第218撃:転移の先、翠霊の気配
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プロローグを除けば、過去一長い話になっていましました……。
上手く区切れなくて……。
未熟です。
晶たち三人も紅茶を飲み終えたのを確認すると、ロイは椅子から腰を上げる。
「さて、忙しない事だが、早速動くとしよう。
話を聞く限り、あまり悠長にはしてられなさそうだしな」
四人もロイに続き立ち上がる。
オルディンがロイに向かい、問いを投げかける。
「出発する前に、どこかでちゃんとした食料を調達した方が良いかもしれんのう。
儂らが持ってきた食料は、ここに着くまでに底をついたからの。
確かお主のところには、簡単な保存食しか置いてなかったじゃろ?」
オルディンの提案に、しかしロイは笑みを浮かべて否定する。
「いや、保存食が少々あれば十分だ。
翠霊郷まで持ちさえすれば、あとはそこは恵みの宝庫だ。
今のエルフェリアでは貴重な場所だな」
ロイはそうは言うが、オルディンはいまいち納得がいかない様子。
頭にある不安要素をロイへと告げた。
「まあ、エルフは自然とともに生きることを好むからのう。
じゃが、問題はそこにたどり着くまで、食料が持つかじゃろうが。
翠霊郷が何処にあるかは知らんが、この近場ではあるまい?」
ロイは保存食を用意しながらも、意味深な答えを投げる。
「ああ。確かにこの近くじゃない。
近くじゃないが、さほど時間は掛からないさ」
「?」
意味がわからず首を傾げるオルディンをよそに、ロイは晶へと保存食を渡す。
「晶くん、これをバッグにしまってくれるかい?」
晶は慌てて肩からバッグを下ろすと、保存食を受け取り、バッグに入れ始める。
「あ、はい!」
そこでふと、晶はマジックバッグの値段を思い出した。
「あ!そうだ!このマジックバッグの値段……。
ロイさん……このバッグの本当の値段、リュミナさんから聞きました……」
その言葉を聞いたロイは、イタズラじみた表情を浮かべる。
「おや?聞いてしまったか。
まあ、リュミナちゃんなら知ってるだろうな」
晶はロイに申し訳なさそうに告げる。
「聖金貨100枚……大金貨にして1000枚……。
ボクたちが実際に払ったのはその十分の一です……。
なんでそこまでしてくれるんですか……?」
ロイはそんな晶を見て、優しい声色で言葉を返した。
「何でだろうな。そうするべきだと思った……としか言えないな。
君達は、この世界にとって必要な存在なんだと、あの時そう感じたんだ。
……今回の件を聞いて、その時の判断は間違っていなかったと思ったよ」
そう言って。
「さっきも言った通り、エルフェリアの事情に巻き込んでしまったことは申し訳ないけどね」
そう締めくくった。
そこで紫音がしびれを切らしたように、ロイへと問いかける。
「ロイさん、さっきオルディンさんに言ってたことってどういう事なんだ?」
ロイは保存食をバッグに詰め終わると、紫音の方に向き直り、懐から何かを取り出す。
それを見て声を出したのは柚葉。
「それは……魔石……ですか?」
ロイは柚葉に笑顔を向けると、肯定を返す。
「ああ。その通りだ」
すると、様子を見ていたオルディンが身を乗り出して、ロイの手の中の魔石を凝視する。
「むむっ?……何か不思議な加工をされておるのう……。
………魔法が込めてあるように見えるが……」
オルディンの言葉にロイは頷き、その魔石が何であるかを語る。
「この魔石に込められている魔法はな……"転移"魔法だ。
この町から数時間ほど歩いた場所にある、深い森の奥
。そこに転移魔法陣が設置されている。
そこでこの魔石を使えば、俺みたいに魔法を使えないものでも、転移魔法を発動できる」
その言葉を聞いたオルディンは驚きの声を漏らす。
「……なんと。お主、そんな物まで持っておったのか。
転移魔法といえば、時空間に属する、かなりの高等魔法じゃ。
魔族やハイエルフたちでも、そう使えるものは多くはないじゃろ。
……それはシルヴァが作ったものなのか?
