第253撃:精霊王断罪砲
またしても遅くなってしまいました!(`;ω;´)
ごめんなさい……今回の話、難産で……
ここからはお礼を。
ブックマークしてくださり、有難うございます!
これからも頑張りますので、応援よろしくお願いしますね!
——強い。
目の前の女性セレフィーネは、間違いなくヴェイルよりも強い。
神甲天衣を使っていなければ、最初の魔法の時点で危なかった。
セレフィーネは一真がこの世界で戦ってきた誰よりも、圧倒的に強い。
なぜ姫咲があれ程までに、守りの技を徹底的に叩き込んできたのか。
改めてその意味を痛感する。
(姫咲さんに感謝だな)
一真は改めて相手を見る。
油断はできない。
するつもりもない。
だが。
それでもなぜか。
——負ける気がしないのだ。
とは言え、体力には余裕がない。
あまり時間はかけられない。
一気に勝負をかける。
もう一度、修羅天躯と神甲天衣を並行発動。
一真は大量の仙気を練り上げる。
空腹が加速するが、敢えて無視する。
筋肉が膨張して、仙気の色が濃くなっていく。
——瞳の虹彩が……金色に輝く。
「封神拳——修羅……天躯」
————
目の前の男、草薙一真の様子が一変する。
異様な威圧感が押し寄せる。
(な、なんだ……何だこの変化は!
こいつは人間じゃなかったのか!?)
セレフィーネの知る人間は、少なくともこんな変化をしたことはない。
そもそもからして、先程から相手が使っている力。
それが分からない。
セレフィーネの心に、再び違和感が湧き上がる。
何度も何度も、頭をよぎったあの違和感。
この男が召喚されて、すぐに行ったスキル鑑定結果。
『スキル確認不能。未検出』
——違う。
この男は違う。
セレフィーネはバルト王を洗脳してからその力を利用して、
短期間に多くの勇者を召喚してきた。
その中には稀にだが、スキル無しという結果の者もいた。
だからこそ分かる。
この男はそれらの者たちとは、明らかに異質な存在だ。
ずっと心で燻っていた違和感が、戦ってみてはっきりと具現化する。
(駄目だ……駄目だ!)
この男は——放置してはいけない。
セレフィーネは全力で飛行魔法を操り、一真から距離を取る。
そしてそのまま、大地へと降り立った。
自らのオドを呼び水として、大気中の大量のマナを体内に取り込む。
全身に広がる魔力回路が悲鳴を上げ始めた。
——構わない——
取り込んだマナと、残されたオドを混ぜ合わせる。
更に全身が激しく痛む。
——それでも使う——
その魔法は、セレフィーネの切り札。
スピリットコンダクター・オラクルですら、行使できない最強精霊魔法。
聖魔人界エルフェリアでも、使えるものはまさに指折り。
——セレフィーネの全身から、魔力が爆発する。
「草薙一真ぁ!」
「貴様は生かしてはおけない!
貴様を生かしておけば、必ずやグラウザーン様の悲願の妨げとなる!」
セレフィーネは残された力の全てを、その魔法に注ぎ込んだ。
「精霊王召喚!」
「四界を司る精霊よ。
我が声を聞き給え。
風は刃となり、
水は槍となり、
火は怒りとなり、
地は世界を砕く」
四大元素、その最上位精霊の力を呼び起こす。
そして。
「四元の力を代償に——顕現せよ!」
セレフィーネの力ある言葉。
莫大な容量を誇るセレフィーネの体内から、
魔力がほぼ全て奪い去られる。
意識が遠のく。
膝から崩れそうになる。
それでも“ソレ”は——姿を現した。
『ゴゴゴゴゴゴゴッ——』
元素を束ねる精霊の王。
大聖霊から転じた精霊の頂。
セレフィーネはその力を今——
解き放つ。
「精霊王断罪砲(ヴァル=エレメンタル・ジャッジメント)!!」
————
高速で離れ、地面へと降り立ったセレフィーネ。
すぐにその後を追おうとする一真だったが、その瞬間、異変に気がつく。
(……?)
(なんだ?
