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第234撃:姉と妹

一真と別れたオラクルとリュミナは、エルサリオン王城へと向かっていた。


遂にここまで来た。

エルサリオン国王、バルト=エルサリオン解放の一歩手前まで。


オラクルは逸る気持ちを必死に抑えながらも、リュミナへと注意を促す。


「リュミナ、あくまでもお前はサポートだ。

私よりも前に出るんじゃないぞ。

危険だと判断したら、即時離脱だ」


リュミナはオラクルの後ろに続きながら、頷いて返した。


「うん!分かってる!

セレフィーネって魔族とは、極力戦わないように。

だよね!」


オラクルは肯定を返しながらも、緊張感が高まるのを感じる。


本来なら、セレフィーネ不在の瞬間を狙いたいのだ。


だが自らの調べだと、セレフィーネは外へは出ない。


ならば、いつ訪れるか分からない、その機会を待つことは出来ない。


最初はどうにか、セレフィーネを誘導できないかとも考えた。


しかし良い方法が見つからない。


このままだと、いつ癒やしの力を宿したものが——

女神エルフェリーナの魂を宿したものが、召喚されてしまうかわからない。


勝負に出るしかないのだ。


本当なら、リュミナを巻き込みたくはなかった。


ここまで来る道中、何度も一人で挑もうと考えた。


だがもし、自分が失敗したら?


もし魂律共鳴核を失うことになったら?


——駄目だ。一人で挑むには、あまりにも危険性が高すぎる。


オラクルは走りながら、後方に続くリュミナに一言謝罪を告げる。


「すまない、リュミナ。

お前まで、危険に巻き込むことになってしまった」



背中越しに謝られたリュミナは、笑みを浮かべて言葉を返す。


「謝らないで、オラクルお姉ちゃん!

私はね、嬉しいんだからっ!」


リュミナの声には、一切の気負いはない。

心の底から嬉しそうな声。


「私でも、お姉ちゃんの役に立てる……

このエルフェリアの平和のために、役に立てるんだもん!」


嬉しい。


嬉しくてたまらない。


エルフの里では、落ちこぼれとして疎まれてきた。

自分には何も出来ないと諦めてきた。


でも、一真が言ってくれたのだ。


才能が全てじゃない。

遅咲きの者も大勢いる。


——嬉しかった。


嬉しかった!嬉しかった!!


こんな自分でも、自身のことを諦めなくてもいいのだと。


自分を大切に思ってもいいのだと。


そう、言ってもらえたようで。


こんな自分でも……誰かの力になれるのだと。


ああ——なんて嬉しいんだろう。


何度言葉にしても足りない。


私は、この世界にいてもいいのだ。



オラクルには、リュミナの気持ちが伝わっていた。


精霊が教えてくれるのだ。


たとえ普段、その感情を表に出さなくとも。


この子がどれだけ悩んでいたか。

どれだけ苦しんできたのか。


自分では、その苦しみを取り除いてやることが出来なかった。


精霊に愛してもらえた自分が何を言っても、きっとリュミナの心に影を落とす。


どうにかしてやりたい。

どうにもしてやれない。


そんな無力感を抱きながら、先日久しぶりにリュミナと再開した。


前世界魂遺構内ということもあり気を張ってたためか、最初は気付かなかった。


だが遺構を抜けてリュミナを見てみると、明らかに“変わって”いた。


後ほど聞いたことだが、リュミナは一真に伝えていたらしいのだ。


自分がエルフの里で、どのような扱いを受けていたのかを。


——驚いた。


まさかリュミナが、出会って間もない人物にそこまで心を開くなど。


それまでの人生のせいもあってか、リュミナは人見知りをする。


一度心を開けば、とてもよく懐く。


だが、滅多なことでは心は開かない。


リュミナが心を開いていたのは、自分とロイとオルディンの三人のみ。


そんなリュミナが、一真には心を開いた。


それだけではない。


一真の仲間の紫音や柚葉にも、そして晶という人物にも普通に接しているというではないか。


オルディンの事を紹介するほどに。


その変化は、ガイたちやリリーナ、バッカスと接している姿からも明らかだった。


——心の壁が、崩れかけている——


オラクルは心のなかで、一真に感謝を告げる。


(ありがとう、一真。

私の大切な“妹”の心を救ってくれて)



