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第201撃:世界を繋ぐ禁忌の仮説

拙作を読んでくださり感謝です。

皆様の応援があるから、続けられています。

オラクルは、一真の目をまっすぐに見据えて告げた。


「……奴らの目的から先に言おう。

魔王軍過激派――いや、そのトップである黒炎公グラウザーンの目的だ」


一瞬の沈黙。


「……それは――邪神ゼルグノスの復活だ」


あまりにも唐突で、あまりにも重い言葉だった。


その言葉に、最も強く反応したのはリュミナだった。


「ゼルグノスの……復活!?

そ、そんな……!

そんなことしたら、どうなるか……!」


声が震える。


邪神ゼルグノス。

エルフェリアに生きる者なら、誰もが知る禁忌の名だ。


千年前、世界を滅ぼしかけ、

魔王と女神の命を代価にして、ようやく封じられた存在。


その復活が意味するものを、

エルフェリアの住人であるリュミナが理解できないはずがなかった。


ふと、何かに気づいたように、リュミナがオラクルを見る。


「……待って。

お姉ちゃん……どうして勇者召喚が、邪神の復活に繋がるの?」


オラクルは、リュミナと一真を順に見て、小さく息を吐いた。


「二人とも、邪神の封印については知っているな?」


二人は同時に頷く。


一真が記憶を辿りながら口を開いた。


「千年前の魔王……ダンダリオンと、生命の女神エルフェリーナ。

その二柱が、自らの命を使って邪神を封印した。

……その結果、エルフェリーナが司っていた“癒やしの力”は、この世界から失われた」


オラクルは静かに頷く。


「ああ、その通りだ。

……では、なぜ勇者召喚に繋がるのか」


一拍、置いて。


「エルフェリーナの肉体は滅んだ。

だが、魂までは滅んでいない可能性が高い」


空気が張り詰める。


「そして――

その魂は世界を渡り、貴方達の世界……“地球”へと渡った可能性がある」


リュミナは息を呑み、言葉を失った。


オラクルは淡々と続ける。


「邪神の封印を完全に解除するには、二つの力が必要になる。

魔王の力と――エルフェリーナの力だ」


その言葉が落ちた瞬間、沈黙が部屋を支配した。


一真も驚きはした。

だが、取り乱すことはなかった。


紫音と柚葉から、

魔王軍過激派が“癒やしの力を持つ存在”を探しているらしい、

という話は既に聞いている。


癒やしの力の先に、過激派の真の目的がある――

そう考えていた。


まさか、それが邪神復活という、最悪の結論に繋がるとは思っていなかったが。


一真は静かに口を開いた。


「……いくつか聞きたい」


オラクルは黙って頷く。


「なぜ“地球”なんだ?

話を聞いていると、エルフェリーナの魂が地球にある、という前提で進んでいるように思える」


一真は言葉を選びながら続ける。


「この世界だけじゃない。

俺が聞いた限り、地球やエルフェリア以外にも複数の世界が存在している。

なのに、なぜ地球なんだ?」


さらに踏み込む。


「勇者召喚もそうだ。

なぜ、召喚されるのは地球の人間ばかりなんだ?

他の世界から勇者が呼ばれた例はないのか?

……それとも、俺が知らないだけで、地球以外からも召喚は行われているのか?」


問いながらも、一真の胸中には確信に近い感覚があった。


――おそらく、ない。


地球とエルフェリア、そして邪神ゼルグノス。

この三つの間には、偶然では済まされない因果がある。


エルフェリアは、地球に似すぎている。


一日の長さ。

太陽と月。

水と大地、空気の組成。


文化も、食材も、調味料も。


最初は、召喚された勇者達が持ち込んだのだと思った。

だが、それにしては数が多すぎる。


――違和感がある。


危険な魔獣や魔法、ダンジョン。

この世界特有の脅威は確かに存在する。


それでも――


エルフェリアは、

地球人が生きる前提で作られたかのように“適合”しすぎている。


一真がその違和感を決定的に意識したのは、

前世界魂律遺構での出来事だった。


かつて、この地には別の世界が存在していた。


マギア・アルケオン。


ノアの記録によれば、

その世界は三千年前にゼルグノスによって滅ぼされ、

その千年後に、エルフェリアが創られた。


もしそれが事実なら――

エルフェリアの歴史は、わずか二千年程度。


――アルサリウスとエルフェリーナは、どこから来た?