空気が……おかしい)
相手が何かをしようとしている。
一真も地面に下りると、仙気を練り上げ、圧縮する。
強化された一真の聴覚が相手の詠唱を拾い、
強化された視力が相手の苦悶の表情を捉える。
……勝負を懸けに来た。
一真は神甲天衣と修羅天躯の効果を、全力で高める。
同時にセレフィーネの背後に、圧倒的な存在感を誇る何かが顕現する。
それを見た一真は、咄嗟に静神封界も発動した。
なぜ“内側”の守りであるその技を使ったのか……自分でも分からない。
だがなぜか、それを使うべきだと思ったのだ。
一真の身体から、体力が急速に失われていく。
胃に穴が開きそうな程の空腹感が襲いかかってくる。
それでも一真は、その状態を維持した。
——一瞬、一真の濃蒼の仙気が、金色の輝きを放つ。
しかしそれは、次の瞬間には元の濃蒼の仙気へと戻っている。
一真は仙気を両手に集中させる。
練り上げる。圧縮する。
『——ゴゴゴゴゴゴゴ——』
次の瞬間、セレフィーネが“力”を解き放った。
「精霊王断罪砲(ヴァル=エレメンタル・ジャッジメント)!!」
セレフィーネの力ある言葉と共に、魔力の奔流が一真を呑み込まんと迫る。
『グォン——ゴォォォォォォ!!』
地形すら変わるような強大な一撃。
セレフィーネは焦りから、もはや周りが見えていない。
頭にあるのは、グラウザーンの障害になるであろう一真の排除のみ。
一真の後方には、エルサリオンの城がある。
避けられない。
避ければ、エルサリオンは吹き飛ぶ。
一真は腰を落とし、大地に足で根を張る。
深く息を吸い、緩やかに吐き出す。
「コォォォォォォ……フゥゥゥゥゥ……」
そして。
限界まで溜めた仙気を、セレフィーネの魔法に向けて撃ち放った。
「双掌——仙崩っ!!」
『ヴォン——ギュォォォォォ!!』
魔力の奔流と、仙気の奔流。
双方がぶつかり合い……拮抗する。
『ズガアァァァァァァァァァッ!!』
「オォォォォォォォッ!!」
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
一真とセレフィーネ、双方の声が平野に響く。
僅かな時間拮抗を続けていたが、一真の仙気が僅かに押され始める。
苦しそうなセレフィーネの表情に、笑みが灯る。
しかし次の瞬間、一真の仙気が再び一瞬——金色に輝いた。
「っ!はぁぁぁぁぁぁっ!!」
「なっ!ばかなっ!?」
押されていたはずの仙気が押し返し、一真とセレフィーネの中間で爆発した。
『チュドォォォォォォォォォォン!!!』
「むぅ!」
「きゃあ!」
爆風に煽られ、悲鳴を上げて吹き飛ばされる二人。
互いに直撃は免れたが、爆発の余波だけでも凄まじい威力。
二人は体勢を立て直すことも出来ずに、地面を転がり続ける。
爆風が収まり、爆煙が晴れていく。
爆心地には巨大なクレーターが出来ている。
地形が——変わった。
身動きをとらない二人。
しばしの沈黙。
やがて先に立ち上がったのは……一真だった。
「……ふぅ」
セレフィーネは魔力のほぼ全てを、攻勢魔法へと回した。
結果として、自らを守る防御魔法も効果を弱めた。
対して一真は、三種の強化技を全力で維持した。
その差は、明確にダメージへと現れたのだ。
未だ立ち上がれないセレフィーネへと向けて、ゆっくりと歩んでいく一真。
どうにか立ち上がろうと、もがくセレフィーネ。
一真の体力は、まだかろうじて残されている。
修羅天躯はまだ使える。
容赦はしない。
ここで決着を着ける。
——この相手を、仲間へと会わせるわけにはいかない。
セレフィーネに近づいた一真は、掌を彼女へと向ける。
「くっ……!」
セレフィーネの口から漏れる、苦悶の声。
一真は残された僅かな体力を、仙気へと変える。
掛けるべき言葉はない。
自分は正義の味方じゃない。
“自ら”の守りたいもののために、今いちど修羅となろう。
修羅天躯を発動する。
手のひらに仙気を集中し、セレフィーネに放とうとした——その時。
「!?」
一真の感覚が、ものすごい速度でこちらへと近づく、
何かの気配を捉えた。
僅かに遅れて、セレフィーネもそれに気づく。
「こ、この魔力はっ!?」
次の瞬間。
『ズザァァァ』
砂煙を上げて、“ソレ”は空から降り立った。
ソレは、一真とセレフィーネの間に割って入る。
その男は、一真よりも大きかった。
燃えるような赤い髪と髭。
万物を射殺す様な、鋭い眼光。
身体から溢れる魔力が、炎となって立ち上る。
魔力を感じ取れない一真ですら、その男の放つ圧力に当てられる。
大気が歪む
一真の背中に——冷たい汗が一筋流れ落ちる。
よろめきながら立ち上がったセレフィーネが、男の腕に縋り付いて口を開く。
「グラウザーン……さま……」
その男は——黒炎公グラウザーン。
魔王軍過激派の長であり、魔族歴代最強の男だった。
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