二人はエルサリオン王城の真後ろ——秘密の脱出路の出入り口にたどり着いた。


「流石に正面から乗り込むのは無謀だ。

またこの、脱出路を使わせてもらおう」


呟かれたオラクルの言葉に、リュミナは頷く。


オラクルとリュミナは、自分たちの持ち物をチェックする。


オラクルのマジックバッグには、何本かのポーション、マジックポーション。

他には、ガイから餞別として貰ったアイテムが幾つか。


気を使う必要はないと言ったのに、ガイは幾つものアイテムをオラクルに“プレゼント”してきたのだ。


ヤキモチを焼いたリリーナに、尻を捻られてたガイの顔を思い浮かべ、オラクルは自然と笑みをこぼす。


そんなオラクルの表情を見て、リュミナが不思議そうに声をかけてきた。


「お姉ちゃん?」


オラクルは、笑みを苦笑に変えて返す。


「いや、なんでもない。

いい感じに、肩から力を抜かせてもらったというだけだ」


ますます意味がわからないと言った様子で、顔に疑問符を浮かべるリュミナ。


「??」


そんなリュミナの頭を優しく撫で、オラクルは脱出路の中へと歩みを進める。


「いくぞ、リュミナ」


「うんっ!」



脱出路の内部は迷路のようになっているが、オラクルは迷うこと無く進んでゆく。


完璧とは言えないが、王城の隠し扉から出入り口までの道筋は、完全に頭に入っている。


バルト王がまだ洗脳される前、オラクルはバルト王付きの冒険者をしていた。


様々な任務を受け、中にはこの脱出路を使うものもあった。


そうした経緯もあってか、いつの間にか覚えていたのだ。


二人は適度な緊張感を維持しつつも、過度に緊張しすぎないように、

言葉を交わしながら迷路を進んでいく。


道中保存食で空腹を満たしながら歩き続けると、王城内部へと通じる隠し扉へとたどり着いた。


二人はエルサリオンに近づく前辺りから、自分達の気配を抑えていた。


本来森の中で、狩猟をしながら生活をするエルフ。


気配を抑え込むのは得意なのだ。


できる限り、戦闘は避けたい。


だが果たして、どれほど上手くいくか。


城内には、セレフィーネに洗脳されている城兵が無数にいる。


それらの者たちなら、オラクルの精霊魔法でどうにかなるだろう。


問題はセレフィーネ自身と、生き残りの召喚勇者。


この者たちに、自分の力がどこまで通じるかが未知数だ。


オラクルは扉に手を掛けて、しばし悩む。


危険を覚悟で、一気にバルト王の私室まで走り抜けるか。


精霊魔法で城兵を眠らせて、あくまでも隠密性を重視して進むか。


いずれにしても、危険はある。


魔法を使えば、兵を眠らせる事ができる自信はある。


しかし、召喚勇者に効くかは未知数だし、セレフィーネに効くとは思えない。


逆に魔法を使わずに進むとなると、

セレフィーネに気づかれる危険性は減らせるが、兵に視認される危険性が大幅に高まる。


どうするべきか。


悩んだ結果、オラクルが選んだ選択は——


「リュミナ、今から精霊魔法を使う。

気配は抑えたままにしておくんだ」


その言葉だけで、リュミナにはオラクルが何をするつもりか分かった。


言葉には出さず、頷きだけで肯定を伝える。


オラクルは扉の仕掛けを動かし、解錠する。


『ガコンッ』


鈍く重い音を立て、隠し扉が開く。


オラクルは直ぐには城内には入らずに、呪文の詠唱を始めた。


「目を閉じなさい。

争いは終わり、夜は満ちた。

精霊たちよ——

彼らを、夢へ渡せ」


『夢渡の静謐』


瞬間、オラクルの呼びかけに応え、眠りの精霊が姿を現す。


「お願い。

この城の者たちを、眠りに誘ってくれ」


その言葉を受け、精霊は言葉もなく微笑んだ。


そして——


眠りの精霊が、城内を静謐なる眠りへと誘い始めた。


よろしければ、ブックマークや評価をお願いします。

一言でも良いので、感想もいただけますと、ワタクシ嬉しくて鳥ダンスです!

ホゥホゥ♪

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