第250撃:王の目覚め
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一真はそのままエルサリオン王城へとたどり着き、
天駆空歩でファレナ姫の部屋へと戻る。
城兵が来てる可能性も危惧していたが、どうやらその様子はない。
「さて、魂律共鳴核を探さないとな」
そう独りごちると、部屋の中を探し始める。
現状、王の洗脳を解ける可能性のある、唯一のアイテムだ。
出来ることなら回収しておきたい。
「部屋の主がいない時に、女性の部屋を探るというのは気が引けるが」
そう愚痴りつつも、捜索を続ける一真。
——しばらくして。
「……ないか」
見当たらない。
一真の心に、嫌な予感がよぎる。
ヴェイルに発見され、破壊された可能性。
もしそうならば、現状での洗脳解除方法は、セレフィーネの討伐しかなくなる。
今はセレフィーネは何処かに出ているらしいが、何時戻ってくるかは分からない。
ヴェイルとの戦いでかなり体力を消耗した。
神甲天衣の常時発動に加え、修羅天躯も使用した。
出来ることなら、今戦うのは避けたい。
共鳴核が破壊されていないなら、今回見つけておきたい。
残りは王の私室のみ。
一真は気配を探る。
ヴェイルと戦う前に感じた、王のものであろう虚ろな気配を。
そこで一真は違和感を覚える。
気配が——揺れている。
それは、感情の動きから来る気配の揺れ。
「!?」
明らかにヴェイルと戦う前の気配とは違う。
セレフィーネが帰ってきて、何かをやった?
この状態は特別なものではなく、洗脳中にも起こることなのか?
それとも王の洗脳が——解けかかっている?
分からない。
最悪なのは、セレフィーネが帰ってきた場合だろう。
相手の強さは未知数。
現状では、静神封界で洗脳を防げる保証もない。
一真は気配を探るが、王の気配を始めとした、城の者たちの気配しか感じられない。
セレフィーネがヴェイルのように……いや、それ以上に気配を消すのが上手ければ、
自分にも感じ取れない可能性は大いにある。
一真は瞳を閉じ、僅かに悩む。
結果、一真が選んだ選択は。
「ここで退くわけにはいかんな」
王の様子を見に行く。
一真は気配の元、王の私室へと足を運ぶ。
部屋の中からは、王の気配以外は感じない。
それでも油断はせずに、一真はゆっくりと扉を開いた。
——いた。
王は椅子に座り、うな垂れている。
一真は仙気を練り、いつでも戦闘に移れるように警戒する。
部屋の中へと入り、室内を見渡す。
……誰もいない。
気配も——感じられない。
「……ふぅ」
一真はひとまず肩から力を抜くと、
改めて王へと向き直る。
王に近づこうとした、その時。
『カツン』
一真の足先に何かが当たり、転がっていった。
慌ててそれを拾い上げる一真。
それは。
「……魂律共鳴核」
あった。
無事に存在していた。
なぜ無事と分かるのか?
共鳴核の内部の光の輪が、高速で回転しているのだ。
よくは分からないが、何やら光の帯に、
文字のようなものも浮かんでいるように見える。
「起動……している……」
そう。共鳴核は起動していた。
誰が起動させたのか?
ヴェイル?
まさか。
ならばオラクル?
それともリュミナ?
……分からない。
分からないが、共鳴核は無事にそこにあった。
だとすれば、先程の王の気配の“揺らぎ”の正体は——
「……う……むぅ」
唐突に、王の口から漏れるうめき声。
一真は弾かれたように、王へと向き直る。
「!?」
最初、王の瞳はどこかボヤけていたが、次第に焦点が定まっていく。
「ここ、は?……余は一体?」
王の口から漏れ出した声には、確かな理性の色が滲んでいた。
一真がゆっくりと王へと声を掛ける。
「バルト王よ……私が誰だか、分かりますか?」
一真の声により一気に意識が覚醒したのか、王は弾かれたように一真を見る。
「!!」
「……あ……そなたは……余が追放したあの時の……」
一真は微笑みを浮かべ、王に礼を告げる。
「王よ。その節は助かりました。
貴方の咄嗟の判断により、我々の道は閉ざされずにすんだ。
感謝を」
そう言うと一真は片膝を床へとつき、王へと頭を下げる。
その姿を見て、バルト王は理解した。
「おお……おおっ!
