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第237撃:妹の祈り

最近遅くなってばかりで、ごめんなさい!

そして待っていてくださり、有難うございます!

——ドサッ——


力なく大地へと落ちる、リュミナの身体。


しかし同時に、リュミナの精霊魔法を食らったヴェイルも、彼方へと吹き飛ばされている。


凄まじい威力だ。


リュミナが使った魔法は、上位の光精霊を呼び出す魔法。


“オラクル”ですら、使えない精霊魔法。


その魔法を使ったリュミナは、ピクリとも動かず、地面には赤い血溜まりが広がってゆく。


オラクルの口から、魂が砕かれんばかりの言葉が零れだす。


「ああっ!ああああっ!

なぜだ!…なぜだリュミナっ…!

逃げろと言ったじゃないか!

無理はするなとあれほどっ!!」


なぜ、リュミナがここに来た?


なぜ、リュミナが精霊魔法を?


オラクルは、バラバラに砕けてしまいそうな思考を無理やり繋ぎ止め、

引き裂かれそうな痛みを無視して、身体をよじる。


——地面に零れたポーション。


オラクルは地を這い、そのポーションを啜り上げる。


「ズズッ——ピチャピチャ——」


泥と血の味が混じり合い、吐き気を催す味が口に広がる。


構うものか。

一度は捨てた命だ。


動けるようになれば、それでいい。


(死なせない!絶対に死なせてなるものか!)


痛みは引かないが、起き上がれるくらいには回復した。


オラクルは立ち上がると、マジックバッグにしまっておいた、

予備のポーションとマジックポーションをほとんど取り出す。


それらはガイからのプレゼント。


(ガイ、ありがとう)


心でガイに礼を言いながら、ポーションとマジックポーションを数本飲み干す。


瓶を放り捨てると、再びバッグから幾つかのアイテムを取り出した。


それは魔石を加工して作った、魔法爆弾。


そして、たった一つだけ所持していた、虎の子のハイポーション。


このポーションをリュミナに使う。


マジックバッグに入れておいたのが幸いした。


時空間魔法により内部の空間を操作しているため、衝撃が内部のアイテムへと届かなかったのだ。


一度は自分の命を諦めた。


だが駄目だ。


死ぬわけにはいかない。


今自分が死ねば、確実にリュミナも助からない。


オラクルは痛む身体に鞭を打ち、それでもゆっくりとリュミナの元へと歩いてゆく。


一体なぜ……リュミナはここに——


◆ ◇ ◆


オラクルから逃げろと言われた。


そうするべきなのだろう。


だがリュミナは、どうしても逃げることが出来なかった。


オラクルから託された共鳴核をその胸に抱き、ドアの影から部屋を覗き見る。


何度か言葉を交わしていたと思いきや、オラクルが精霊魔法を発動した。


目を見開くリュミナ。


敵は窓の外へと吹き飛ばされ、すぐ後をオラクルが追ってゆく。


バルト王以外に誰もいなくなった部屋。


リュミナは恐る恐る、その部屋へと入り込む。


(どうしよう……どうしよう!

お姉ちゃん!一真くん!)


オラクルをすぐにでも追いかけたい。


だがそれは、オラクルの気持ちに反する。


オラクルは自分を逃がすために、今まさに無謀な戦いに挑んでいるのだ。


相手の不気味さは、リュミナにも伝わってきていた。


自分が追いかけたところで、何の戦力にもならない。

足手まといが精々だろう。


精霊魔法が使えない自分では、あの不気味な相手に抵抗できないだろうから。


また、今この場でバルト王の洗脳解除を試みるというのも、かなり危険な賭けだ。


遺構でノアに言われた言葉が、頭を過る。


共鳴核の効力低下。


もしかすると、解除出来ないかもしれない。


よしんば解除できたとしても、その後は?


自分一人で王を連れて逃げられるだろうか?


王の前で立ち竦むリュミナ。


自分がどうするべきなのか、分からない。


リュミナが考えあぐねていると、城の外——オラクルたちが向かった方向から、

禍々しい魔力を感じた。


「!?」

「お、お姉ちゃん!」


リュミナの胸から、嫌な予感が湧き上がる。


いても立ってもいられない。


リュミナは覚悟を決めて、手に持っている共鳴核へと魔力を込める。


すると、共鳴核の内部に浮かぶ、淡い光の輪が高速で回り始めた。


どうやら発動は出来たらしい。


リュミナはそれを、王の膝の上にそっと置く。


「王様、ごめんなさい。

本当はちゃんと見届けないと行けないけど……。

私、行かないと」


虚空を眺める王にそう言うと、リュミナは砕かれた窓まで歩いていく。


そして一度だけ振り返り、最後に一言だけ付け加える。


「どうか、洗脳なんかに負けないで!」


そう言うと、リュミナは壊れた窓から外へと飛び降りる。


落下途中で飛行魔法を発動して、速度を緩やかにする。


すると、町の外——防壁の向こう側から、先程の禍々しい魔力が感じられた。


そちらの方に視線を向けると、そこではオラクルと謎の男が戦っている。


リュミナは着地地点を防壁の向こう側へと移し、着地と同時に走り出す。


オラクルが敵の攻撃を受けて、吹き飛ばされた。


急がなければ。


オラクルですら勝てない相手。


そんな相手に、自分が何が出来るのか。


普段の自分なら、そう考えていただろう。


だが倒れたオラクルの身体から血が流れているのを見て、

そんな考えは吹き飛んだ。


敵がゆっくりと、オラクルに近づいていく。


リュミナは必死に駆けながら、心で願う。


(アルサリウス様!エルフェリーナ様!

