第214撃:翠霊郷への道標
投稿が遅くなっていましました。
待っていたくださる方、ごめんさない。
そして、ワタクシの作品をいつも支えてくださり、感謝します。
唐突に放たれたオルディンの言葉に、晶が問いを飛ばす。
「オルディンさん、考えってなんですか?」
しかしオルディンはすぐには答えを返してこない。
だが、その眉間に寄せられた皺を見るに、あまりいい感情は抱いていないのだろう。
やがて、オルディンが重い口を開く。
「……お主達をひとまず、エルフの里へと逃がそうと思う」
エルフの里と聞き興味をそそられたのか、柚葉は僅かに声を弾ませて問いを飛ばす。
「エルフの里ですか? それって、リュミナさんやオラクルさんの故郷の?」
オルディンは柚葉の問いに、首を横に振って答える。
「いや、そことは別じゃな。エルフは非常に排他的なんじゃ。
自分達の身近な者達以外には、心を開かん根暗者が多い。
そんなわけだから、大概は近しい者達で里を作る。
この世界には、そんなエルフの里が幾つかあるんじゃよ」
根暗者という言葉に、個人的な感情が強くこもっているように感じて、三人は苦笑を漏らす。
オルディンの言葉は続く。
「お主たちは、そんなエルフの里の一つ——翠霊郷へと避難せい。
そこならば、下手な場所に行くよりも安全じゃ」
オルディンはそう言ったが、三人は不安を拭えなかった。
紫音が懸念を口にする。
「下手な場所より安全って言ってもさ、普通のエルフって排他的なんだろ?
リュミナさんやオラクルさんを見てると実感わかないけど。
……行ってもオレ達は、里に入れてもらえないんじゃ?」
もっともな疑問であったが、オルディンはにやりと笑って答えを返す。
「言ったじゃろ? 考えがあると。
なぜオラクル達の故郷ではなく、翠霊郷にしたか。
そこには、ちょっとした心当たりがあるんじゃ」
柚葉が疑問の声を出す。
「心当たりですか? 一体どんな?」
オルディンは自らの長い髭を撫でながら答えを返した。
「うむ。心当たりとは言っても、ワシ自身のことではない。
その翠霊郷にはな、ロイの知り合いのエルフがおるらしい」
ロイの名前に反応したのは晶。
さほど長い時間は経っていないが、随分と懐かしく感じる顔を思い浮かべて、問いかける。
「ロイさんの知り合いですか? 一体どんな人なんだろう……」
オルディンは気まずそうに肩を竦めると、普段よりも僅かに大きな声で返してくる。
「むう……実はワシも一度も会ったことはない!」
そう言って偉そうにふんぞり返る。
胸を張って言うことではない。
三人は呆れ顔を見せるが、オルディンは構わず続ける。
「直接会ったことはないが、ロイの奴から話は聞いておる。
そやつは、エルフの中ではかなりの変わり者らしい」
そう言って、昔を思い出しながら語る。
「……昔……ワシたちがまだトリニティ・レギオンと呼ばれておった頃じゃ。
ワシらはとある戦争に参加しておっての。
ちょうどワシら三人はバラバラに行動しておったんじゃが……その時に、ロイが酷い怪我を負ったエルフを助けたらしい。
それをきっかけに、そのエルフと仲良くなったらしくての。
それ以降、そのエルフとロイはちょくちょく会って、酒を飲み交わす仲となったらしいんじゃ」
つまりは翠霊郷にいるという、そのエルフを頼れということらしい。
紫音が不安そうな声を出す。
「なんか色々とガバガバな気がするんだけど……。
この場の誰も会ったこともないのに、ロイさんの知り合いってだけで受け入れてもらえるのか?
それに、何でそこなら安全なんだ?オルディンさん」
オルディンは鼻を鳴らして答えを返す。
「ふん。ワシらだけでは無理じゃろうな。
というより、ワシがついていけば、余計に話は拗れる。
ドワーフとエルフは、あまり気が合わん」
「だから、先ずはロイの奴を引っ張り出す!
あやつも田舎に籠りっぱなしでは鈍るじゃろう。
これもいい機会じゃ、たまには身体を動かせばええんじゃ」
オルディンは三人を順に見ると、僅かに寂しそうに言葉を落とす。
「……そんな訳で、これからロイに会いに行って、その後はロイにお主たちを任せる。
そこからは、あやつに案内してもらえ。
監視や尾行にさえ気をつければ、まさか人間がエルフの里に逃げ込んだとは思われまい」
オルディンの寂しそうな声を聞き、三人の心にも寂寥感が湧き上がる。
誰かがポツリと言葉を呟く。
「……オルディンさん……」
その声にオルディンは誤魔化すように捲し立てる。
「そ、それだけではないぞい!
そのエルフがな、かなりの実力者らしい。
翠霊郷に身を潜めている間に、そのエルフから鍛えてもらえ!」
その言葉を聞き、柚葉が疑問の声を出す。
「エルフの方に鍛えていただくんですか?
確か、エルフは魔法に長けているって……。
もし鍛えていただけるなら私は助かりますが、剣士である紫音は……」
魔法タイプの人物を師とするには、剣士である紫音は相性が悪いのではないか。柚葉はそう懸念している。
そしてその気持ちは紫音も同じだった。
だが、オルディンは笑い声を上げて、その不安を吹き飛ばす。
「カッカッカ!心配いらんわい。
確かにエルフは魔法に長けた者が多い。
魔族の次にハイエルフ。
その次がエルフと言ったところじゃろうな。
しかしな、魔法が得意だからといって、剣での戦いが苦手とは限らんじゃろ?
現に、オラクルも細剣を使うしの」
そう言って一呼吸おき、続きを話す。
「聞く所によると、そのエルフは魔法剣士らしいのじゃ。
魔力を巧みに操り、剣に魔法を込めて戦う。
……誰かに似とりゃせんかの?」
そう言ってニヤリと紫音に視線を向ける。
紫音は思わず声を漏らした。
「あ……」
——紫電ノ奏。
その武器を得てから、紫音は刀に魔力を込めて、その魔力刀を振るってきた。
もしオルディンの話が本当なら、そのエルフに師事することは、紫音にとっても大きな意味がある。
オルディンは優しくも厳しい表情を浮かべて話しかける。
「お主達は試しの洞窟でスキル進化を果たした。
オドの量も増えておる。
……じゃがな、力が増えたからこそ危険なんじゃ。
お主たちは、圧倒的に経験が足りなすぎる。
今のお主たちは、子供が竜殺しの剣を持っておるようなものじゃ」
オルディンは僅かな沈黙の後、想いを込めて続ける。
「お主たちは、そこで力の使い方を磨け。
これから訪れるであろう、時に残酷で、時に無慈悲な戦いでも、生き残れるように。
一真の力になりたければ、先ずは自らを生かせる力を身につけるんじゃ」
オルディンの言葉には、三人を心から思いやる温かさが籠もっていた。
そんな声を受けて、三人は互いに頷き合う。
晶が三人を代表して声を出す。
「オルディンさん、ボクたち、翠霊郷へと行ってみます」
その言葉にオルディンは満足そうに一つ頷き、言葉を落とす。
「うむ! それでええ。
一真と再会するのは少し先に伸びてしまうがの。
しかしその分、再会した時に一真を驚かせることが出来るようになっておくのじゃ」
そう言うとオルディンは立ち上がり、壁にかかっていた巨斧を取って肩に担ぐ。
「さて、善は急げじゃ。早速ロイの元へと行こうかの!」
三人は頷き、オルディンへと続いた。
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