表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

237/252

第236撃:遊びの終わり

ブックマーク有難うございます!

嬉しいです。

嬉しくて、なんと言ったらいいか……


今回はプロローグを除けば、一番の長文になっていまいました。

読みづらかったら申し訳ありません。

オラクルは素早く後方へと飛び退くと、

振り返らずに共鳴核を扉の外へと投げた。


「リュミナ!それを持って早く逃げるんだ!

私のことは放っておけ!」


視線は敵から外さず、瞬きすらしない。


注意をそらした瞬間、自分の命は零れ落ちる。


何がなんでも、リュミナだけは逃がす。


自分の命は——諦めた。


目の前の敵は強い。


自分では、その強さを測りきれないくらいに。


自分の命を使って、どれだけ時間が稼げるか。


オラクルは警戒を一切緩めずに、状況の把握に努める。


(目の前のコイツが何者なのか、何を目的としているのかは分からない。

だが、少なくとも王の命が目的じゃないはず)


もし王の命が目的ならば、王はとっくにこの世にはいないだろう。


しっかりと調べた訳では無いが、少なくとも見える範囲に異変はない。


たまたまの気まぐれか、あるいは殺せない理由があるのか。


おそらくは前者だろう。


(コイツは理由がなくとも、気まぐれで人を殺す。

たとえ殺してはならない相手であろうが)


初めて会った相手なのに、それだけは確信できる。


王の命が今こうしてあるのは、目の前のコイツの気まぐれ——ただの運だ。


出来ることなら、その運も引き寄せたい。


(リュミナを逃がし、バルト王もどうにか救出したい)


希望があるとするならば。


——草薙一真——


一真が謎の軍を倒し、こちらへ駆けつけてくれること。


自らの事ながら、実に他力本願な考えだ。


こんな状況でなければ、オラクルは自分自身を嘲笑していただろう。


オラクルはどうすれば、一秒でも長く稼げるかを考える。


「貴様……本当に何者だ?

何が目的だ。

セレフィーネという魔族の関係者か?」


答えが返ってくるとは思っていない。


思っていなかったが。


「ワタシ?

ワタシの名前はヴェイルというんだ。

よろしくね、エルフのお姉さん」


意外にも相手は、答えを返してきた。


本当かどうかは怪しいし、セレフィーネとの関係は分からない。


あるいは、生かして返すつもりはないという意思表示か。


それでも、好都合だ。


時間さえ稼げればなんでもいい。


「ほう、ヴェイルと言うのか。

なら私も名乗らないとな」


「私の名前はオラクルという。

かつてはスピリット・コンダクターなどと、大仰な呼称をされていた」


敢えて提示した自らの情報に、目の前の人物は目を輝かせる。


(食いついたか?)


オラクルは一瞬喜びかけた。


このまま会話を継続できれば、一真が来るまでやり過ごせるかもしれない。


だが一瞬にして、そんな甘い考えは霧散した。


先程よりもおぞましいものが、背筋に走ったからだ。


ヴェイルと名乗った相手は実に嬉しそうに笑い、

口から軽薄な言葉を垂れ流す。


「ああ、知ってるよ。

君があの、トリニティ・レギオンのオラクルか。

改めて歓迎するね。

退屈してたんだ」


歓迎。


何についての歓迎かは、言われなくても分かる。


“暇つぶし”


目の前の人物の笑みはまるで、

“壊しても良い”玩具を与えられた子供の如きもの。


駄目だ。


これ以上時間稼ぎなどと言ってられない。


オラクルは心のなかで、バルト王へと謝罪を告げる。


(王よ、申し訳ありません!)