お願いです!お願いです!!

我儘は言いません!一回だけでいい!

二度と使えなくても、文句は言いません!)


「だからどうか……どうかお姉ちゃんを助ける力を」


「私にかしてぇぇぇぇぇっ!!!」


そのとき、リュミナは不思議な感覚を経験する。


自らの内に、“何か”が流れ込んでくるような感覚。


リュミナは精霊魔法に憧れて、知識だけは貪欲に吸収していた。


リュミナが特に好きだったのは、昔の召喚勇者の伝説。


数百年前、強大な邪神の眷属を討ち滅ぼした、“光の精霊魔法”の使い手の伝説。


精霊と心を通わせることが出来ない自分には、縁があろう筈もない光の精霊魔法。


それでもリュミナは憧れて、何度も何度も練習をした。


——なぜだろうか。


今なら、その魔法が使えるような気がする。


リュミナの中で、何かが目覚める音がした。


「お姉ちゃん!ダメ!絶対にダメェ!!」


リュミナは、かつて何度も練習した呪文を詠唱する。


「力の根源たる精霊よ!

彼方より来たりて、此方へと渡れ!

——スーレイン・ボー・ラ・カルエルム・ライティア!」


間に合った。


敵がオラクルに魔法を放つ前に、割って入ることが出来た。


かつて光の勇者が、邪神の眷属を打ち破った時に使ったとされる魔法。


リュミナは敵に目がけて、“それ”を撃ち放った。


「オーバー・レイ!!!」


解き放たれた力ある言葉。


瞬間、リュミナの中から、ゴッソリと魔力が失われる感覚。


それはオドではなくマナ。


リュミナは自らのオドを呼び水とし、マナを取り込んで、

そして生まれて初めての精霊魔法を使ったのだ。


光の粒子が雨となり敵へと降り注ぎ、凄まじい威力で敵を吹き飛ばす。


しかしそれとほぼ同時に、身体に激痛が走った。


……自分が浮いている?


(ああ、そっか。

私、相手の攻撃喰らっちゃったんだ)


身体は砕け散りそうなほどに痛むのに、何故か心は冷静だった。


視線だけをどうにかオラクルに向ける。


——無事とは言えないが、生きている。


良かった。

自分は守れたのだ。


大好きな姉を。


それを確認できたと同時に、リュミナは意識を手放した。


◆ ◇ ◆


オラクルは足を引きずりながらも、どうにかリュミナのもとまでたどり着いた。


しゃがみ込み、恐る恐るリュミナの胸に耳を当てる。


——トクン——トクン——


良かった。まだ息がある。


魂律共鳴核が見当たらないが、今はそれを気にしている余裕はない。


オラクルはリュミナに、ハイポーションを飲ませようと瓶を口へと当てる。


しかしハイポーションは、リュミナの口から零れ落ちる。


もはや嚥下する力も残されてはいないのだ。


オラクルはハイポーションを自らの口に含むと、直接リュミナの喉に流し込む。


——ごくん。


微かにリュミナの喉が鳴った。


それを見て、安堵の笑みを浮かべるオラクル。


「リュミナ……少しだけ待っててくれ」


そうリュミナへと告げると、吹き飛んだヴェイルに視線を向ける。


まだ死んでない。


ダメージはあるようだが、命には届いていない。


オラクルは自らのオドを、ほとんど消費する。


代わりに大量のマナを体内に取り込んだ。


手加減はしない。


後のことも考えない。


今はただ、リュミナを連れて逃げることだけを考える。


そのためには、ヴェイルに追撃されないようにしておく必要がある。


オラクルは、今しがた取り込んだ大量のマナを全て消費して、四体の精霊に呼びかける。


地、水、火、風。


元素を司る四大精霊。


「四大を司る精霊たちよ。

契約の名のもとに集え。

我は調律者。

世界の律を乱す者に裁きを」


オラクルの身体から、四色の鮮やかな魔力が立ち上る。


「エル・ラ・フェルナ・アストラ・コンダクティア」


狙いは、ヴェイルが吹き飛んだ方向。


自らの二つ名の由来ともなった、精霊魔法。


オラクルは、“力ある言葉”を静かに呟いた。


『——グランド……コンダクション——』


その瞬間、四大精霊がこの場に顕現した。


放たれる四色の魔法。


うねり、重なり、一つになる。


鮮やかなる白光が、ヴェイルへと襲いかかった。


同時に、力いっぱい魔石爆弾を相手へと投げ込む。


『ゴォォォ——ズドォォォォォォォン!!』


体の芯まで響くかのような爆音。


その音が鳴り響いた直後、オラクルの身体からドッと力が抜けてゆく。


今にも倒れそうだ。


だがオラクルは自らの疲労を無視して、リュミナを大切に抱き上げる。


そして、一真が向かっていった方角へ向けて、ゆっくりと歩き出した。


(頼む……どうか今の一撃で……)


そう、心で願いながら。


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― 新着の感想 ―
オラクル頑張った(T . T) リュミナちゃん助かって良かったーーが、、、、 次が早く読みたーーーい╰(*´︶`*)╯♡
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