第251撃:エルサリオン奪還
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本来、飛行魔法というものは、
かなりの制御難易度である。
使えるだけでも上等。
その上で速度を出すとなると、
かなりの負担を術者に強いる。
故に飛行魔法を使える者は、魔族やエルフが多い。
そんな中で、セレフィーネの制空技術は目を見張るものがあった。
心が焦りに飲まれそうになっていても、その制御を誤ることはない。
セレフィーネという人物の、実力の高さが窺える。
しかし、そんなセレフィーネでも、
オルディンの工房からエルサリオンまでの距離を、瞬く間にとはいかない。
―嫌な予感がする。
焦燥が胸を焦がす。
(くッ!……この胸騒ぎはなに!?)
何かが大きく動いているような……そんな予感。
早く……速く……疾く!
休み無く、しばらく飛び続けるセレフィーネ。
もうすぐでエルサリオン王城が見えてくる。
——ふと、視界の端に何かが映り込んだ。
普段のセレフィーネなら、無視して先に進んでいただろう。
だが、何故か気になって仕方がない。
(なんだ?)
セレフィーネは逡巡する。
本来なら寄り道などしている場合ではない。
それでも、気になって仕方がない。
セレフィーネは、視界に映り込んだその何かに向けて軌道を修正する。
(……少しだけだ)
徐々に速度を落とし、地面へと下り立つセレフィーネ。
不思議な感覚だ。
それを確認しなければという気持ちと、
見てはいけないという警告が頭で交差する。
それに近づくにつれ、足が重くなっていく。
そして——セレフィーネは“それ”を見た。
「えっ……?」
「……!!!」
——ヴェイル。
いや、正確には、ヴェイルであったもの。
「あ……あ……」
言葉にならない声が、口から零れ落ちる。
セレフィーネの目に映ったものは、
胸から下が跡形も無く消し飛んでいるヴェイルの遺体。
しかもその姿は、
セレフィーネが物心つく頃にわずか数度しか見たことのない、ヴェイルの“本当”の姿。
幼馴染であった“彼女”が、幼い頃に捨て去った本当の姿。
「ヴェ、ヴェイル?」
思わず口から漏れる彼女の名前。
当然返事はない。
ヴェイルの顔には、笑みが浮かんでいた。
微笑みながら、事切れていた。
セレフィーネの心がぐちゃぐちゃになる。
何だこれは?
なぜヴェイルが元の姿に戻っている?
なぜヴェイルの胸から下が無くなっている?
なぜ王城にいるはずのヴェイルが、こんな所にいるのだ?
考えが纏まらない。
ただ一つ分かることがあるとすれば、ヴェイルの死は誰かの手によるということ。
——あのヴェイルが?
こんな無惨な負け方を?
ヴェイルは強い。
幼かった自分が、かつて憧れた存在。
彼女のように、強くなりたいと目指した存在。
それ故に、セレフィーネは強くなれた。
ヴェイルが自らの歪んだ嗜好に身を委ねなければ……
姉と慕っていたかもしれない存在。
ヴェイルは強い。
以前よりもっと強くなっていた。
自分の想像以上に。
それは、ヴェイルの手枷を解いた時の一撃で分かった。
それが……なぜ?
ヴェイルがここで殺されているということは、勇者たちを殺したのも別の者?