だとしたら、ワシが想像していたよりも遥かに凄まじい魔法の腕じゃ。
文字通り、ハイエルフレベルの」
しかしロイは首を横に振り、オルディンの考えを否定した。
「いや、作ったのはシルヴァじゃない。
流石にシルヴァでも、時空間の魔法は使えないさ。
シルヴァが使うのは、あくまでも攻撃、補助系の魔法だ。
この魔石は、シルヴァの知り合いの二人のハイエルフが作ってくれたそうだ。
それを、シルヴァが友愛の証として、俺にくれたんだよ。
いつでも酒を飲みに来いっていってな」
そう言って苦笑いを浮かべて続ける。
「もっとも、使用回数に制限はあるけどな」
晶は再び申し訳ないと言った表情で、ロイに問いかける。
「そんな貴重なものを……。
いいんですか? ボクたちのために使ってしまって。
歩いていったほうが良いんじゃ……」
ロイは優しく微笑みながらも、晶の提案を断る。
「いや、むしろ今こそ使うべきだ。
君たちは早く翠霊郷へと向かったほうが良い」
その言葉には、晶、紫音、柚葉の誰も反論はできなかった。
晶の中にエルフェリーナの魂が宿っていると分かった今、あまり悠長にしているべきではない。
三人の沈黙を見て、ロイはオルディンへと語りかける。
「さあ、準備は終わった。他に何もなければ、早速向かおう」
オルディンは頷き返し、晶達へと問いかける。
「うむ! なにもない。……お主たちも良いな?」
晶達は申し訳ないという思いを抱えつつも、頷きで返した。
五人は荷物を担ぎ、店を出る。
ロイが店に鍵をかけて、エルフェリア文字で営業中と書かれているプレートを裏返した。
そしてロイは四人を順に見て、一言声をかけて歩き出した。
「よし、じゃあ行こうか」
四人は頷き、ロイの後に続く。
一行はロイの先導のもと、村を出て北へと進む。
道中気になったのは、モンスターの強さ。
流石に帰らずの森ほどの凶悪なモンスターは出ないが、
エルサリオン周辺より遥かに危険なモンスターが出現するようになった。
シャドウウルフ。
黒灰色の体毛を持つ、大型の狼。
単体での強さも馬鹿には出来ないが、これらは必ず群れで現れる。
油断は出来ない魔獣だ。
ヴェノムイーター。
様々な毒を喰らい、自らの毒嚢に貯めておく、熊のようなモンスター。
身体のいたるところに、大小様々な半透明の毒袋が付いており、中では毒が蠢いている。
森に入ってからも厄介なモンスターは多くいた。
デュアルホルン・スタッグ。
大型の鹿のような魔獣。
二本の角に、それぞれ別の属性の魔力を宿す、魔法を使う魔獣。
どの属性を宿しているかは、個体によって異なるという。
総合的にはブレードブルのほうが危険度が高いが、このモンスターもかなりの危険度を誇る。
これ以外にも、多様なモンスターを晶達はその目で見た。
だが、晶たちが驚いたのはモンスターにではない。
ロイとオルディンの強さにだ。
翠霊郷へと向かう最中は、ほとんどの敵をロイとオルディンの二人で倒してのけたのだ。
ロイは腰から下げた、かつてオルディンに作ってもらったというロングソードを使い、
慣れた動きで敵を倒してゆく。
オルディンも巨大な戦斧を豪快に振るい、敵を薙ぎ払っていく。
二人とも、とても現役を引退した身だとは思えない。
晶たち三人の心に、感嘆の感情が浮かび上がる。
(凄い……ロイさんも……オルディンさんも)
(すげぇ……これが本当に現役を退いた人たちの動きかよ……)
(……これがトリニティ・レギオンのうちの二人……。
オルディンさん、私達を試しの洞窟へと連れて行ってくれた時は、全然力を出していなかったんだ)
オルディンが嬉しそうに、ロイへと言葉を投げかける。