そして相手と部屋の窓が直線になるように動き、

先程から準備していた魔法を解き放つ。


「蒼穹を巡る風の精霊よ。

我が命に答え、圧縮せよ。

静寂を破り、理を歪め、彼の者を彼方へ!」


『テンペスト・インパクト!』


オラクルの力ある言葉を引き金として、風の精霊が顕現する。


圧縮された風の暴力が、ヴェイルへと叩きつけられた。


『ヴォォォォォン!』


凄まじい勢いでヴェイルは窓を突き破り、外へと弾き飛ばされる。


——効いていないだろう。


すぐに戻ってくるはずだ。


ここで戦うわけにはいかない。


壊れた窓から、オラクルも外へと躍り出る。


風の精霊の協力を得て、ゆっくりと地面へと降りてゆく。


リュミナは逃げただろうか?


無理をして、一人で王の洗脳を解こうとしているのでは?


(頼むリュミナ……逃げてくれ……っ!)


願いを抱きながらオラクルが地面へと下り立つと、そこには一人の男が立っていた。


二本の大きな角が生えている。


これがこの者の本来の姿なのだろうか。


城の上層から吹き飛ばしたのにも関わらず、一切の怪我は見られない。


ヴェイルは愉快そうに舌なめずりをすると、隠していた魔力を解放する。


その瞬間、オラクルは押しつぶされそうな圧迫感を覚える。


(ア゛ッ!?……何だ……これは……!!)


自分は今まで、“コレ”に気付かなかったのか?


コレは違う。


オラクルが今まで戦ってきた者たちとは、明らかに違う。


このまま窒息してしまいそうな息苦しさ。

それでも、オラクルは無理やり身体を動かした。


「っく!……ぅぁああっ!!」


放ったのは、再び風の魔法。


ヴェイルを街の外へと吹き飛ばす。


少しでも被害を減らすために。


少しでもリュミナや王から引き離すために。


吹き飛ばされたヴェイルの顔には、変わらずの笑みが浮かんでいた。


いや、吹き飛ばされたというのも、もしかすると違うのかもしれない。


オラクルの目には、一瞬相手が“自分で飛んだ”ように見えた。


すかさずオラクルも後を追う。


防壁を飛び越えて、城下町の外へと下り立つ。


ここなら、被害は大分抑えられるだろう。


ヴェイルは辺りを見回すと、待ち切れないという様子で言葉を漏らす。


「へぇ。ここでワタシと遊んでくれるのかい?」


「諸事情で、ずっと薄暗い場所に閉じ込められてたんだ。

だから正直、あの城に閉じこもっているのも苦痛だったんだよね」


そう言うとヴェイルは、無垢で残忍な笑みを浮かべた。


まるで子供が、悪戯に虫を殺すような笑顔。


「それじゃあ、遊ぼうか。

良い声で哭いてね♪」


その声に、オラクルの口から悲鳴が漏れそうになる。


しかし必死にその声を飲み込み、呪文を詠唱する。


「っ!……命を燃やす紅の精霊よ!

契約の調べに答えよ!

我が声を導きとせよ!

——スーレイン・ラ・イグナ・ベルセリオ——」


『イグニス・レクイエム!』


オラクルの呼びかけに応え、オラクルが自らに取り込んだマナを代償として、

炎の精霊が顕現した。


収束された火炎の柱が、ヴェイルへと襲いかかる。


ゴォォォォォォオッ!


並の相手なら、黒焦げになるであろう業火。


しかしヴェイルは避けようともしない。


左手に魔力を集中して、精霊が放った炎を“握りつぶす”


「おお!すごい威力だ。

これは怖いね♪」


オラクルは驚愕に固まりそうになるが、無理やり体を動かす。


休むことなく、敵の周囲を回るように動きながら、次の詠唱。


「クソっ!!

天を裂く雷精よ!

怒りではなく律動を!

破壊ではなく審判を!

——ゼル・ラギア・ヴォルト・レクス——」


『ヴォルト・オーケストラッ!』


オラクルの力ある言葉に呼応して現れたのは、雷の精霊。


精霊が連続で、ヴェイルに雷を降らせる。


ズガァァン!ズガァァン!ズガァァン!


