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第240撃:繋がる想い

ブックマークに高評価、本当に有難うございます!

嬉しくて嬉しくて、何度も見ちゃいました。


晶たちの翠霊郷でのサバイバル生活は、順調に進んでいた。


この結果はシルヴァも予想外だったらしく、目を見開いて驚きを顕にする。


最初の頃こそ、危なっかしさが随所に見て取れてはいた。


だが三人は——特に晶は、それこそ時間刻みでその生活に慣れていった。


それほど長くはなかったとは言え、

帰らずの森での一真との生活が、確かな礎となっていたのだ。


だがまだ甘い。


戦い方の修行は、もう少し様子を見てから。


シルヴァがそう考えていたら、

水汲みをしていた晶が思い出したかのように声をあげた。


「あっ!」


紫音と柚葉の心配そうな声がかかる。


「どうしたんだ、晶?」

「晶くん、何かあったの?」


晶は二人に向き直り、どこか気まずそうに声を漏らす。


「色々あって忘れちゃってた……ルナリス……」


「「あっ!」」


晶の言葉に、二人も思わず大きな声をあげた。


ルナリス。


帰らずの森で出会った、寂しがり屋の水の聖獣。


別れ際の、ルナリスの寂しそうな雰囲気が脳裏によぎる。


離れたところから三人を見守っていたシルヴァが、

不審に思い近寄って来た。


「何だ?なにか問題が発生したか?」


三人はシルヴァの顔を見て一瞬躊躇したが、

思い切ってルナリスのことを話す。


話を聞いたシルヴァは、呟きを漏らす。


「ルナリス……

お前たちの事情説明に出てきた、水の聖獣か」


顎に手をやり、悩むシルヴァ。


気になりはする。


今のエルフェリアにおいて、聖獣も精霊も個体数が少なく貴重な存在だ。

エルフであるシルヴァには、特にその思いが強く根付いている。


だが、その聖獣をどうするべきか。


その判断がつかない。


話を聞く限りだと、自分ひとりで迎えに行っても、

そのルナリスと名付けられた聖獣は姿を見せまい。


かと言って、晶達の現状を考えると、

いま翠霊郷の外に連れ出すのも憚られる。


唸るシルヴァに対し、晶が言葉を投げかける。


「あの、シルヴァさん。

ルナリスのこと迎えに行っちゃ駄目……ですか?」


言葉にしたのは晶だが、

表情を見れば他の二人も同じ気持ちだという事は分かる。


ルナリスと別れるとき、必ず戻ると約束した。


その約束から、結構な日数が経ってしまっている。


三人とも、ルナリスの存在に助けられた。


恩もあるし、情もある。


危険だということは承知だが、それでもこのまま放ってはおけない。


しばらく悩んでいたシルヴァだったが、

晶達の視線に強い想いを感じ取ったのか、渋々だが許可を出した。


「ふぅ。仕方がないな。

どうせ駄目だと言っても、これからの修行に身が入らんだろう。

……許可するよ」


シルヴァの言葉で、パッと表情に花を咲かせる三人。


そんな三人に釘を刺すように、シルヴァが重く言葉を放った。


「ただし、余計なことはしないで帰ってくること。

俺も同行すること。

俺が危険だと判断したら、どの様な状態でも撤退すること。

これら三点を守れるならば、だがな」


そんなシルヴァの言葉に対して、三人は視線を交わすと、

声を揃えて返事をする。


「「「はい!」」」


息がぴったりな三人の返事を聞き、シルヴァは苦笑を漏らしながら呟いた。


「まったく。返事の威勢だけはいいな。

本当に分かってるんだか」


それから四人は、軽く準備をすませて翠霊郷を出た。


転移魔法の込められた魔石を使い、魔法陣が設置してある森へと戻る。


翠霊郷よりも陰の気が深い、ジメジメした森の中。


四人はまず、その森を抜けてロイの村に行くことにする。


そこを経由して、帰らずの森へと向かう。


出口へと向かう森の道中、晶たち三人は驚きの光景を見た。


それは、シルヴァの戦いぶり。


森の中で何度かモンスターに出会ったが、その悉くはシルヴァの魔法剣の露と消えた。


——強い。


これまで三人は、シルヴァの戦いを見たことがなかった。


だがこの森での戦いぶりを見て、ロイやオルディンの考えの正しさを実感する。


(((この人に鍛えてもらえれば、確実に強くなれる!)))


シルヴァの戦い方は、そう感じさせる確かな経験が宿っていた。


一真のような、ある種の常識はずれな戦い方ではない。


シルヴァの戦いは愚直に戦場で鍛え上げてきた、

言わば“常人”にでもたどり着ける類のもの。


人であることすら“変える”ような、封神の道とは真逆の道。


紫音や柚葉はもちろん、晶でも目指せる——そんな道の先にある強さ。


三人は怖かった。


自分達は本当に、一真の力になれるのかと。


想像を絶するような道を歩んできた、一真という男の横に立てるのかと。


何度も強く想っては、何度も気持ちがブレていた。


でも、いま三人は思う。


望んでも良いのかもしれないと。


三人は改めて決意を固める。


必ず、一真の支えになってみせると。


それまでシルヴァの戦いに見惚れていた三人は、自分達も戦いに参加し始めた。


その姿を見て、シルヴァは目を丸する。


「なんだなんだ?

急にどうした、お前達。

いきなり張り切りだして」


三人は笑みを浮かべて答える。


「ボクも、強くなってみせますっ!」

弓を構えた晶がそう言った。


「オレはまだまだこんなもんじゃない!」

紫電を奏でて紫音が猛る。


「私は、あの人に寄りかかってほしいんです!」

二重の魔法を放ちながら、柚葉が叫ぶ。


そんな三人を見たシルヴァは思う。


(俺は少し、こいつらを甘く見ていたのかもしれないな。

……戻ってきたら、本格的な訓練に移っても良いか)


そんなこともありながら、四人は森を抜けて歩き続ける。


もう間もなく、ロイの村が見えてくるだろう。


そんな時だった。


自分達の進行方向、村の方面からのこと。


とても耳に残る、聞き慣れた——

けれどしばらく聞けていなくて——

ずっと聞きたくてたまらなかった——

“大切な人”の声が聞こえてきた気がする。


最初三人は、聞き間違えかと思った。


こんな所に、こんなタイミングでいるわけはないと。


だが村に近づくにつれて、再び声が聞こえる。


「晶——紫音——柚葉——」


それは聞き間違えようもない、あの人の声。


三人は目を見合わせて、同時に走り始める。


しばらく走った後、前方にロイの村が見えてきた。


その村の前に、一人の男が立っている。


誰か二人を抱きかかえている様で、

影になって顔はよく見えない。


だが見間違えようもない人物。


草薙一真だった。


「「「一真さんっ!!」」」


三人の言葉が聞こえたのか、一真がこちらへと歩いてくる。


晶たちからは、まだ顔はよく見えない。

だがどこかその姿は、三人が感じたことのない雰囲気を纏っている。


軋んだ一真の心の傷に、三人の声は確かに届いた。


よろしければ、ブックマークや評価をお願いします。

感想もお気軽に聴かせてくださいね。

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― 新着の感想 ―
晶ちゃんたちの決意がとても良い。 リュミナさん、オラクルさんは助かるのか? 次が早く読みたいーーー!
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