二千年前、突如として誕生した神なのか?

それとも……“別のどこか”から来た存在なのか?


荒唐無稽だ。

だが、どうしても否定できなかった。


『アルサリウスとエルフェリーナは、元々地球と関わりのある存在だったのではないか』


「……ずま――おい、一真!

大丈夫か!」


オラクルの強い呼びかけで、一真ははっと我に返る。


「……すまない。

少し考え込みすぎた」


オラクルは安堵したように息を吐き、話を戻す。


「ならいい。

……まず、なぜエルフェリーナの魂が地球にあると考えられているかだが」


「確証があるわけじゃない」


前置きした上で、続ける。


「ただ、数百年前の勇者召喚で、一度だけ“癒やしの力”を持つ勇者が現れた、という伝承がある。

そしてその後、あらゆる手段で調査が行われたが……

エルフェリーナの魂は、この世界では見つからなかった」


声を低くする。


「……次に勇者召喚だが、私の知る限り、地球以外から行われた例は一度もない」


一真は黙って聞く。


「勇者召喚を管理する者達はこう考えている。

エルサリオン建国王――初代勇者が地球から召喚されたからだと」


「その血を引く王族が“縁”となり、

召喚される者は地球から選ばれ続けているのではないか……とな」


(縁は複数ある……

初代勇者か、アルサリウス達か……

あるいは、その両方か)


最初の召喚勇者が地球人だったということも、偶然だとは思えなかった。


そこまで考えて、一真は思考を切り替えた。


今、重要なのは仮説の整理ではない。


「話を戻そう」


一真は静かに言った。


「エルフェリーナの魂が、地球に存在するという前提で話す。

そして、その魂が勇者の中に宿る可能性があると仮定する」


「バルト王の洗脳を解き、勇者召喚の乱用を止めることが、邪神復活の阻止に繋がる。

ここまでは理解した」


だが、と続ける。


「もう一人いるはずだ。

……ファレナ王女だ」


オラクルの表情が僅かに曇る。


「彼女も勇者召喚を使えるんだろう?

今は魔王アリステリアが保護しているらしいが……

そこを放置したままでは、危険は消えないはずだ」


オラクルは苦い表情で頷いた。


「……その通りだ。

だが、優先すべきはバルト王だ」


理由を告げる。


「ファレナ姫は、現魔王アリステリアが直接保護している。

……この“直接”という点が重要なんだ」


一真は眉をひそめる。


「どういう意味だ?」


オラクルは答えた。


「邪神の封印解除には、女神と魔王の力が必要となる。

現在、魔王の力を保有しているのはアリステリアだ」


「魔王の力は継承可能だが、

継承には“所有者の意思”が必要とされている」


一拍。


「そして――

継承者を殺せば、魔王の力は霧散し、消滅する」


一真の目が細くなる。


「つまり……」


「アリステリアがファレナ姫の側にいる限り、

過激派は強行手段に出にくい、ということだ」


理屈としては理解できる。


だが――


一真の胸中に残ったのは、拭えない違和感だった。


それはあまりにも、

細く、脆く、

“希望的観測に寄りすぎた理”に思えたのだ。


――本当に、それだけで抑えられるのか?


その疑念は、まだ言葉にならないまま、

静かに胸の奥に沈んでいた。


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― 新着の感想 ―
新たな展開の予感ーー!! 次が楽しみです。
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