「店に引きこもっておった割には、まだまだ動けとるのう。
今でも現役でいけるのではないか?」
ロイも笑みを浮かべて言葉を返す。
「よせよせ。大分鈍っているさ。
正直、自分でもここまで衰えているとは思わなかった。
……少し鍛え直すか」
二人の会話に、三人は更に驚きを深める。
三人は修行のためだと言って、自分達も戦うと申し出たが、オルディンがそれを拒否。
「いや、ロイの元へとたどり着くまでとは話が違う。
これからお主たちは、シルヴァの元で修練を積むことになるんじゃ。
それまでは力を温存しておけ」
そんなやり取りをしながらも、五人は森の奥へと進み、遂に魔法陣の元へとたどり着いた。
「……ここだ。
ここでこの魔石を使えば、翠霊郷の近くに設置してある魔法陣まで行くことが出来る」
遂に来た。
晶たちが緊張を深めていると、オルディンが後方から声をかけてきた。
「……ワシはここまでじゃ。
ワシがついていくと、面倒なことになるでのう」
晶たちは振り返り、悲しみの目をオルディンへと向ける。
「……オルディンさん……」
しかしオルディンは、湿っぽい空気を吹き飛ばすかのように豪快に笑った。
「カッカッカ! そんな顔をするでない。
これが今生の別れというわけではないんじゃ。
すぐにまた会える」
そう言って優しい笑みを浮かべて、言葉を続ける。
「……油断はするでないぞ。
他の場所よりは安全だろうという憶測にすぎんのじゃ。
何があっても、対処できるよう警戒は怠るな」
そして最後に――
「さあ!行って来い!再会を楽しみにしとるぞ」
三人は涙をこらえ、声を揃えて返事をする。
「「「はい! 行ってきます!」」」
優しく頷くオルディンを見届けたロイは、魔石を取り出し力ある言葉を呟く。
「放魔!」
瞬間、輝きを失っていた魔法陣が光り輝く。
翠霊郷への道が開いたのだ。
ロイはオルディンに一言投げかける。
「では送ってくる。
顔つなぎと説明を終えたらすぐに戻る」
苦笑を浮かべたオルディンを確認すると、ロイは晶たち三人に声をかけて、魔法陣へと踏み出した。
「さあ、俺についてくるんだ」
ロイの身体が魔法陣に収まった瞬間、その身体は光の粒子に包まれて消え去った。
晶たち三人も、もう一度だけオルディンへと目礼をして、魔法陣へと身体を滑らせる。
次の瞬間、三人の身体もその場から消えた。
静寂の森に残されたオルディンは、一人ポツリと呟いた。
「やれやれ、またワシ一人待ちぼうけか」
◆ ◇ ◆
晶たち三人が目を開けると、そこは先程までとは違う、緑鮮やかな森の中だった。
詳しいことは何も知らない三人にも分かる。
――この森は、今まで見てきた森とは違う――
柚葉がポツリと呟く。
「……空気が……濃い……?」
その呟きに、ロイが答えを返した。
「空気というよりは、大気中の魔力――マナが濃いんだ。
この場所には、精霊が多く棲むからね」
その言葉に、次は晶が言葉を漏らした。
「これが……マナ……。ボクにも分かる……」
言葉には出さないが、紫音もどうやら何かを感じている様子だ。
初めて感じる感覚に呆けている三人を見つめ、ロイは行動を促す声をかけようとした。
だが、ロイが言葉を発する前に、森の先から声が投げかけられる。
「ロイ……?
お前ロイか?」
四人が声の方に視線を向けると、そこには銀髪の男性エルフが佇んでいた。
そのエルフを見て、ロイが驚きの表情で呟く。
「……シルヴァ……」
目の前に立っていたのは四人の尋ね人、シルヴァその人だった。
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