表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

227/250

第226撃:閑話・闘神童子の一日(前編)

話を先に進める前に、少しだけ。

……重い話が続いてて……心のエネルギーが。

(`;ω;´)

先を楽しみにしていてくださる方、申し訳ありませんが、お付き合いください。


※補足。

“国営陰陽機関逢魔”とは、私の初長編作品の設定です。

思い入れがある作品なので、よろしければそちらも読んで見てください!

一真たちはバッカスに声を掛けると、

食費と宿泊費の精算を申し出た。


それを聞いたバッカスは、露骨に顔をしかめて首を振る。


「いやいや、いらねぇって言ってるだろ。

一部はガイから貰ってるし、残りは俺の奢りだ」


そう言って笑うが、

一真は小さく首を横に振った。


「宿泊費だけなら、まだしもだ。

食費は……正直、かなりの額になってる。

全部奢られるわけにはいかない」


しばらくは、互いに一歩も引かない問答が続いた。


最終的には、

お互いが半歩ずつ譲り合う形で、

一部を支払うことで話がまとまった。


一真たちは改めて礼を告げ、宿を後にする。


「また来てくれよ」


背中から掛けられたバッカスの言葉が、

胸の奥をじんわりと温めた。


◆ ◇ ◆


途中、一真たちはリリーナの店にも立ち寄った。


目的は、挨拶と食料品の買い出し。


店に入るなり、

一真たちの姿に気付いたリリーナが、

ぱっと表情を明るくする。


だが、ここでも問題が起きた。


「え? 代金?

いえいえ、そんなの要りませんよ。

お礼みたいなものですから」


その言葉に、一真は思わず苦笑する。


バッカスと、同じ反応だった。


それだけ、

ガイたちのことを心配し、

心を痛めていたのだろう。


一真は、先ほどと同じように、

半ば強引に代金を支払った。


既に一度、

リリーナには世話になっている。


さすがに、二度目は甘えられない。


強い説得の末、

リリーナも渋々と代金を受け取った。


買い物を終え、

店を出ようとしたその時。


背後から、リリーナの声が届く。


「あ、もしよければ……

ガイたちの店にも寄ってあげてもらえますか?

きっと、喜ぶと思うから」


その言葉に、一真は振り返って笑みを浮かべる。


「ああ、そのつもりだ。

挨拶はしてから発つよ」


そう言って、

リリーナと笑顔を交わし、店を後にした。


◆ ◇ ◆


しばらく歩き、

ガイたちが経営していた道具屋の前に辿り着く。


その扉を前にして、

一真は思わず苦笑を浮かべた。


(……一番最初に来た時は、印象最悪だったな)


ちらりと横を見ると、

リュミナも似たような表情をしており、

思わず苦笑が深まる。


そんな二人を見て、

オラクルがぽつりと呟いた。


「ここが、ガイたちの店か……。

今のガイたちしか知らない私からすると、

そんな悪どい商売をしていたなんて、信じられないな」


それも無理はない。


オラクルは、

当時のガイたちを見ていない。


それどころか、

出会った直後に、

ガイが我慢できずにサインをねだっていたのだ。


トリニティ・レギオン――

特に精霊奏者オラクルの、熱烈なファンだったらしい。


あの時のガイの表情を思い出し、

一真は笑いを噛み殺しながら扉を開けた。


「ひとまず、入ろう」


店内には、人の気配がない。


だが、

裏口の先にある広場から、

四人分の気配がはっきりと伝わってくる。


「……やってるな」


そう呟き、

一真は裏口のドアを開いた。


◆ ◇ ◆


広場では、

ガイたち四人が武術の訓練に励んでいた。


「ベン! そうじゃねぇ!

体の各部位を、バラバラに考えるな!

拳を打つ時も、腕だけで打つんじゃねぇ!」


「は、はい! アニキ!」


ガイの叱咤が飛ぶ。


その姿は、

かつての胡散臭い商人ではなく、

完全に“師”のそれだった。


視線に気付いたガイは、

こちらを一瞥して笑みを浮かべる。


だが、

訓練を止めることはしない。


「アデム! ロブ!