オラクルは無事、紫音殿と柚葉殿をそなたの元へと導いてくれたのだな。
アルサリウスよ……エルフェリーナよ……感謝します」
その瞬間、バルト王の瞳から涙が一筋零れ落ちた。
◆ ◇ ◆
セレフィーネは、ガーラの部下から聞いた、
オルディンの工房へとたどり着いていた。
この場所に、憎きガーラの仇がいるかも知れない。
一瞬目の前が赤く染まりそうになるが、呼吸を整え気持ちを落ち着ける。
「はぁ、はぁ……ふぅ。
ここに、天城紫音と千歳柚葉の二人がっ!」
再び猛りそうになる気持ちを抑え、扉へと手を掛ける……が。
建物内から、誰の気配も感じられない。
セレフィーネは扉を破壊し、内部へと入り込む。
——誰もいない。
奥の部屋まで行って確かめるが、やはりいない。
逃げられた。
次こそセレフィーネの視界が真っ赤に染まる。
咄嗟に魔法を放ち、建物を消し飛ばしてしまいそうになる。
「くそっ!おのれ!」
しかしその時。
セレフィーネの中に、嫌な感覚が走る。
「なっ!?」
——バルト王の洗脳が、感じ取れなくなった。
洗脳をかけた本人であるセレフィーネには、
洗脳した相手の状態をある程度把握することが出来る。
特にバルト王には、自らの血を原料とした秘薬も飲ませてある。
遠く離れているこの場所でも、王の洗脳状態は強く把握出来ていた。
その王の状態把握が、唐突に出来なくなったのだ。
考えられる状態は、洗脳解除か王の死。
どちらか分からない。
どちらの可能性もある。
セレフィーネは焦る気持ちを必死に抑え、自らの洗脳下にある者たちを探る。
……城兵は洗脳下にある。
これは問題ない。
しかし、次の対象を確認しようとした時。
「!?」
——召喚勇者の反応を感じ取れない。
残った勇者たちには、ヴェイルの監視を命じていた。
その勇者たちの洗脳反応が伝わってこない。
……ヴェイルに……殺された?
だとしたら、バルト王も殺された可能性がある。
ヴェイルならやりかねない。
頭に登り続けていた血が、下がっていくような気がする。
背筋がどんどんと冷えていく。
自分は何をした?
怒りに捕らわれ、憎しみに目を曇らせて——ヴェイルを解き放った。
あまつさえそのヴェイルに王の傍を任せ、勝てぬと分かっていながら、
勇者たちにヴェイルを監視させた。
なんということか。
自分はやってはならない事をやってしまったのだ。
——いや、まだ他の可能性もある。
草薙一真。
あの得体のしれない男。
自らが警戒していたあの者が、何かをしたという可能性が頭を過る。
どちらにしても、バルト王は自らの手を離れた。
グラウザーンからの、重要な任務を台無しにしたのだ。
「わ、私は……くっ!」
セレフィーネは建物を出ると、飛行魔法で慌てて城へと戻り始める。
今ならまだ間に合うかもしれない。
王が生きているのなら、もう一度洗脳をかけ直す。
このままだと、グラウザーンの目的を阻害することになってしまう。
……それだけは駄目だ!
それだけは許容できない!
(もし、もしそんな事になれば……私は自分を許せない!)
セレフィーネは、必死に空を駆ける。
愛する者たちの名前を呼びながら。
「グラウザーン様……ガーラ……っ!」
セレフィーネの飛行速度は、その呟きを空の彼方へ置き去りにした。
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