それはまるで、指揮者がタクトを振るうかの如くの、落雷操作。


全弾命中。


やはり避けない。


落雷による土埃が収まった後、ヴェイルは涼しい顔でそこに立っている。


オラクルの心に絶望が過る。


命を賭す覚悟を持ってしても、この埋めようのない差。


青ざめるオラクルを見て、ヴェイルが嬉しそうな声を上げた。


「その顔いいねぇ!!

もう少し楽しみたかったけど、壊しちゃおうかっ!!」


ヴェイルが手のひらに魔力を集中し始める。


どす黒く、禍々しい魔力を。


あれは駄目だ。

まともに喰らえばそれで終わる。


オラクルはどうにか回避を試みながらも、防御用の魔法を詠唱する。


「か、風渡る蒼き精霊よ

囁きを纏い

我が身を覆い隠せ

——ラ・シエル・フェリス・ノア・シルヴェリア——」


『シルフィード・シール!!』


瞬間、風の上位精霊が顕現して、オラクルの身体を包む風の結界を展開した。


そのほぼ同時。


ヴェイルの手から、魔力そのものが撃ち放たれる。


「バイバイ♪

少しだけだけど、楽しめたよ」


魔力弾は正確にオラクルを捉え、魔力弾と風の守りが衝突する。


一瞬のせめぎ合いを見せた後——打ち勝ったのはヴェイルの魔力弾。


パリィィィン!


まるで、薄いガラスが砕けたかのような音。


オラクルは避ける間もなく、魔力弾の直撃を受けた。


ドォン!


「あぁぁぁぁぁぁっ!」


ズサァ。


ゴロゴロゴロ。


悲鳴を上げて、地面を転がるオラクル。


風の守りのお陰で、致命傷は免れた。


だが、ダメージは深刻。


悲鳴を上げる身体で無理やり、腰のポーチからポーションの瓶を取り出そうとする。


——しかし。


ピチャ……。


指先に触れたのは、瓶が割れて零れたポーション。


どうやら運悪く、今の一撃で割れてしまったらしい。


ポーション用の瓶は戦闘にも耐えられるように、頑丈に作られているにも関わらず、だ。


(……くそっ)


内心歯噛みするオラクルに、ヴェイルがゆっくりと歩み寄ってくる。


「へぇ!まだ生きてるんだね!

きみ、強いよ」


「でも、もう飽きたかな。

お疲れ様。もう壊れていいよ」


そう立て続けに言うと、ヴェイルは地面に横たわるオラクルに手のひらを突き出す。


「今度こそサヨウナラ♪」


ヴェイルは満足そうに笑い、魔力を手に集中する。


オラクルは、時間の流れが緩やかになるのを感じていた。


敵の動きがやけに遅く見える。


しかし、自分の身体も動かない。


それは死の瞬間。


引き伸ばされた、時間の感覚。


オラクルは、自らの死の瞬間と悟った。


(……ここまでか。

リュミナ…王…どうか無事で…)


今まさに、撃ち放たれようとしている魔力弾。


しかしその時、城の方角から声が聞こえてきた。


その声は、こちらへと近づいてくる。


「お姉ちゃん!ダメ!絶対にダメェ!!」


リュミナが“精霊魔法”の詠唱に入る。


「力の根源たる精霊よ!

彼方より来たりて、此方へと渡れ!

——スーレイン・ボー・ラ・カルエルム・ライティア!」


——リュミナが、ヴェイルとオラクルの間に割って入った。


『オーバー・レイ!!!』


叫ばれる力ある言葉。


リュミナの呼びかけに応え、光の精霊が姿を表した。


その精霊が、光の粒子を雨のようにヴェイルへと降り注がせる。


同時に、ヴェイルの魔力弾も撃ち出され、リュミナに命中した。


緩やかに感じる時間の中で、

オラクルは“妹”が血を流しながら宙に吹き飛ばされるのを、

ただ——見ていることしか出来なかった。


「リュミナァァァァァァァァッ!!!」


宜しければ、ブックマークや評価をお願いします。

感想もいただけると、とても嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ああああああああああ(T . T) リュミナちゃんがーーーー! ( ;∀;) 死なないでーーー!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