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第216撃:違和感の名を探して

最近遅くなってしまってばかりで、申し訳ありません。

待っていてくださる方、本当に有難うございます。

ロイは表情に笑みを浮かべたまま、オルディンに問いかける。


「お前の唐突な行動には慣れっこなつもりだったがねぇ。

今日はまた、どういう風の吹き回しだい?」


 そのロイの問いにオルディンが答える前に、店の中に晶たちが入ってくる。


 その姿を見て、ロイがオルディンに言葉を漏らす。


「おや? 今日はお連れさんがいるのか。お嬢さんが三人も。

お前がオラクルやリュミナ以外を連れてくるのは珍しいねぇ」


 柔らかな笑みを浮かべるロイに、晶が挨拶をした。


「あの……ロイさん、お久しぶりです」


 ロイは一瞬キョトンとして、晶へと疑問を投げる。


「お久しぶりかい? ……すまないねぇ。

どうも儂の記憶には、お嬢さんのことは無いようだ。

何処かで会ったのかい?」


 そう言ったが、ロイの中には言葉にできない、懐かしさのようなものが浮かんでいた。


(……なんだ? 俺はこの子を知っている……?)


 晶は困ったような表情を浮かべ、名を名乗ろうと思った。

しかし、前回会った時は、自分は名を名乗っていなかったことを思い出す。


「あ……えっと……」


「どうしたんだい?」


 ロイの優しい問いかけに、晶は説明で返した。


「あの……ボク、以前一真さんとここに寄らせてもらって……。

草薙……一真さんです……」


 ロイは一真の名前を聞き、目を見開いた。


 草薙一真。


 忘れるわけがない。あの強烈な印象の男を。


 エルサリオンに召喚されながら、追放された勇者。


 初めて会った時は、何処か得体が知れないと思った。


 だが話している内に、不思議とこの人物は信じられると感じた。


 そして自分の宝である、オラクルとの絆のトークンすらも預けた相手。


 一真の事を思い出すと同時に、一真とともにいた一人の少年のことも思い出す。


 一見すると、女の子のような男の子。


 その子からも、とても不思議な感覚を感じた記憶がある。


 とても温かく、何かに包まれ、守られているような感覚。


 目の前の少女から……同じ感覚が――いや、更に強い感覚が伝わってくる。


 ロイは驚きに声を漏らす。


「草薙一真……君はまさか……あの時、一真さんと一緒にいた子かい?」


 晶は複雑な表情を浮かべて頷きを返す。


「はい。ボクの名前は晶――水無瀬晶と言います。

その節はお世話になりました。

あの……前回お会いした時は、自己紹介をしないでごめんなさい……」


 晶の言葉はちゃんと耳に届いている。


 しかし、ロイはすぐに反応を返すことが出来なかった。


(なんだ? この異様な変化は……。

彼らと別れてから、そこまで長い時が流れたわけではない。

なのに、この異常な程の変わりよう……。一体何が……)


 思考に耽けるロイに、晶がおずおずと声をかける。


「あの……ロイさん?」


 その声にロイはハッとして、慌てて返事を返す。


「あ……ああ。すまないねぇ。少し考え事をしていてね」


 そう言って改めて晶を見て言葉を続ける。


「……晶くん……だね。

そう言えば儂も、ちゃんとした自己紹介はしていなかったね。

儂の名前はロイだ。よろしく頼むよ、晶くん」


 ロイの言葉に、晶はホッとしてようやく肩から力を抜いた。


「はい、よろしくお願いします。ロイさん」


 そんな晶達のやり取りを黙って見ていた紫音が口を開く。


「あのー……そろそろオレたちの事も話していいか?」


 その言葉に返したのはオルディンだった。


「ふむ。ひとまず自己紹介と、事情の説明じゃな。

ロイ! 茶くらい出さんか!」


 ロイはオルディンの態度に苦笑いを浮かべつつも、茶の用意を始める。


「ほっほっ……説明してくれるなら助かるよ」


 ロイは全員分の茶を入れると、店の奥から足りない分の椅子を用意してきた。


 それらに腰掛けるよう促すと、自らも椅子へと座る。


 四人が茶を飲み喉を潤したことを確認して、ロイはオルディンへと問いを投げかける。


「さて、一体どういうことか説明してくれるかい? 流石に頭が追いつかないんでねぇ」


 しかしそんなロイの言葉を聞き、オルディンはしかめっ面になる。


「その前にロイ、お主その喋り方はなんじゃ? 気持ち悪いのう。

昔みたいに普通に喋らんか。

前に会った時は、普通に喋っとったじゃろうが」


 その言葉にロイは苦笑を浮かべて答えを返す。


「気持ち悪いとは酷いねぇ。

……儂ももういい歳だ。

少しは落ち着きを持とうかと思ってね」


 オルディンは更に顔をしかめて言葉を落とす。


「かぁ~! 何が歳じゃ! 儂ら三人の中で、一番の若造のくせしおってからに」


 その言葉に今度はロイが苦笑を深める。


「エルフやドワーフと、人間の時間の感覚を同じに言われてもねぇ。

それに、さっきはお前も、儂のことを老いぼれと言っていたじゃないか?」


 そう言ってイタズラじみた表情を浮かべるロイ。


 オルディンはバツが悪そうにそっぽを向くと、ぶっきらぼうに言葉を吐き捨てた。


「あれは……その……あれじゃ。

その場のノリというやつじゃな。

……ええい! いいから昔みたいに話さんか! 説明しようにも、お主がそんなだと調子が出んわい!」


 ロイはやれやれと言った様子で一つため息を付くと、それまでとは口調が変わった。


「ふぅ。わかった……これでいいか?」


 その様子を見て、ようやくオルディンは満足そうに頷いた。


「うむ! それで良い!」


 それから五人は、改めて自己紹介を行い、晶たちは軽くこれまでのことを話した。

 黙って聞いていたロイが、頃合いを見て口を挟む。


「……そうか。君達が脱走勇者の」


 ロイは紫音と柚葉を交互に見て、言葉を続ける。


「この世界の住人の俺が言っても、軽く聞こえるかもしれないが、災難だったな。

この世界を代表すると言っては傲慢かもしれないが、謝らせてくれ。

この世界の問題に巻き込んだことを。

すまなかった」


 紫音と柚葉は慌てて手を振り言葉を返す。


「い、いや! ロイさんが謝ることじゃないよ!

 前にも言った事なんだけどさ、悪いのは魔王軍の過激派だ」


「紫音の言うとおりです。

ロイさんが気にすることではありません。

むしろ、気を使わせてしまって……」


 二人のその様子を見て、ロイは優しい笑みを浮かべる。


(良い子たちだ。

それだけに、やはり申し訳ないという気持ちは拭えないな)


 ロイは心を痛めつつも、気になっていたことをオルディンへと聞いた。


「さて、とりあえず説明してくれるか? 

何でお前がこの子達と共に行動をしているのか。

一真さんの姿が見えないが、彼はどうしたのか。

晶くんの、この変化は一体なんなのか。

そして……何を目的としてここに来たのかを」


 オルディンはカップに残っていた茶を一気に飲み干すと、表情を引き締めて言葉を投げた。


「少し長くなるぞ。それに、聞いたら後戻りは出来ん」


 その言葉にロイは苦笑を浮かべて返す。


「最初から後戻りなんてさせるつもり無いんだろ? ……いいから話せ」


 その言葉を皮切りに、晶たち四人はこれまでのことを話し始めたのだった。


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