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第215撃:晶の初陣 ~受け継がれる勇気~

また遅くなってしまいました!

申し訳ありません!


晶の新たな一歩。

——皆と共に歩むために——


画像はあの人の現在と、若かりし頃の姿です。

オルディンは扉を開き外へ出ようとした瞬間、一瞬立ち止まり考えた。


踵を返して工房へと歩いていくと、幾つもの道具や素材。

それと武器や薬品、食料などを両手いっぱいに持って、晶へと問いかける。


「晶、すまんがこれらをマジックバッグの中に入れておいてもらえんか?」


「あ、はい!」


晶は慌ててバッグを肩から下ろすと、オルディンと共に荷物をしまい込んでいく。


「ふう、これでいいじゃろ。

重要な機材や素材は詰め込んだ。……万が一に備えての」


——万が一。魔王軍の襲撃。


オルディンは場合によっては、この工房を破棄するつもりでいるのだろう。


三人の顔に痛みが走る。


それを見たオルディンは、破顔して声を上げた。


「ほれほれ、そんな顔をするでない。

言ったじゃろ? ワシが深入りしたことじゃ。

ワシの意思じゃよ。お主たちが気にすることではない」


そう言うとオルディンは、三人の背中をバシンと叩いた。


晶と柚葉は蹲り、紫音は痛みに声を上げる。


「「~~っ」」


「痛ってぇぇぇぇっ!」


それを見たオルディンは、豪快に笑いながら建物の外へと歩いていく。


「カッカッカ! 鍛え方が足りんわい!」


三人は涙目になりながらも、その顔には笑顔が浮かんでいた。


オルディンの不器用な優しさに励まされて。


 *


四人が工房の外へ出ると、外は既に明るみ始めていた。


辺りには身を隠すような場所はあまり無いが、それでもオルディンは周囲の警戒を強める。


「……ひとまずはおかしな気配はないのう。

と言っても、ワシはロイやオラクルほど気配を探るのは得意じゃないからのう。

お主たちも警戒は強めておくんじゃぞ?」


「はい! 分かりました」


「おう! 分かってる!」


「はい。警戒を強めます」


三人の返事を聞き、オルディンは頷くと歩き始める。


あとに続く三人に、オルディンの言葉が背中越しに聞こえてくる。


「少々動くのが遅くなってしまったわい。

大事を取って、夜が明ける前に出るべきじゃったな。

……少し飛ばすぞい」


そう言ってオルディンは歩を早めた。


道中、何度もモンスターに出くわしたが、どのモンスターも大した強さではない。


試しの洞窟へと向かうときとは違い、オルディンは積極的に紫音や柚葉に戦わせた。


「たとえ格下の相手でも油断はするでないぞ?

何が起きるのか分からんのが戦いじゃ。

過度に神経をすり減らすのはイカンが、程よい緊張感は保っておくんじゃぞ。

その感覚を、自身に刻みつけることじゃ」


 *


四人がロイの住む村に向かう道中、オルディンは驚きの行動に出た。


晶に自らが作った槍を持たせたのだ。


視界の端には一匹のスライム。


「晶、お主一人でこのスライムを倒してみせい」


唐突に放たれたオルディンの言葉に、紫音と柚葉の驚きの声が上がる。


「なっ!? いきなり何言ってんだよ、オルディンさん!」


「そうです! いくらスライムとは言え、危険すぎます!」


しかしオルディンは自らの考えを変えはしなかった。


「分かっておるじゃないか。

相手はスライムじゃ。

ワシらが見守っている限り、滅多なことは起きん」


そう言うとオルディンは、晶へと真剣な視線を向けて声をかける。


「晶、これから先は、お主たちの危険はどんどん高まっていくじゃろう。

何かあった時、誰かが側にいてくれるとも限らん。

これからは、お主も少しずつ戦うことに慣れていかねばならん。

……ワシが側に居てやれる間に、少しでも経験を積んでおけ」


そう言うとオルディンは、表情を柔らかくして言葉を続ける。


「お主がスキルを授かれんのは仕方がない。

じゃが、それを嘆いてばかりでは意味がない。

スキルがダメでも、アーツがある

。お主もこれからは、紫音や柚葉と戦いを学んでゆくのじゃ」


オルディンの顔に浮かぶのは、深い思いやり。


オルディンは本気で、晶たち三人のことを思いやっているのだ。


それを感じ取った紫音と柚葉は、それ以上何も言えなくなった。


スライムはこちらに気づいてはいない。


今なら先制攻撃を仕掛けられる。


晶の中に、恐怖が湧き上がる。


(……怖い……でも……!)


