第247撃:虚実の閃撃
ついにバトル開始です!
楽しんでいただけたら、ワタクシ嬉しくて鳥ダンスです!
ホゥホゥ♪
ヴェイルは嬉しそうに言葉を発する。
それはいっそ、純粋とすら言えるような無邪気な残忍さを含んでいた。
「そうかい!私と遊んでくれるんだね!
ならやろう!今すぐに!さあっ!」
しかし一真は、笑みを潜めてヴェイルへと問いかける。
「その前に一つ聞かせろ。
この部屋の血は……誰のものだ?」
本当なら聞く必要のないこと。
大方の想像はつく。
それでも一真は、一縷の望みに懸けた。
その問いを聞いたヴェイルは、今思い出したかのように間の抜けた声を上げる。
「えっ……?
ああ、それかい?
悪かったね。掃除が行き届いてなくて」
そして“楽しい”思いでを思い出すかのように、答えを返した。
「少し退屈だったんでね。
ワタシの遊び相手になってもらったモノたちがいるんだ。
すぐに壊れちゃったけどね」
——一真の想像は覆らなかった。
この血は晶たちの同級生のもの……
生き残っていた召喚勇者のものだ。
「……そうか」
一真はそれだけ呟くと、少しの時間だけ黙祷をおこなう。
その子たちの名前すら知らない。
召喚された初日に、ほんの僅かに顔を見ただけ。
覚えてすらいない。
晶を苛めていたということにも、思うところはある。
それでも——それでもせめて、この異世界の地において、
たった一人くらい祈りを捧げても許されるだろう。
ヴェイルはそんな一真を不思議そうに見つめている。
一真の行動の意味が分からないといった様子で、言葉をかけてくる。
「……君、一体何やってるんだい?」
一真は目を開けると、一言短く言葉を返す。
「気にするな。
貴様には理解できないことだ」
一真は気持ちを切り替えた。
再び戦闘モードへ。
獰猛な笑みを浮かべ直し、ヴェイルへと言葉を叩き付ける。
「さて、言った通り相手をしてやる。
——ただし」
先程のやり取りなど忘れたかのように、ヴェイルは楽しそうに聞き返す。
「ただし?
焦らすのは止めてほしいな。
セレフィーネちゃんが戻って来る前に、終わらせておきたいんだけど?」
セレフィーネはどこかに出ている。
それが分かっただけでも、一つ収穫だ。
そんな考えをおくびにも出さず、一真は続ける。
「ただし場所は変えさせてもらう。
こんな場所ではお前も窮屈だろう?」
こんなところで戦えば、一体何人が犠牲になるかわからない。
バルト王の身の安全も保証されないだろう。
承諾しなければ、無理矢理にでも外へと連れ出す。
一真がそう考えていると、ヴェイルは意外なほどあっさりと承諾した。
「ああ、そんなこと。
ワタシは別に、それでかまわないよ。
それじゃあ、外へ行こうか」
そう言うやいなや、ヴェイルは窓を開け放ち、外へと飛び降りる。
そのまま飛行魔法を発動して、
エルサリオン王国から僅かに離れた場所へと降り立った。
一真は一瞬部屋を見渡すが、共鳴核は見当たらない。
(……やむを得ん。
ヤツとの戦いの後に、戻って調べるか)
一真は開け放たれた窓に向き直ると、“空”へと向けて一歩踏み出した。
空中——足元には仙気で作り出した足場。
封神拳における空中歩行技、『天駆空歩』である。
そのまま一真は空を駆け、ヴェイルの前で大地に降りる。
ヴェイルは擬態をやめていた。
目の前の“男”を見て、僅かに眉を動かす一真。
そんな一真を見て、ヴェイルは待ちきれないと言った様子で声を弾ませる。
「さあ!さあっ!ワタシを楽しませてくれるんだろ?
ふふっ……いい声で哭いてね?」
次の瞬間、一真とヴェイルは同時に大地を蹴る。
凄まじい速度。
瞬時に肉薄して、拳を叩きつけ合う。
『ズガァァァァン!!!』
ぶつかった拳が轟音を立てて、蒼い仙気と紫黒の魔力が火花を放つ。
——互角。
ヴェイルは拳に、かなりの魔力を込めていた。
強化されたその拳は、
並大抵のものなら跡形もなく吹き飛ばせる威力が秘められている。
しかし一真は吹き飛ぶどころか、拳に傷一つ無い。
ゾクゾク。
ヴェイルは背中に、電撃が走ったかのような感覚を覚える。
(これで平気な顔をするのかっ!