体格の良さに頼るな!

身体に振り回されてんぞ!」


「身体に使われるんじゃねぇ、

身体を使うんだ!」


「はい! すんません!」

「わかりました!」


怒声を浴びながらも、

三人の表情に苦痛はない。


むしろ、

どこか楽しそうですらある。


その様子を眺めながら、

一真は、ふと遠い記憶を思い出していた。


もう何年も会っていない、

師の姿。


(……姫咲さん。

今頃、どうしてるんだろうな……)


◆ ◇ ◆


時と場所は変わり、ここは地球の何処か。


目の前に立つのは、

禍々しい瘴気を放つ“悪神”。


今代の闘神童子――

月城姫咲は、紅い仙気を全身に巡らせ、

それを拳へと集中させる。

挿絵(By みてみん)

仙気の流れは、

いっそ芸術的とすら言えるほど、

無駄がなく、滑らかだった。


悪神が、

瘴気を含んだ気を幾つも放つ。


「■■■■!」


だが姫咲は、

それらを紙一重でかわし、

あるいは手足で弾き飛ばす。


神甲天衣。


仙気による、防御の要。


そして、

一気に間合いへと踏み込み、

腰を落として拳を叩き込む。


「臥竜——崩拳!」


轟音。


仙気が悪神の内部で爆発し、

存在そのものを封殺した。


……周囲に、他の気配はない。


それを確認して、

姫咲はようやく息を吐いた。


「……ふぅ。

これで、この辺りはしばらく大丈夫ね」


しばらくして、

複数の人影が駆けつけてくる。


世界各地に存在する、

協力者たち。


時に戦い、

時に後始末を担う者たち。


その中の一人――

陰陽師の女性が、

姫咲に駆け寄る。


「姫咲さん!

今回もお疲れさまでした!」


姫咲は、

柔らかな笑みを浮かべて応じた。


「ありがとう。

貴方たちが助けてくれるお陰で、

私も思う存分、戦えるわ」


その言葉に、

女性は照れたように頬を染める。


「い、いえ!

姫咲さんにそう言ってもらえるなんて、光栄です!

この辺りの地形修復は、我々“逢魔”にお任せください!

式神を使って、可能な限り修復します!」


逢魔――

正式名称、『国営陰陽機関逢魔』。


悪神とは別の脅威、

“妖魔”を討ち封じる、現代を生きる陰陽師集団。


彼らもまた、

封神の徒の協力者だった。


女性は、

姫咲を気遣うように続ける。


「姫咲さんは、

一度セーフティハウスに戻って、休んでください。

最近、ほとんど休んでいないと聞きました」


「休息も、大切な任務の一環です」


一呼吸置き、

女性は言葉を重ねた。


「その間は、

源十郎さんが穴を埋めると仰っています」


その名を聞き、

姫咲ははっきりと安堵の表情を浮かべた。


古賀源十郎。


“七代目闘神童子”。


姫咲の師匠。


跡目を譲った今もなお、

姫咲と互角の実力を持つ男。


片腕と片目を失ってなお――である。

挿絵(By みてみん)

その人物が控えている。


それは、

何より心強い支えだった。


姫咲は肩の力を抜き、

女性へと告げる。


「先生が来てくれるなら、安心ね。

……ありがとう。

お言葉に甘えて、少し休ませてもらいます」


「後は、お願いね」


その言葉に、

女性は満面の笑みで答えた。


「はい!

任せてください!」


姫咲は軽く頭を下げ、

最寄りのセーフティハウスへと歩き出す。


実に一週間ぶりの、

まともな休息だった。


よろしければ、ブックマークや評価をお願いします。

感想もいただけますと、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
私の大好きな姫咲様、イラストも素敵です(*゜▽゜*) 七代目も、凄そうですね。 続きを正座して待ちます♪───O(≧∇≦)O────♪
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