この世界に来て、ずっと一真が守ってくれた。


一真に出会う前、地球にいた頃は、紫音と柚葉が守ってくれた。


亡くなった家族も、ずっと自分を守ってくれていた。


自分はいつも誰かに守られてきた。


——でも。


(守られてるだけじゃ……ダメなんだ。

ボクも強くならないと……。

紫音や柚葉の……一真さんの力になるために……っ!)


晶は槍を握りしめて、力強く呟いた。


「……ボク、やります!」


紫音と柚葉が息を呑む音が聞こえる。


しかしオルディンだけは、頷きで返した。


晶は渇いた喉を湿らせるように、唾液を嚥下する。


それでもすぐに喉は渇いて張り付いた。


相手はただのスライム。


帰らずの森にいた、グランスライムとは全くの別物。


それでも晶の手は震えが止まらない。


今まで戦った経験はおろか、喧嘩をした経験すらない。


そんな自分が、モンスターとは言え、生き物の命を奪おうとしている。


心が震える。


逃げ出したいと泣き叫ぶ。


それでも晶は、無理やり笑みを浮かべた。


思い浮かべたのは一真の笑顔。


晶は帰らずの森で、初めて一真がグランスライムと戦った時に呟いた言葉の真似をした。


「よ、よし。じゃ、ファーストバトルってやつだ。軽くやってみっか……」


かつて一真が呟いた言葉と全く同じ言葉。


その言葉を呟いただけで、不思議と勇気が湧いて来る気がした。


三人が固唾を呑んで見守る中、晶は一真の戦いを思い出す。


『核が弱点ってのは……お約束だよな』


目の前の半透明のスライムの中心にも、赤い核が見える。


晶は覚悟を決めて、狙いを定める。


(一真さん……一真さん……一真さん! ボクに……勇気を貸してください!)


ふと、晶の耳に一真の声が聞こえた気がした。


『俺の拳にスキルはいらん。必要なのは覚悟だけだ』


その言葉が聞こえたと思った瞬間、晶は槍をスライムの核に目がけ、突き出していた。


「やぁぁぁぁぁっ!」


——その槍は、見事にスライムの身体を貫いて、核を打ち砕いていた。


『ドゥン!』


小さな音を立てて、スライムの身体は液状化して、地面へと染み込んでいった。


残されたのは、小さくくすんだ魔石一つ。


オルディンはその魔石を拾い上げると、大切そうに晶へと手渡した。


「ようやった! ほれ、これがお主が初めて獲った魔石じゃ」


晶はまだ震えが残る手で、その魔石を受け取り呟いた。


「ボクが獲った……魔石……」


次の瞬間、紫音と柚葉が晶へと抱きついてきた。


「やったじゃねーか、晶!」


「うん! 凄かったよ、晶くん!」


自らのことのように喜んでいる紫音と柚葉を見て、ようやく晶の手の震えが止まった。


「二人とも……ありがとう」


晶はオルディンへと向き直り、再び感謝を口にする。


「オルディンさんも、ありがとうございます」


オルディンは言葉は返さなかったが、代わりに晶の頭をワシワシと撫で回した。


その手は一見乱暴に思えたが、不思議と心が温まった。


三人の興奮が落ち着いた頃を見計らって、オルディンは口を開く。


「よし、先を急ぐとするかの。

道中可能であれば、晶にも戦闘に参加してもらうぞい」


その言葉に三人は頷き、目的地へと足を早めた。


 *


目的の村まではそれなりに距離があり、今回は帰らずの森を迂回した。


そのために時間は多くかかり、村へと着いたのは、二日と半日を過ぎた頃だった。


オルディンが村の門番に一声かけると、門番は慌てて道を開ける。


「ふう、ようやっと着いたわい。早速、ロイの店へと行くとするかの」


そう言って歩き出すオルディンの後に続く三人。


紫音と柚葉は、初めて見る村の風景に興味津々だった。


晶は、かつて一真とともに訪れた村に、懐かしい思いを馳せる。


四人は少し歩いて、"アイテムショップ"の看板が掛けられている店の前へと着いた。


「よし、ここじゃ」


そう言ってオルディンは乱暴に店のドアを叩くと、返事も確認しないで店へと入った。


「ロイ! ワシじゃ! 久しいのう! 元気にしとったか? この老いぼれめ! カッカッカ!」


そう豪快に声を上げるオルディンを、店の店主——ロイは軽く目を見開いて出迎えた。


「オルディン……ホッホッホ。これはまた、懐かしい顔が来たねぇ」


ロイはそう言って、柔らかな笑みを浮かべた。

挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
ロイの若い頃と今、イラストも最高ーーーーーーー!!
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