、苦しげに首を振った。
「そなたらの気持ちは分かる。しかし……ぐっ!」
突然、王の表情が歪み、膝が揺れる。
「お、王様! どうしたんだ!」「陛下! しっかり!」
「……時間切れのようだ……奴の呪縛が、再び強まってきた……まだ渡すべき情報はあるが……無念だ……」
王は懐から数本の瓶を取り出し、二人の手に押し付けた。
「これを持っていきなさい……ミドルポーションだ。質は悪くない……骨折程度なら癒せる」
「これが…ポーション…? 高級品なんだろ……こんな大事な物を……」紫音が驚く。
柚葉も訝しげに問う。
「なぜ……私たちにここまで?」
王は無理やり笑みを浮かべながら紫音を見て。
「ふふ……これでもこの国の王でな。本当ならハイポーションを渡してやりたいところだが……今の余には、これが精一杯だ」
紫音から視線を移し、柚葉を見つめる。
「なぜ……か。贖罪と……意地、なのだろうな」
自嘲めいた笑みを浮かべ、王は言葉を継いだ。
「紫音殿、柚葉殿……友を助けたい気持ちはよく分かる。だが今は逃げるのだ。我が娘に化けているあの女が油断している隙に……酷だが、そなたらではどうすることもできぬ。悔しいだろうが……この現実を受け入れるのだ」
二人は、血の気が引くほど拳を握りしめ、俯いた。
だが次の瞬間、顔を上げ、互いに頷き合う。
「……分かり…ました。逃げます……っ!」
王は満足げに一つ頷き、脂汗を浮かべながら言う。
「それで良い……現状を受け入れるのも、一つの強さだ。ついて来なさい……脱出口まで案内しよう」
よろめきながら歩き出す王。その背を、紫音と柚葉は後ろ髪を引かれる思いで追った。