いい、いい!いいぞ!)
歓びに顔を歪ませながら、拳と蹴りを連続で繰り出すヴェイル。
その全てに甚大な魔力が込められており、一撃一撃が必殺に値する威力。
『ズドン!』
『バキィ!』
『ガキィィィン!』
それらはもはや、生身の人間が立てて良い音ではない。
しばらく打ち合いを続けていた二人だが、一真が右手に仙気を集中、圧縮する。
可視化された蒼色の仙気が、唸りをあげる。
『ヴォン』
しかしヴェイルは、当然それを見逃さない。
(くるか!
だけど甘いね!!)
ヴェイルは強化魔法を発動する。
詠唱すら無い、無言の魔法発動。
その強化率は、通常の魔力による身体強化の比ではない。
(少し早いけど、まあいいや。
強いは強いけど、これじゃあ——セレフィーネを“殺す”役には立たない)
もったいない気はするが、もう壊してしまおう。
一真の一撃に合わせて、カウンターで壊す。
ヴェイルが内心歓びに震えている中、一真が仙気を込めた拳を突き出した。
ニヤリと笑みを浮かべるヴェイル。
この拳は受ければ危険だが、来ることがわかっていれば避けるは容易い。
あっけない幕切れ。
(せめて最後は、ワタシの歓びの糧となって死ねぇ!)
ヴェイルは一真の拳を避けて、魔力で固めた拳で、
その顔を粉々に吹き飛ばそうとした。
——しかし。
『バグンッ!ゴシャッ!!』
(!?)
「ぐはぁ!!」
激しい痛みと同時に吹き飛ばされたのは、ヴェイルの方だった。
『ズドン!
ズザザザザザザザ——ゴロゴロゴロ』
地面に叩きつけられて、そのまま滑り、転がるヴェイル。
(何だ!?
左脇が痛む!?)
慌てて一真を見るヴェイル。
一真は右脚を上げている。
その姿を見て、何が起きたのかを瞬時に把握するヴェイル。
ヴェイルが左の拳でカウンターを打とうとした瞬間、
一真は気配を殺した右脚を、ヴェイルの左脇腹に叩き込んだのだ。
相手の脚に気配はなく、自らの左腕が死角を作っていた。
故に気づけなかったのだ。
一真は仙気を脚に込めながら、その上で気配を断っていた。
しかもヴェイルには、一真の仙気がよくわからない。
一真が魔力を感じ取れないように、
ヴェイルもまた、仙気を上手く捉えることが出来ないのだ。
わざと拳の仙気を可視化させたのはフェイク。
虚と実だ。
「……っ!?ゴハァ!」
ボトボトボト。
ヴェイルの口から大量の血がこぼれ出し、大地に染み込んでいく。
一真が放った蹴りは、ただの蹴りではない。
『封神拳・裂空脚』
インパクトと同時に相手に仙気を叩き付ける、
外部破壊と吹き飛ばしを狙った技。
しかしその蹴りに込められていた仙気は甚大。
破壊の力は外部に留まらず、ヴェイルの内部まで及んでいた。
一真は油断しない。
すぐさま次の行動へと移る。
素早くヴェイルへと接近すると、先程右拳に溜めていた仙気を圧縮する。
慌てて立ち上がり、飛び退こうとするヴェイル。
しかし、一真のほうが早い。
一真は圧縮された仙気の塊を、立ち上がったヴェイルの胸に狙い付ける。
「封神拳——破天掌!」
避けられないと悟ったヴェイルは、瞬時に防御に移る。
「くっ!
シールドヴェール!」
間一髪で、魔法発動は間に合った。
ヴェイルの身体を、魔力の防護膜が覆う。
だが一真は、かまわず仙気を叩き込む。
『ギュオン——メキメキメキッ!』
軋みをあげるヴェイルの身体。
ヴェイルはそのままキリモミしながら、後方へと弾き飛ばされた。
「ぐえぁ!?」
派手に吹き飛び、再び地面を転がるヴェイル。
オラクルの切り札ですら倒せなかった相手が、無様に地面を這いつくばっている。
今の一真は、一切の手加減を止めている。
容赦をするつもりはない。
自分はこいつを、殺すためにここにいるのだから。
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