時間にすれば、それほど長くはなかっただろう。
セレフィーネが呆けていたのは。
だが、そのほんの僅かな時間が、分水嶺となった。
「!?」
「な、なに!?」
唐突に、セレフィーネに伝わってきた。
——城兵の洗脳が、次々と消え去っている感覚が。
「なに!?一体何が起きているの!?」
セレフィーネは慌てて城へと向かおうとする。
しかし、その足は一瞬止まった。
後方を振り返り、かつて袂を分かった幼馴染の遺体を見る。
悲しみは無い。
……無いはずだ。
子供の頃に、すでに割り切っているのだ。
それでもセレフィーネは、最後に幼き頃の憧れに別れを告げた。
「……さよなら……ヴェイル」
その言葉を最後に、セレフィーネは再び空へと飛び立った。
二度とヴェイルへ振り返ることは無く。
◆ ◇ ◆
一真は王に頭を垂れながら、心のなかで想いを馳せる。
オラクルとリュミナ。
その二人に。
魂律共鳴核は起動していた。
二人の内のどちらかが起動したのだろう。
(おそらくはリュミナだろうな)
オラクルはリュミナに共鳴核を預けたと言っていた。
共鳴核を使う余裕は無かっただろう。
王に共鳴核を使い、オラクルを助けるために精霊魔法まで使った。
(頑張ったんだな、リュミナ)
才能がないと言っていた少女が。
落ちこぼれだと言われ続けた少女が。
姉を助けるために、勇気を振り絞った。
一真はリュミナが精霊魔法を使えたことよりも、
その勇気を褒めてやりたかった。
オラクルとリュミナは、その絆によって王の解放を成し遂げたのだ。
それともう二つ。
一つはアーカイヴ=ノア。
ノアは魂律共鳴核の機能弱体化を告げていたが、
それでも王を解放できた。
ここが駄目だったのなら、そもそも話にならなかった。
感謝しか無い。
もう一つは。
(晶……ありがとうな)
晶がいてくれたからこそ、二人は助かったのだ。
晶は力を使えば、男としての自分を失っていく。
それでも晶は、迷うこと無く力を使ったのだ。
帰らずの森で目覚めた晶の瞳は、壊れてしまいそうなほど揺れていた。
当然だろう。
一真でも内心驚くほどの変化を、僅かな時間で果たしてしまったのだ。
だが晶は、恐怖を必死に我慢した。
どれほどの思いだったのだろう。
女の子のような外見で苛められてきた子が、自ら男を捨てるというのは。
晶の気持ちを思うと、一真の胸に痛みが走った。
一真が思考に沈んでいると、次第にバルト王が冷静さを取り戻していく。
どうやら会話ができそうだ。
「王よ、これまで何かあったのか。
今、どの様な状況なのかの説明をしても?」
一真の言葉を聞き、頷きで返すバルト王。
「うむ。すまぬが頼めるだろうか?」
そう言うとバルト王は、一真に椅子に腰掛けるよう勧める。
一瞬断ろうか迷う一真だが、このようなことで時間を浪費は出来ない。
王の言葉に素直に従い、椅子に腰掛け説明を始める。
手早く要点だけを伝える一真。
それほど長い時間ではなかったが、王の顔色は二転三転していた。
やがて簡易的な説明を終えた一真は、王へと言葉を飛ばす。
「以上が事のあらましです」
王はひとつ大きな息を吐き、ようやくと言った様子で口を開く。
「……なんということだ。
ゼルグノスの復活……。
エルフェリーナ様の魂は、既にこの世界に……」
王の驚きはよく分かる。
だが、落ち着くのを待つ猶予はないだろう。
「王よ、魔力を持たない私では、共鳴核を発動出来ません。
ですが、王ならば可能なのでは?」
一真の言葉に、王は無理やり驚きを振り払い答える。
「うむ、余もエルフェリア人だ。
魔力を持っている」
王の返答を聞き、一真は頷きで返す。
そして王もまた、頷きで答えたのだった。
それからの行動は早かった。
混乱を避けるために一真は隠れ、そのまま城内を確認する。
一真が隠れたのを確認したバルト王は、家臣を謁見の間へと集めて共鳴核を使用した。
共鳴核の光の帯が、高速で回転する。
するとどうだろうか。
どこか濁っていた家臣達の瞳が、次々と輝きを取り戻していくではないか。
王のように秘薬まで使われていなかった家臣たちは、問題なく洗脳から解放されたのだ。
「あ……れ?
俺……今まで何を?」
「私、今までなんてことを考えてたの……」
——それは偶然か。
あるいは必然だったのか。
城内の最後の一人の洗脳が解除された瞬間、共鳴核は輝きを失って、その働きを終えた。
その様子を隠れ見ていた一真は、またしてもノアが微笑んだような気がした。
ここに、エルサリオン奪還が完了したのだ。
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